魔方陣の正体を突き止めよう 1
魔方陣を家に持ち帰り、調査してみる。よく見ると魔方陣は2つあった。
転移の魔方陣自体は一方通行の単純なものだったが、もう一つは転移の魔方陣に危害が加わると、自動的に新しいものを作って再生させるみたいだ。
厄介なのはその再生の魔方陣が転移の魔方陣の下に隠れていること。
だから転移の魔方陣を消しても、その兆候に即座に再生の魔方陣が反応して、転移の魔方陣を作り、それが再生の魔方陣を保護するようになってる。
これじゃいつまで経っても消えないね。
「ヒロシ様、ゴブリンとオークが街で暴れてます。」
どうしようか考えていた数日後、俺達が想定していた以上の問題が発生した。
シーナから突然緊急連絡が入ったのだ。
俺とミーアは慌ててシーナの元へと向かうと、20体ほどのオーク達が街に現れていた。
まだ早朝のため住人は気付いていなさそうだから、全てを収納して例の魔方陣を探す。
すぐ近くにあった。
サクッと結界で囲って再生の魔方陣を収納。転移の魔方陣は壊した。
「ヒロシ様、ミーア様有難うございます。」
「シーナ、大丈夫だったかい。」
「ええ、早朝のトレーニングをしようと外に出たら、突然魔方陣が現れて。
しばらくしてゴブリンとオークが出てきたんです。」
どうやら今回はオークリーダーがいなかったようだ。
だけど、こっちにまで被害が出ちゃうと問題だな。早速原因を断ち切らないと。
俺はシーナに魔方陣の構造を説明し、魔方陣破壊用の結界の魔道具を2つ渡す。
「わかりました。見つけたらこれですぐに破壊すればいいのですね。」
「シールにも渡しといて。俺達は原因を突き止めてくるから。じゃあ気を付けてね。」
さて、早く解析を終えて原因を元から絶たなくちゃね。
翌日、解析作業を急ピッチで終えた俺は、カザミ村長と、ドワマシー村長と話していた。
「我らが元いた世界にはオークキングというとんでもない化け物がいて、一つの国を作ってイマシタ。
あいつらは時折近隣の国や街を襲っては金品や食料を攫って行きよるンデス。」
「そうじゃ、それぞれの個体はそれほど強くないからのお、わしらもいちいち応戦しておったが、なにせ神出鬼没での。
あちらこちらに沸いて埒が明かんかったのじゃよ。」
エルフや、ドワーフ達を追ってここにたどり着いたのか、彼らと同様にたまたまここに現れたのか、その辺りはよく分からないけど、厄介なことには違いない。
「ちょっと向こうに行って止めてきます。ミーア一緒に行く?」
「当然!」
「じゃあ、カザミさん、ドワマシーさん、後のことはよろしく。」
そして俺達は改造して往復できるようになった魔方陣が起動したタイミングで、向こうの世界へと飛び込んでいったのだった。
「ヒロシー、どこだろう、ここは?」
「どうやらどこかの神殿跡みたいだね。とりあえずその辺りを調査してみようか。」
真っ暗だったので光魔法でライトを灯す。
そこに見えた様々な装飾や彫像がかつての優美さ、壮大さを思い起こさせるが、今は何の気配も感じさせない。
ふたりで崩れかけた神殿跡を歩き出す。
小一時間ほど歩いていた時、少し開けた場所にたどり着いた。
恐らく礼拝堂か何かだったのだろう。窓ひとつない真っ暗な中なのに上から微かに差し込む陽の光がぼんやりと祭壇を浮かび上がらせていた。
「ミーア、どうやらここは地下のようだね。上から陽光が差し込んでるよ。」
「あっ、ヒロシー、あれ見てよ。あそこにあるの魔法陣じゃない?」
ミーアが指し示す方向には確かに魔方陣があった。
そこに行って、魔方陣を解析する。それは召喚用の魔法陣であった。だがその辺りには魔力の残渣も無く、魔方陣自体も風化して消えかかっていてもはや稼働は出来ないようだ。
さらに奥に進んでいくと、様々な壁画が描かれていた。
そこに書かれている絵と象形文字らしきものを見つめるミーア。
「ヒロシー、これたぶん古代魔神文字だよ。」
「古代魔人文字って?」
「僕達魔人に古くから伝わっている古い文字さ。魔人に伝わっている伝説によると、僕達魔人もはるか昔にどこからか転移してムーンの地に住み着いたらしいんだよね。
その頃の人達が使ってたのが古代魔人文字なんだ。」
「ミーアはそれ読めるの?」
「失礼な、これでも僕は優秀生徒だったんだよ。まあまあ読めるよ。」
「まあまあかよ!」
「仕方ないじゃないか。だってまだこの文字は全体が解析中なんだから。でもおおよそは分かると思う。」
その後ミーアの必死の解読作業によりいくつかのことが分かった。
ミーアの祖先である古代魔人族がこの世界にいたこと。
ある日天変地異が起こり、地上に住めなくなった彼らは地下に都市を造って移住したこと。
食糧確保の為に他の世界から様々なものを召還していたこと。
年月が経つ中で分裂していった者達が転移の魔方陣を使ってどこかへ旅立っていったこと。
「とすると、ミーア達のご先祖様もここから転移していった人達だったのかもね。」
「そうかもしれない。ヒロシー、もっと奥に行ったらその転移の魔方陣があるんじゃない?」
「そうかもね、奥へ行ってみよう。」
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