魔方陣の正体を突き止めよう 2

俺達は更に奥へと進んでいく。


暗い洞窟の中に明るく灯る魔法の光を頼りに歩いて行くと行き止まりにあたる。


これで5度目だ。


「ミーア、また行き止まりだね。どこかに隠し通路は無いかい?」


「今探してるよー。本当、なんて面倒なんだろうねー。」


そう、まるで侵入者を惑わせるかのように通路は途中で行き止まりになっていて、隠し通路を探し出さないと奥に進めなくなっているのだ。


隠し通路の扉を探さなきゃならないんだけど、なかなか見つからない。


暗いのもあるけど隠し方が巧妙なんだ。


ここでミーアの鋭い嗅覚が役に立つ。


扉の隙間から微かに香る(らしい)不思議な香りをたどってこれまで4つの扉を見つけることに成功しているのだ。


今もミーアの鼻は絶賛稼働中だ。


普通なら近づくほど匂いが強くなるはずなんだけど、そうとも言い切れないみたい。


ところどころに匂いが漏れる穴が開いているみたいで、近付けば近づくほど、匂いがあたりに充満していて、探すのが難しくなっているようだ。


もうかれこれ10分以上探しているが、まだ見つかっていない。


「ヒロシーーー、ちょっと休憩しようよー。匂いの穴が多すぎてわかんないよー。」


「そうだね、お疲れ様。ちょっと休憩にしようか。」


しかし、ここまで来てるのになあ。でもこんなに匂いがあっちこっちからするということが、ここが最後かもしれない。


何とか見つけなきゃ。


「そうだ、休憩が終わったら俺が匂いを一気に吹き飛ばすよ。

それで匂いのする穴を見つけたら、扉かどうか判断して、扉じゃなかったらその穴を塞いでいこう。


そしてまた匂いを吹き飛ばしてを繰り返したら、そのうち扉が見つかるんじゃないかな。」


「そうしよーーー」


そして30分後、ついに5つ目の扉を見つけることに成功した。


「あったよ!ヒロシー!」


ミーアの嬉しそうな声が洞窟内に響く。


「やったねミーア。」


飛び込んで来るミーアを胸で受け止めて喜びを分かち合う。


「さあ、次へ進もう。」


なんとなくこれが最後の扉じゃないかと思う俺達は慎重に扉を開けた。


ギィーー


石造りの扉の向こうには、漆黒に包まれていた。


「ダメだな。」


ライトの魔法で照らしてみても、その黒に吸い込まれてしまう。


どうやら明るさが無いことよりも真っ黒な霧が原因みたい。


この霧が明かりを飲み込んでしまうようだ。


「くさーい!」


たしかに微かにガス臭い。もしかしたら可燃性のガスかも。


「ボクが火魔法で明るくするよ。」


ダメだ!!!


俺の声は間に合わなかった。


ドッカーーーン


辺り一面火の海になる光景が、かろうじて間に合った結界の中から見えた。


「あっぶなかったーー!!」


「可燃性のガスの臭いがしたからね。

ミーア、大丈夫?」


「ありがとー。ヒロシだーいすき!」


やはり漆黒の霧は可燃性のガスだったようで、ひとしきり燃えた後は、綺麗に晴れていた。


再度ライトの魔法を使って辺りを探る。


大きな祭壇があり、その周りには雑然と神具が散らばっていた。


今の爆発で飛び散ったのか元からそうだったのかはわからない。


ただ祭壇に描かれていたのは間違いなく転移の魔方陣であった。


何かを転移させようとしていたのか、転移して来るのを待っていたのかは不明だけと、何かの儀式に転移を使っていたのは間違い無いだろう。


ミーアが猫の姿で祭壇の下に潜って行った。何かを見つけたのか。


「ヒロシーー、これっ。」


祭壇の下から出てきたミーアが持っていたのは、100円硬貨だった。


「これってさー、ジュースを買う時に機械に入れたコインだよね。


日本の物なの?」


「そうみたいだね。これは間違い無く日本の100円玉だな。


でもちょっと古いかも。


ほら見てごらん。平成20年になってるよね。

今から40年近く前だよ。


最近は硬貨をあまり使わなくなったけど、この頃は未だ大量に作られていたんだ。


だけどこんなところにあるなんて変だな。

他にも何か無いか探そう。」


ふたりで辺りを探し回る。


床の上はもちろん、祭壇の下や裏側、壁までくまなく探すといくつかの硬貨と壁に描かれた落書きのような絵が見つかった。


壁の絵はほとんど消えかけている。


不恰好に丸く描かれた円の中に走り書きのような不可解な文字がいくつかと、楔文字の数字のような記号がたくさんあるように見えるのだが、なにぶん掠れてよく見えない。


「しょうがないねー、復元しちゃおうよー。」


たしかに復元の魔法を使えばはっきりと見えるのだが、こんな不気味なところで使うのは躊躇われる。


「ヒロシーー、はーやーくーー。」


ええーい、注意してやれば大丈夫か!


どっちにしても他に手は無いしね。


「復元!」


魔力を注いだ瞬間、壁の絵がまばゆく光出したのだ。


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