路線バスって便利だよね
ドワーフ達の到着により、彼らに今回の計画を説明するヒロシとラシン。
穴の掘る位置と掘り方、砕石の処理方法等を細かく指示する。
「我等は土魔法を使えるが、そんなに器用ではないのだ。大雑把になってしまうのじゃがのお。」
「じゃあ俺がお教えしますから覚えて下さいね。
魔法はイメージが大事ですよねえ。
先ずは土人形を作るイメージで魔力を流して下さい。ほらこんな感じで。」
身長50cmくらいの土人形を作って動かして見せると、ドワーフ達は一斉に驚きを見せる。
「こんな細かな細工が出来るのかのお!!」
感嘆するのはドワーフ4人の中でも最も土魔法が得意というドブロンさん。
本来は酒造りチームの一員だが今回は助っ人として登場。
「しかしイメージのお。これまでは山を切り開いたり耕作地を掘り起こしたりしかしてこなかったから、イメージなんて考えなかったからのお。
せいぜい掘る範囲くらいかのお。
では我等もイメージしてみるかのお。うーーん、それ!!」
大きさ2mくらいの不格好な土の塊がドブロンさんの前に立ち上がる。
「うーーーーーん、高さも形もいまいちじゃな。これは難しいわい。
だが面白いもんじゃ。ほれ皆んな、練習するぞ。」
ドブロンさんに触発されて残りの3人も土人形を作り始める。
なかなか上手くいかず、その辺穴ぼこだらけに。
ヒロシは次々にできていく穴ぼこを埋める作業に必死にならざるを得ない状況に。
「やったー。ヒロシ殿、こんなもんでどうじゃのお!」
2時間もこんな具合が続いた頃、ドブロンさんが歓喜の声を上げる。
「おめでとうございます。ドブロンさん。なかなかの出来ですね。
これを連続して作れるようになれば大丈夫だと思います。」
「うむ、任せておけ。安定して作れるようになるまでもうすぐじゃて。」
そんな様子を見ていた他のドワーフ達も奮起。
次々と成功者が現れる。
そして開始から3時間後、全員が穴掘りに使用する身長4mのゴーレムを完成させたのだった。
その頃、ラシンさんはネットでバスの調達中。
今回は中古のマイクロバスを3台購入。旧型ではあるが自動運転機能は装備している。
全長3kmほどの短い路線なので問題ないだろう。
アスタとミーアはセメントの原料となる石灰や粘土などを採掘し、セメントを生成する場所に運び込む。
運搬はヒロシ達が地下路線を掘った時に作ったゴーレムが担当。
3日後には熱処理を経た簡易なセメントが完成していた。
あらかた路線トンネルが完成に近づいたのでヒロシはゴーレムを動かしてセメントを運ばせ、壁に塗り塗りさせる。
作業が終わったドブロンさん達も参戦し、自分の作ったゴーレムでセメントを塗り塗り。
そうして穴掘り開始から2週間。全長3kmの地下路線トンネルにバスが降ろされた。
トンネル内にはライトが付けられ地上の昼間と大差ない明るさ。
停留所となる縦穴5カ所は穴が広げられ、エレベータを設置。その他の縦穴は空気孔として利用する。
「一番車両しゅつぱーーーーーつ!!!」
ミーアの元気な掛け声と共にヒロシ村初の路線バスは、定員20名を目いっぱい乗せて動き出したのだった。
「しかし、ヒロシ殿はとんでもない力と知恵をお持ちじゃのお。
しかもそれを威張る事もなく、我々に懇切丁寧に指導して下さる。
彼は神に遣わされた聖人じゃなかろうかのう。」
「ドレミドさん、ホントにそうかもシレマセンヨ。
以前ミーア様に聞いたことがあるのデスガ、ヒロシ様は神様に導かれて違う世界に行かれたソウデス。
そこでミーア様とも出逢われ、その世界を壊そうとする悪神からその世界の住民を救ったとイウノデスヨ。
それほどの力と勇気を持っておられるのデス。」
夕陽が美しい明かりを降り注いでいる中央広場。
何周目かになる路線バスの到着を待ちわびる仲間達の笑顔を見ながらドレミドとラシンはこの地でヒロシ達に助けられた幸運を噛み締めていた。
「さあ皆んな、路線バスは動き出したぞーー!!今度は鉄道だーーー!!
鉄道を作るぞーーー!!!」
路線バスが開通して1週間。定期運航に移行したのを確認したインフラチームを率いるドレミドさんは、メンバーに全員に発破をかけていた。
鉄道を始めるにあたって最重要事項は何と言っても鉄の調達。
バスは購入手段があったが、鉄道車両や線路についてはとてもじゃないが民間人が購入できるものではない。
榎木広志の莫大な資産を使えば購入できなくも無いだろうが、メンテナンスなどを考慮した場合、やはり自前で製造するのが最上策であるだろう。
そのために鉄の調達は必要不可欠なのである。
また車両についても1から造るには何もかもが不足している。
とりあえず鉄道会社から処分予定の車両を1両購入してそれを参考に造っていくことにした。
鉄の調達と車両の調査・製造というヒロシ村としては最大難関プロジェクトに取り組むドレミドさん達インフラチームと今やアドバイザーであり企画責任者ともいえるラシン、アスタ両名の新しい戦いがここに始まったのである。
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