第15話 月華のお気に入り
第15話 月華のお気に入り
「おや‥‥もうこのような時間かぇ?」
それまで楽しげに話していた月華の呟きにつられるようにしてカイヤと不知火も樹々の間から零れ見える空を見上げると、先程まで見事な青空だったそこには燃えるような黄昏時の空が広がっていた。
「おぉぅ‥‥これはまた、なんとも形容しがたく凄まじい色の空だな」
「ふふ‥‥美しかろう? 妾のお気に入りの一つじゃ」
見上げた空の色に圧倒され、思わず素に戻って呟くカイヤになにやら得意げな月華が嬉しそうに笑う。呟いたカイヤの瞳がキラキラと称賛の色に輝いていたためだろう。
「どれ、もっとよく見られるようにしてやろうぞ」
語尾に音符でもつきそうなほどの浮かれた調子でふるりと震えた月華の身体が徐々に膨らんでいく。
もともと見上げるほどの大きさだった月華の身体が倍くらいまで膨れ上がり、ふさふさだったしっぽがもっふもふになっている。
「‥‥これくらいでよかろう、ほれ、まいるぞ」
「うぉぅ!?」
巨大化する月華を呆然と見ていたカイヤは突然首根っこを銜えて放り上げられ、気付いた時には彼女の背に乗せられていた。そして苦情を言う間もなく月華が跳躍し、樹々の上へ飛び上がって中空でふわりと静止する。不知火が振り落とされないように抱き締めていたカイヤは月華が止まったのを感じて視線をあげ――眼前の見事な景色に絶句した。樹々の合間に沈みゆく夕日とそれを見送る空の、なんと見事なことか――
「‥‥見事なものであろう? たとえ幾歳経とうともこの素晴らしさだけは変わらぬ‥‥」
己が背中で呆然と景色に魅入っているカイヤの様子を見るともなく感じ、少しばかり淋しげに呟かれた言葉は、この後いつまでも、変わらずカイヤの中に残っていた――
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作者、ここのところ体調を崩しており、なかなかパソコン前に座っておれなくなっております。
書きたいことはあるのに身体が書かせてくれないジレンマ‥‥
せめて月に1度の更新だけは死守できるように頑張ります。
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