第11話 漸く終了――と思いきや

第11話 漸く終了――と思いきや


 管理責任者の彼と話し(?)たあとしばらくは何も起こらず、ただ只管森の中を歩くだけだった。暇つぶしに周囲を鑑定し、時には採集しながら歩いているとふいに索敵になにかがひっかっかった。


(敵意はなさそうだが‥‥なんだ?)


 腰の短剣を引き抜き、構えながら相手の出方を見るつもりで待っているカイヤの前に姿を現したのは1匹の子狐だった。

 子狐は何かの枝を銜えたままカイヤを見上げ、首を傾げるような仕草をした後とてとてと近付いてきた。カイヤに足元に銜えてきた枝を置くとちょこんと座ってまた首を傾げる。


「‥‥なんだ? 私にくれるのか? と言うかおまえ‥‥さっきの仔か?」


 短剣を鞘に戻して声をかけながら枝を拾うと子狐のしっぽがゆらゆらと揺れる。気のせいか、なんとなく嬉しそうな気配がする。


「何故ここに? 親元に戻らなかったのか?」


 赤い実の付いた枝をしげしげと見詰めながら問いかけると、子狐はまたとてとてと近寄り、カイヤのズボンのすそを銜えてぐいぐい引っ張る。どうもカイヤを連れて行きたいところがあるようだ。


「待て、わかった、わかったから落ち着け」


 それでもぐいぐい引っ張る子狐の頭を軽く撫でると連れていかれそうな方向に視線をやる。特に危険な感じもせず、いたって普通に野鳥が鳴いている。


「あっちに行けばいいんだな? ほら、離しなさい、歩けない」


 カイヤがそう言って歩を進めようとすると子狐は裾を離し、嬉しそうにしっぽを振りながら足にまとわりつくようにして一緒に歩き始めた――

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