この世界に馴染んでみよう3
コンコン
「姫様、何か話し声が聞こえたようですが、如何されましたでしょうか?」
「ヤランね。なんでもないわ、独り言がそう聞こえたんじゃないかしら。」
「承知いたしました。何かあればすぐにお申し付け下さいませ。」
『これからは念話で話すね。頭で考えてくれれば話せるようになるからね。』
「ビ、ビックリしましたわ。」『これでよろしいでしょうか?』
『大丈夫、聞こえてますよ。じゃあ続きをお話ししますね。
俺達の世界に転移の魔法陣を使って魔物が現れました。
とりあえずは撃退したんですけど、また来られても困るんで調べようかと。
そしてその魔方陣を逆に辿って幾つもの世界を調査してきて辿り着いたのがこの世界です。
この世界の調査をしていて、ここに辿り着いたのです。
実はこの世界、ミーア達の世界によく似ていまして。エレメントスっていう世界なんですが、俺の奥さんのひとりもそのエレメントスの王女でイリヤって言うんです。
この世界がエレメントスとそっくりで、街並みやお城の位置まで一緒。
だからイリヤもいるかなあって思って覗きに来たんですよ。』
『まあ、奥様はイリヤ様っておっしゃるのね。名前までそっくりだわ。
この世界はオレメントスって言います。これもそっくりですね。』
『そうですね。俺の世界ではパラレルワールドっていう考え方があります。
同じような世界が同時にいくつも存在して、それぞれ違う時間軸で動いているって考え方なんですけど、エレメントスとオレメントスはパラレルワールドかもしれませんね。』
『夢のようなお話しね。でも本当にそうだったら興味深いですわ。』
『ええ、それでこれからなのですが、一応この世界から俺達の世界に送られてきていないか調べようと思っています。
もしこの世界からでないことが分かれば、魔方陣を探し出して別の世界に行こうと思っています。』
『そうですか。この世界からじゃなければいいんですけど。
ヒロシ様、ミーア様、いつでも結構ですので、困ったことがありましたらお寄り下さいね。』
『ミリヤ様有難うございます。じゃあそろそろお暇します。』
『ミリヤーーー、バイバーーーイ。またねーーー。』
俺達が窓から飛び去って行くのをミリヤは微笑みながら見送ってくれた。
さすがにこの世界の人達が、魔物のゴブリンだなんて言えないよね。
俺達は気配を遮断したまま空から街を探索していく。
お城から少し離れた広場に練兵場があり、多くのゴブリン兵が訓練している。
「うん?ヒロシー。あれ見てー。
あの印って僕達の世界に来たゴブリンが持ってなかったーー?」
ミーアの指差す方を見るとたしかにたことがあるような。
訓練場に掲げてある大旗の図柄が、ゴブリンの持っていた武器に付いてたマークとよく似ているのだ。
「あれ国旗じゃない?」
「そうだね。俺もそう思うよ。でもさあ、ミリアさんに確認しておこうか。」
「そーだねー、そうしよう。」
ミリアさんの部屋の窓から念話を使って呼び掛ける。
「あら、おふたり共お早いお越しだこと。もう調査は終わりましたの?」
「いやあ、それが。」
やっぱ聞きにくいよね。
だって最悪ここの人達が襲撃者だって言ってるようなものだもの。
「ミリアー、僕達の世界を襲った魔物がミリア達そっくりでー、この国の国旗があいつらの持ってた武器に付いてたんだけど、何か知ってるーー?」
あちゃー、一番聞いちゃいけないことじゃないか。
それともっとオブラートに包まなきゃ。
「い、いやミリアさん。失礼なこと言ってごめんなさい。
ゴブリンだけじゃなかったし、オークもいて、指揮官は間違いなくオークリーダーだったから、ここの人達と断定しているわけじゃないんだ。」
ミリアさん下向いちゃったよ。
「………オークリーダーが一緒でしたか。
もしかしたら、先の戦いで捕虜になった人達かもしれません。
実は先月オークの国であるカワリング帝国との戦で大人数の兵士が捕虜として捕らえられたのです。」
ミリアさんの話しはこうだ。
国境線を取り合ってゴブリンの国であるオレメントスとオークの国カワリングは数百年間も争ってきた。
とはいえ、これだけの長期になると、形骸化していることもあり、いつもは少数での小競り合いで終わるそうだ。
ただ先月はあちらの国にオークリーダーが現れ、ひとりで無双したらしい。
国境の砦も奪われ、そこにいたほとんどの兵士が捕虜にされたそうだ。
カワリングという名を聞いてスワリング教国のことを思い出してしまったよ。
こりゃ犯人はカワリング帝国で決定でしょう。
ねー、ミーアさん。
「ヒロシー、いまカワリング帝国が犯人だって思ったでしょうーー。
ヒロシは顔に出やすいんだからー。
でもさあ、僕も同感だよ。すぐに行こうよー。
ミリアーーじゃあねーー。」
「ミリアさんごめんなさいね。
ちょっと行ってきます。」
先に行ったミーアを追い掛けて俺はカワリング帝国へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます