アルバイトのミーア達3

2時間程話しをしていたら、夜の7時過ぎ。


明日も3人は仕事だから、そろそろお暇することにした。


あっそうそう、さっき山下さんに電話して、3人の仕事風景を見学させてもらうことにしたんだ。


山下さんも喜んで「どうぞ」って言ってくれた。


明日はドワーフ達も入れて見学会をすることにして、3人にお別れの挨拶、いやミーアは一緒に戻るからふたりか。


「さよなら、また明日ね」って言って押し入れに入る。ド○エモンみたいだなって思うのは俺だけか。



翌日、ミーアの出勤時間よりも少し早く広場に集合。


ドワーフのドグラスさんとドラムスさん、カザミ村長とドワマシー村長、そして今後の生産や在庫体制を相談する為にヤムルさんの5人が今日の見学メンバーとなる。


それぞれに魔石を練り込んだお手製セーターを渡し着てもらう。


言葉も見た目もすっかり日本人になったところで、魔方陣に乗り込んで出発。


シーナさんがふすまを開けて待っていてくれた。


何人かは頭を打っていたけど、これはしょうがない。


「皆さん、ご無沙汰してます。

ヤムルさんもお元気そうで。」


シールさんはヤムルさんを見て嬉しそうだし、ヤムルさんもまんざらでもなさそう。



!!!!


だからシンブさんの代わりに行きたいって頑張ったのか。

「さあ、シーナ、シール、早く行かないと遅刻しちゃうよー。」


ミーアに促されて、9人で酒蔵に向かった。


アパートから酒蔵までは5分程度。


山下さんと娘婿の恭二さんが出迎えてくれた。


恭二さんは山下醸造所の再出発に際して、本格的に酒蔵を手伝うことになったそうだ。


そう話す山下老人の顔には笑みが溢れている。


良かったね山下さん。


ドワーフ達が作った日本酒は専用の魔方陣を通って酒蔵にある巨大な酒樽に流れ込む仕組みになっていて、そこから取り出された酒をビンや紙パックに詰め替えていく。


製造日の刻印をした後は自動的に箱詰めされて出荷ヤードヘ流れ、出荷先別に送付状が貼られてそれぞれの国や販売店に送られて行くのだ。


出荷先とそれぞれヘの出荷量を地図や資料で丁寧に説明してくれる恭二さん。


ドグラスさん達も感無量で話し終わった恭二さんに抱きついていたよ。


シーナさんは配送伝票の入力や発行を担当していて、シールさんは仕入れ、販売の入出金管理を担当している。


ふたり共真面目で覚えるのも早いし、仕事が正確なので重要な役割に大抜擢されたんだ。


酒蔵の隣りのアンテナショップでは売り子のミーアが活躍中。


元々山下醸造所が小売りしていた日本酒の売り上げが3倍になったらしい。


恭二さん率いる新生山下醸造所は順風満帆の船出のようで本当に良かったよね。


その後今後の生産計画や村で在庫するために必要な保管庫の容量など実務的な話が進められる。


村の結界内だったら長期保管も安心安全だからね。


こうして山下醸造所の見学は大満足のうちに終了したのだ。


「ヒロシ殿、こんなに嬉しいことは初めてじゃわい。


こんなに旨い酒が作れるだけでなく、あんなにたくさんの人達に飲んでもらえとるんじゃからの。


本当に感謝している。」


涙を見せながら話すドグラスさんの言葉にウルっときていたのは俺だけじゃないはずだ。


これからも上手く行けばいいなと願うヒロシであった。






さて話しは変わってこちらはインフラチーム。


鉄道の 敷設に向けてなにやら議論中。


聞いてみると、線路をどうやって引くかで揉めているようだ。


元々の案では地面の上に直に引くことになっていたのだが、酒作りが本格的になってきて、耕作地を大幅に拡大する必要性がでてきた。


それにともない、線路の直引きが難しくなってきたのだ。


それで全線高架にするか、地下を掘るかで揉めているようだ。


「俺は地下が良いと思う。高架だと線路の影が耕作に影響するかも。」


「いや高架だろう。地下には既にバスがある。


どちらも拡張し難くなるじゃないか。」


お互いに理屈は通っているので、それぞれの陣営は五分五分というところか。


地下と高架じゃ折衷案が出るわけもなく、既に小一時間話し合いは続いていた。


「あのー、空中に透明なパイプを引いてリニアを走らせるのはどうデスカ?」


日も暮れようかという頃、アスタが控え目に発言する。


「「「リニア!!」」」


それまでだんまりだったアスタの発言に、皆がアスタに注目する。


「透明パイプの中にリニアか~。


たしかに極力影を抑えて、しかも敷設の自由度も高そうだが。」


「そうだな、多少の支柱は必要だが、高架よりも圧倒的に少なく、地下のバスを邪魔することもないな。」


「案は良いが、未だ実現されていない技術ってとこが問題か。」


そう、旧中山道に沿ってリニアモーターカーが運行を始めて数年が経過したものの、用地利権が絡み次の計画が全く進んでいない中で、国が打ち出したのが、リニア高架計画。


リニアが磁気で浮上することに着目し、既存の新幹線駅と線路脇に細い支柱を立てて、その上に透明なパイプを敷設し、その中にリニアを通そうというものだ。


騒音対策と用地買収を解決出来る神案として、政府として特別予算が編成されたが、実現までには法改正を含めさまざまなハードルがあり、時間を必要としていたのだった。

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