アルバイトのミーア達2
スーパーに着いた俺とレンさんとムムさん。
頑張って働いているミーアやシーナ、シールの為に美味しいものを作ってあげようと食材を買いに来た。
自動ドアも難なくクリアし、中に入ると店内放送に驚く。
軽快なリズムに合わせて本日のお買い得商品を次々と並べ立てていくその声は、まるで呪文のように感じたらしい。
聞かないように慌てて耳を塞ぐふたりに他の買い物客も何が起こったのかと興味津々にこちらを見ている。
「そうか、スーパーに入るのは初めてだもんね。これは店内放送と言ってお買い得商品を教えてくれているんだよ。」
お買い得商品と聞いてふたりの目が光る。
途端に耳を澄まして声のする方向、すなわちスピーカーの真下に素早く移動し、聞き耳を立てる。
長い耳は幻影の魔法で隠しているが、元々は耳の良いエルフの事。
ざわざわした場所で特定の音を聞き分けるのは得意中の得意なのだ。
「ブラックタイガー?モンゴウイカ?オージービーフ?」
「ああ、今日はエビやイカそれと輸入牛がお買い得なんだね。そっちへ行ってみよう。」
店内は騒がしく、ヒロシには店内放送が上手く聞き取れなかったのだが、レンさん達には完ぺきに聞こえたらしい。
でも、エビもイカもオージービーフも村では食べないから、ふたりが知るわけない。
魚介売り場に移動すると、ふたり同様に店内放送を聞き取った主婦達でごった返していた。
その間をかいくぐり何とか商品の前にたどり着くとふたりの目は大きく見開かれ、そして腰が引けていく。
そりゃそうだよね。山の中で暮らしてたら、あんなに大きなエビとか見ないもんね。
ましてやイカなんてさ。
「初めて見ますよね。結構美味しいですよ。」
「ヒロシ様、あの怪物は死んでいるのですか?食べるなんて考えられません。」
「そうですよね。初めて見た方の感想はだいたいそんなもんです。
でも美味しいんですよね。俺が調理しますよ。」
ヒロシに美味しいと言われて少し安心すると共に、興味が出るふたり。
結局ヒロシに持ってもらって恐る恐る次の場所へ移動。
次は精肉コーナー。このスーパーが独自にオーストラリアの契約農場で作らせた国産牛の逆輸入版の肉が、いつもの2割引きになっていた。
牛肉は村でも飼育して食べているからふたり共安心して購入。
彼女達の関心は包装パックとラップ。
新しい発見が多くて楽しそうにしているので、ふたりを連れてきて良かったと思う。
野菜を少し買ってアパートへ戻る。
まだ午後2時少し前でミーアやシーナ達が返ってくるまでは3時間ちょっとある。
台所で先程購入したエビとイカの下ごしらえ。
エビは殻をむいて背ワタを取りエビフライに。
イカはイカリングと、刺身で。
牛肉はもちろん焼肉としゃぶしゃぶ。
それぞれの準備が出来て少し休憩していると3人が帰ってきた。
「ヒロシー、レン、ムムもー、来たんだねー。」
「「ヒロシ様、レンさん、ムムさん、ご無沙汰しています。」」
ふたり共日本語がかなり流暢になっているね。見た目も含めて日本人と変わらないじゃないか。
「やあ、3人共お帰り。疲れただろう、さあ夕食にしよう。」
「ふたり共元気そうで何よりダネ。こっちにも慣れたようダシ。」
「はい、レンさん。こちらでも皆さんに良くして頂いて。結構こちらの生活にも馴染めてきたかと思います。」
「そうかい、村のみんなも心配していたカラネ。たまには帰ってオイデヨ。」
「さあ、そろそろ出来てきたよ。次々机に並べていくからね。摘まんでいってね。」
「はーい。」
「「有難うございます」」
エビフライやイカリングを揚げてはムムさんが運んでいき皿にのせる。
仕事帰りの3人は美味しそうにパクパク。
どうやら3人の歓迎会をしてもらって、エビやイカにも馴染みがあるみたいだ。
レンさんも恐る恐る食べてみる。
「う、う、うん?お、美味しいデス。」
いけそうだな。
夕食の一番人気は予想通り、焼肉としゃぶしゃぶ。
次々と焼いたり鍋に入れていくけど間に合わない。
ヒロシは食べる暇もないくらいに大忙しで、やっと箸をつけれたのは食べ始めてから30分後くらいからだった。
しばらくして、皆が満足した頃、3人の仕事について話しを聞いたり、村のことを話したりとまったりタイムとなる。
最初は戸惑うことばかりで失敗もしたけどシーナもシールも事務職に慣れたようだ。
ミーアはというと、小さなアンテナショップで看板娘状態。
元々山下醸造所の清酒は人気が高く、全国からファンが酒蔵を訪れていたみたいで、酒蔵の横にあるアンテナショップもそれなりのお客さんが来ていたそうだ。
最近はミーア目当てでわざわざ店舗に来てくれる人も増えたようで、売上も確実に上がっているらしい。
アンテナショップの繁盛ぶりはSNSでも拡散され、それがネット販売の増加にも繋がっていて、発送やら入出金業務も大忙しでシーナ達も大忙しだって言ってたな。
山下さんからも聞いていたけど、3人が嬉しそうに話している姿を見ていると、本当に良かったと思って感無量になってしまうよ。
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