村内の交通インフラを作ろう3

交通インフラチームの面々は鉄道模型に夢中の様子。


しかし鉄道を走らせるためには線路を引いたり車両を作ったりと大量の金属が必要になる。


そのため、技術の習得が出来たとしても実際に造り出すためには膨大な時間と労力が必要となることが考えられた。


そこでラシンさんの助言もあり、最初はバス網を作ることに決まった。


「ラシンさん、バスは昔は地上を走っていたんだよ。」


「えーー、そうなのデスカ?確かに地下に穴を張り巡らせるよりは地上の方が簡単だと思いマスネ。」


「そうなんだよね。バスは今から140年位前にここ日本でも走り出したんだそうだよ。


それからほんの10年位前まで地上を走るのがメインだったんだ。


でもね、しだいに地上にたくさんの家や建物が増えてバスを地上に走らせることが難しくなったことや、地球温暖化とか環境問題が叫ばれる中、新しい仕組みで走らせる必要が出てきた。


じゃあいっそのこと地下に新しくバス網を作り直そうって話しになったんだ。


地下だったらいくら二酸化炭素を出しても地上に出る前に人口光合成で分解してやれば良し、地上で空いた道を探すより効率の良い路線を作れるからね。」


「そんな経緯があったんデスネ。しかし奥の深いお話デス。研究者としてワクワクシマス。」


「それは良かったよ。ラシンさんには聞いていて欲しかったんだ。


でね、ラシンさん。バスなんだけど地上と地下どちらにする?


一応地盤は固めてあるからどっちでも大丈夫だけど。」


「うーーーーーん。地上の方が作り易いのデスヨネー......


でも、地下にしたいと思イマス。実はドワフル族の方達に土魔法が使える方が数人いるそうナノデス。


彼らに協力してもらえば、地下道を掘るのも難しくはアリマセンシ。


トンネル技術はわたしとアスタで勉強しまシタカラ。コンクリートもバッチしデス。」


胸を張るラシンさん。やっぱり興味は地下道を走るバスにあるみたいだな。


「それは頼もしいですね。俺も手伝いますよ。」


「有難うゴザイマス。それでこれが計画書デス。


まず地下10mの所に地下1階にあたるバス網を作りマス。高さは......」


延々1時間近くラシンさんの説明を聞くことに。


さすがは学者先生。しっかりと知識を学んで考えているみたいだ。


隣で聞いているアスタもうんうん頷いているからしっかり理解しているんだろうな。


ラシンさんの説明を要約するとこんな感じ。


1.地上から10m地下に4m四方の地下道を掘り最初のバス網を敷設する。

2.最初のバス網は結界の内側を周回するような形にする。

  ヒロシ達の家やエルフ達の家はなるべく耕作地に掛からないように結界の端の方に作ってあるので、バス路線に沿った形になる予定。

3.バスは1方向にのみ動く片側通行にする。したがって道は1車線とし開通を優先する。

4.将来的に2車線以上に拡大できるように余裕をもって敷設する。(片側通行)

5.将来結界を広げて敷地が広がった時を考慮してこのバス路線の下に別の路線を走らせる拡張性を持たせておく。


ラシンさん、アスタと一緒にかなり勉強したみたい。

交通渋滞緩和策や都市計画、拡張性までこれまで日本で考えられてきたあらゆる考え方を考慮してるし。


「「これが最初の路線図デス!」」


ラシンさんとアスタが満を持して出してきたのはバス網敷設予定エリア全体とその下に赤色に引かれたバス網が書かれた地図。


今の耕作地をできるだけ避けた形で引かれており、地上から掘り起こしても影響が無いように考えられていた。


「うん、これならドワーフの土魔法と俺のゴーレムで何とかなりそうだね。


コンクリートはどうする?」


「以前に教えて頂いた方法で山の石灰岩を使おうと思いマス。」


「わかったよ。じゃあ最初の路線となるトンネルを掘っていくよ。


えーと、ここからここまでを1区画として、全体を20区画、それで俺とドワフル族の4人で4区画づつ掘ればいいかな。


その前に各区画間の発着の目印になる縦穴を掘ってっと。」


ヒロシは地上20mくらいまで飛び上がり、そこからほぼ円状となる予定の路線予定地を俯瞰する。


そしておおよその作業区画20カ所に見当をつけて、その発着となる19カ所で身長2mくらいのゴーレムを作成し地上に上がらせる。


半径1m、高さ1mくらいの穴が19カ所に開き、今度は手前の穴から順に次々とゴーレムを呼び起こして穴を深く掘り下げていく。


1穴につき最初の1体を含め14体のゴーレムが完了すると次の穴へと進む。


こうして約1時間ほどで19カ所に深さ14mの縦穴が掘られた。


「ふーーー。こんなもんかな。1区画あたりの長さは概ね150mくらいか。


まあこのくらいなら問題無いかな。


あっ、そうだラシンさん。この周回になっている路線の中心辺りにも縦穴を用意しておきますね。路線が掘り終わったら周回の縦穴から中心の縦穴迄穴を掘っておきます。


もしものための避難路にもなりますし。」


最初の路線は1周約3km。停留所の数は5カ所を予定。中心に伸びる横穴の1本は450mくらいかな。


ラシンさんと最終的な確認を行い、特に問題ないと判断。


ちょうどその時に土魔法を使えるドワーフ達が到着したのだった。








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