第3章 新たな世界

歓迎しない来客

その日は結界の外では朝から大雨が降り続いていた。


そして夜半から雷と暴風。


こんな日は以前にもあったから、なんとなく分かってた。


そう、エルフやドワーフがここに迷い込んできた時だ。


あの時と同じような天候。


翌日、ミーアと一緒に結界の周りを巡回する。


最近結界がかなり大きくなったから、巡回するだけでも大変だ。


「うん?前方500メートルに何かいるね。

そっちに行ってみよう。」


久しぶりに危険察知反応があったからそちらに向かう。


危険反応は大したことないけど、生命反応はそれなりにあり、強くなさそうな敵がたくさんいることが分かる。


「上昇して様子をみよう。」


「わかったー。」


反応から200メートルほど手前で30メートルほど上に上がって停止、

相手を観察する。


「あれゴブリンじゃん。オークもいるねえ。」


「ゴブリンとかオークっているんだ。」


確かエレメントスにはいなかったよね。


「アルバイダ魔国じゃ、ゴブリンは労働力として、オークは食用として飼育していたよ。」


全然知らなかったよ。


でもどうしてここに?


「アイツら知能がないから、本能でしか動かないんだ。


国で飼育していた時は、言うことを聞くように洗脳していたよ。


そうじゃないと、繁殖力が強すぎて増え過ぎるし、共食いを始めて大変なんだよね。


別に増えすぎたって、僕達魔人にとっちゃ大した脅威でもないんだけど。


だけどおかしいね?


ゴブリンとオークが一緒にいるじゃん。


普通ゴブリンはオークの好物だから、食べ散らかされているはずなんだよね。」


たしかに、ゴブリンもオークも戸惑っているように、うろうろしてるけどそれなりに統率は取れているようだ。


「少し近付いてみようか。」


「あっ、あれってオークリーダーじゃないか。そうかあのオークリーダーが統率してるんだね。」


「ミーア、オークリーダーって?」


「オークの変異体で、たまに知能を持った奴が出てくるんだ。


知能の量で何種類かに分別されるけど、オークリーダーは下の方かな。


でも普通のオークよりも知恵も力もあるからオークだけの群れなら簡単に掌握しちゃうんだ。ゴブリンなんてそのおまけみたいなものかな。


でもね、オークリーダー以上がいるってことはちょっと厄介かも。


あいつが現れる時は、更にその上位個体がいて、まれに反乱を起こすことがあったんだよ。


.......ヒロシ、オーク達人数が増えてない?」


「ああ、俺もそう思ってたよ。エルフやドワーフ達の時は人数が決まってたもんな。


それに比べて、あいつらはどんどん湧き出してくるみたいに増えてる。


ちょっとやばいな。」


「僕、ちょっとオークリーダーの様子を見てくるよ。」


「ミーア、駄目だ。俺もいく。」


ふたりでオークリーダーのところに向かう。

そしたら俺達を見るなり、いきなり攻撃を仕掛けてきやがった。


結界を前に展開し、剣による打撃を防御する。


いちおう結界の外側だから中の皆んなに影響はないけど、もしこの山から外に出て行ったら大変なことになりそうだ。


オークリーダーをサクッと拘束して、群れに近づいていくと、やはり大きな穴があってその真ん中に魔方陣があった。


そこから今も1分に2体くらいの割合で出てきているようだ。


「ミーア、あの魔方陣を壊すよ。」


リーダを拘束されて右往左往しているオークやゴブリンを結界で囲ってから魔方陣を風魔法で消した。


だが、魔方陣は再び浮き出してきたから、魔方陣自体を結界で包んで、その中にサイクロンを起こす。


その結界の中では、浮かんできた魔方陣はすぐにサイクロンによって消され、浮かんでは消されを繰り返している。


「どうやら、あの魔方陣は前の2つと違って誰かが作為的に作ってるようだな。

オークリーダーな何かを知ってるかもしれないから、問い詰めてみるか。」


俺達は拘束されて動けないオークリーダーに近づき、尋問を始めた。


しかし、オークリーダーは口を閉ざしたまま何も言わない。


しようが無いので、気配察知を強くしてオークリーダーの感情を読み取った。


そこには黒いものは無く、ただ『殺し尽くせ』という命令めいたものだけが残っていた。


「ミーア、こいつは『殺し尽くせ』って何かに命令されているだけみたいだね。

どうする?」


「ゴブリンやオークも含めて、ここでは害獣にしかならないからね。全部消しちゃおうよ。」


「わかった。じゃあとりあえず収納に入れてっと。」


ゴブリンやオーク、オークリーダーを囲う結界の中全てを収納にしまう。


この時点でそれら全ては無かったことになった。オーク肉だけは一応分離して仕わけておいたけどね。


「さて、残った魔方陣だけど、これは持ち帰って調査しよう。


作為的に作られているということは別のが出来る可能性があるからね。


そうだ、ねんのために敷地全体に危機察知の魔道具と魔方陣を消すための風魔法の魔道具を設置しておこう。」


俺は結界の外も含めて魔道具を配置して、もし同様の魔方陣が現れたら、即座に風魔法で消去させることにした。




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