この世界に馴染んでみよう2
今度はゴブリンの国らしい。
ゴブリンが町中に溢れてるよ。
別に悪さをしているわけじゃなし、ここじゃ俺達の方が余所者だからね。
ちょっと大人しくしておこう。
一応気配察知と気配遮断は掛けておく。
もちろんミーアにもね。
まあ、ゴブリンくらいだったら警戒する必要も無いんだけど、何があるかわからないし。
慎重な俺に対して、ミーアは通常運転。彼女達魔人から見たらゴブリンって単なる労働力だったらしいから、特に問題にならないって。
街の様子は……中世ヨーロッパ的な普通の異世界って感じで分かり易い。
そんなことを思いながら街を散策していると、目の前に教会が現れた。
中に入ってみると質素な作りで案外好感が持てる。
教会ってゴージャスなイメージがあるし、特に中世ヨーロッパの教会は拝金主義っていうかなあ。
だけどここはそんなことを全く感じさせないよ。
誰も居ない礼拝堂を進んで行くと御神体の姿が現れる。
立っている狐?ミケツカミ様?
そうか、もしかしたらここはエレメントスのパラレルワールドかもね。
ゴブリンのいるエレメントスかあ。
むしろ昔の殺伐としたエレメントスよりも人間らしいかもね。
ミケツカミ様?にお詣りしたら教会を出てメインストリートへ。
もしエレメントスのパラレルワールドだったら、たしかこの辺りに服屋があったはず。
イリヤと再会した流行の発信基地だったとこだね。
あっ、あったよ。やっぱりエレメントスのパラレルワールドなんだな。
てことは、このまま真っ直ぐに進めばお城かな。
やっぱりあったよ。
見掛けの作りはエレメントスのお城とそっくりだな。
門番はゴブリンだけどね。
気配遮断しているから向こうから気付かれることはない。
俺達は堂々と壕に掛かっている橋の真ん中を通って城の中に入って行った。
入り口から中を通るのもめんどくさいから、気配遮断のまま上に飛んで見晴らしの良いバルコニーの部屋へ。
ここはイリヤの使ってた部屋のはず。
中を見るとゴブリンのお姫様が本を読んでいるところだった。
ゴブリンだから見分けはつかないんだけど着ている服からなんとなくね。
あっ、お姫様こっち見たよ。不思議そうに何かを探してる。
やべえ、イリヤと同じで鑑定能力があるのかも。
能力まで同じかよ。パラレルワールドっていったい?
「どなた?どなたかおられるのですか?」
ゴブリンのお姫様が話し掛けてきた。
「いるよ。君は僕達が見えてるの?」
声を掛けないつもりだったのに、ミーアが話し掛けちゃったよ。
仕方がないから、俺達は部屋の中に入っていった。
「やはりどなたかおられるのですね。
女の子かしら?可愛い声だもの。」
気配遮断を解除する。
俺達の姿が確認出来たお姫様、顔が恐怖に引き攣る。
「ゴ、ゴブリン!」
なるほど、俺達がゴブリンね。
「俺達は、ゴブリンじゃないんだ。他の世界から来た人間なんだよ。
俺の名はヒロシで、こっちがミーア。」
「まあ、ゴブリンが人間の言葉を話した!!」
「だーかーらー、僕達はゴブリンじゃないんだってばーーーー!!」
「ふふふふ、分かっておりますわ。わたし鑑定の能力を持っていますもの。
靄がかかっているようでよく判断できませんけど、ゴブリンの色ではありませんわ。
姿はゴブリンそっくりですけれど、ゴブリンは人間の言葉を話したりしませんし、
それにゴブリンだったら、見境なく襲ってくるでしょうね。
それによく見たら少し耳が短いかしら。やっぱりゴブリンじゃありませんわね。」
「わかってくれて良かったよーー。」
「ところで、その異世界の方がどうしてここへ?」
「俺達の世界にいるはずの無い魔物が現れてね。それが出てきた魔方陣を辿ってきたらこの世界にたどり着いたんだ。」
「まあ大変。じゃあこの世界の魔物が皆さんの世界へ?」
うーーーん、魔物はゴブリンだから、君達なんだけどね。まさかそんなこと言えないよね。
「たぶんーそーだよー。恰好はねー、君達みたいなんだーー。」
こらミーア、言って良いことと悪いことがあるだろ。それは言っちゃいけないこと。もう言っちゃったけど。
「わたし達みたいな魔物?」
「そーだよー。君が僕達をゴブリンに間違えたように、僕達の世界じゃー、君達の姿の方がゴブリンなんだーー。
変だよねー。ハハハハーー。」
ミーアったらさらっととんでもないこと言ってるよ。
「ほんとですわねー。そんなことってあるんですのね。ホホホホホーー。」
もしかしてお姫様ジョークなの。これ面白いの?
あっミーアも元は公爵令嬢だっけ。
ここはミーアに任せてみるか。
「それでミーアさん。これからどうされますの?」
「そーだねー、ここじゃ魔物扱いされるしねー。ヒロシーー、どうするーー?」
「とりあえず気配遮断は掛けておくよ。お姫様お名前は?」
「まあ自己紹介が未だでしたわね。ミリヤと申します。」
名前までよく似てるよ。
「ミリヤさんには見えるようにしておきますね。
でこれからの行動についてですが。」
扉の外で気配がしたので俺は言葉を遮った。
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