農機具を作ろう1

時間を少し巻き戻そう。


ドグマリオ率いる武器・道具チームがヒロシを探して図書館に着いた時のこと。


ヒロシは建築チームの皆さんとプレハブ建築についてその構造を説明しているところであった。


いや実際にはこの図書館で使われている10階建てプレハブの設計書を読み聞かせているだけなのだが。


ドワーフが得意とするのは鉄と石である。双方とも土魔法が得意なドワーフの特性ともいえるだろう。


ちなみにエルフ達は木工を得意としている。こちらも魔法特性によるところが大きい。


「ヒロシ殿、こちらに居られたか。おお、ドワマシー村長もここに居られたかのじゃの。」


「ドグマリオ、村長という呼び名はヒロシ殿と紛らわしいからやめるのじゃ。」


「しかし、呼び慣れておるからのお。それにエルハレのカザミ殿も村長であるしの。」


「確かにそうじゃ。」


ドグマリオさんと一緒に来た年配のドワーフが相槌を打っている。


「しかし.......」


「そうじゃ、ヒロシ殿を村長の上の呼び名にしてしまえばいいのじゃ。


ヒロシ国の王になって頂こう。


そしてカザミ殿がエルハレ村の村長で、ドワマシー村長がドワフル村の村長でどうじゃ?」


突然のドグマリオさんの国王発言にヒロシもびっくり。


でも確かに種族も2つになり、人口も50人を越えたんだから、村を分けても良いかも。


俺は国王なんて絶対嫌だけどね。


「ちょ、ちょっと待って下さいよ。国王って何ですか?絶対嫌ですよ。」


「ならば領主ではどうじゃ。ヒロシ領の領主ってことなら構わんのでは?」


「ふー。まあ国王よりはね。でも俺は皆さんを束縛する気も無いですし、税を取る気も無いですよ。」


「それは困るのお。束縛されるのは苦手じゃが税は取ってもらわんとのお。


それにエルハレの民は収穫物を全てヒロシ殿に収めていると聞いておるがの。」


「どうしても納めるとおっしゃっているので、共同の保管庫を作ってそこに保管しているだけですよ。


俺は特にお金や食べ物に困っているわけでも無いですし。」


「まあ、ともかくエルハレの民もわしらもヒロシ殿に救って頂いて感謝しておるのじゃ。


恩を返させて頂くのを含めても、精一杯ヒロシ殿のお役に立てればと思っておるのじゃぞ。」


ドワーフ達が揃ってフムフム力強く頷いているので、日本人の俺としては折れるしかなかった。


「わ、分かりましたよお。一応領主ということにしておきましょう。


ただ税は必要ないですよ。皆さんが働いた分は皆さんで分けて、余った分は非常用?うーーん、結界の中だからあんまり非常時は考えにくいけど...


まあ非常時に備えて蓄えておくようにして下さいね。」


「うちの領主様はお優しい方じゃて。


さてと、早速ヒロシ殿の領主就任の件、カザミ殿達に伝えねばのう。


領主様、失礼しますぞ。」


ドワマシーはそう言うとそそくさと図書館を後にした。


「まったく…


ところでドグマリオさん達はどうされましたか?」


「おお、そうじゃった。


実はのう、ヒロシ殿、いや領主様に解決してもらいたいことがあったんじゃ。


聞いてもらえるかのお。」


「ヒロシで良いですよ。でどんな内容ですか?」


「ありがたいことじゃ。


実は先ほどエルハレの民達に農機具を見せてもらったのじゃが、金属加工精度の高さに驚いたのじゃ。


それにあの田植え機とかいう道具、なんじゃありゃ!


構造がまったく理解できんじゃった。」


お手上げじゃわまったく、と頭を掻いているドグマリオさん。


当然といえば当然。


剣と冒険、空には翼竜みたいな世界から突然来て、コンピューター制御の複雑な機械を見せられたんだよ。


複製しようと思うだけで大したものだと思う。


「ドグマリオさん、皆さんもオンライン教育を受講したらどうですか?」


「あのエルハレの民が集まってやっとるヤツか。


確かあれは農業関係が多かったようじゃが。」


「他にもたくさんありますよ。


さしあたっては金属部品や加工なんかを勉強するのが良いんじゃないでしょうか。」


あの複雑な装置の一端を学べると聞いて、目を輝かせるドワーフ達。


「是非ともお願いしたい!」


「わかりました。手配しておきますね。


それと関連書物も購入しておきます。」


とりあえずはここにある資料でも読んでもらおうかと、歓喜に沸くドグマリオ達に図書館の案内をしてからヒロシは自宅に戻ってオンライン教育の手続きを始めたのだった。



翌朝、ヒロシの自宅にドグマリオがやって来た。


「領主殿、朝早くからすまぬのお。

昨日、図書館で本を見たのじゃが、文字が全く読めなんだ。

なんとかならんかのお。」


アッと気付くヒロシ。


ドワーフ達と会話が出来るように、結界内に翻訳の魔法を掛けていたのを思い出した。


全然違和感が無かったから、言葉が違うのを完璧に忘れていた。


土魔法を使ってメガネを作成。

そこに文字翻訳の魔法を掛ける。


「20個もあれば充分かな。

とりあえず本は読めるだろう。……


あれっ?そういえばエルフ達って、初めから言葉も理解出来たし、本も読めたよなあ?


なんで???」





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