村内の交通インフラを作ろう2
Nゲージが走っている光景にすっかり心を奪われたドワーフ達。
電気にも興味は尽きないが、模型に使用されているプラスティックや小さくて精密な金属製のギヤやモーターにも興味津々である。
モノ作りについては一家言ある彼らにとっても言葉に表せないほどの高い製造技術と未知の素材は、先程までのラシンさんやアスタの説明を十分に補足して余るものであった。
模型だけで既に彼らの理解を大きく超えているのだが、この数十倍の大きさのものが人を乗せて動く姿を想像できるわけも無い。
ただ、この模型だけでも彼らが真剣に取り組む動機には十分であった。
早速模型を分解して中を確認しようとするドレミドさん。
慌ててアスタが止める。
「これはヒロシ様に頂いた大事な大事な宝物デス!どうか壊さナイデ!!!」
涙をいっぱいに浮かべたアスタの必死な姿にドレミドさんも我に返って手を止める。
「しかし、しかしじゃな、構造が分からなくてはのおーー。」
困り顔のドレミドさん。
「分解用のを買ってもらえばいいじゃん。僕が言ってきてあげるよーー。」
静まり返って暗い雰囲気の漂う資料室に、ミーアの軽い言葉が響き渡る。
突然の陽気な声に皆が唖然としている中、ミーアは颯爽とヒロシの元へ向かっていった。
数時間後、通販で届いた鉄道模型とその他(Nゲージだけでなく子供用の簡単な奴やモーターと車輪のセット、手回し発電機など電気と鉄道を理解する上で必要そうなものやドライバーなどの工具一式)を持ってミーアが戻ってきた。
「おっまたせーー! これならいくら分解したり組み立てたりしても大丈夫だよーー。
あっ、それとこっちがバスの模型ねーー。どうせ必要になるからって、ヒロシがくれたんだよー。」
アスタのホッとした顔と、歓喜に沸くドワーフ達の姿があったのは言うまでもないだろう。
ところ変わってこちらは武器や道具を作るチーム。
武器や道具を作るのはドワーフの本職とばかりに、比較的高齢の職人衆が膝を突き合わせている。
うんうん唸りながら見つめているのはエルフ達が使用している農機具。
鍬や鋤などは彼らも良く知っているし、その作り方も熟知している。
それだけなら誰も唸りはしない。
問題はその加工方法と金属精錬技術にあった。
もちろん彼らは自分達が作る鍬や鋤に絶対の自信を持っていたし、彼らの世界ではそれ以上のものはどこを探しても無いくらい優れたものであった。
しかし、今目の前にあるモノはそんな彼らの常識を軽く飛び越えるほど未知の技術で作られた鍬や鋤であったのだ。
それだけではない。
もちろん鍬や鋤だけでも彼らの目を見開かせ唸らせるに十分なモノであるのだが、それ以外にもチェーンソーや各種電動工具、そしてその奥には田植え機や稲刈り機まであるのだ。
ドワーフ達が如何に頭を悩ませているかが分かるだろう。
うんうん唸ること数時間。
そこへカザミさんが現れる。
「皆さん、図書館に行ってみてはいかがデスカナ。さっきヒロシ様が図書館に向かっておられましたから、何かヒントがもらえるんじゃナイデショウカ。」
「そ、それじゃーー、皆んなー図書館へ行くのじゃーー!!」
「「「オーーーーーー」」」
リーダーのドグマリオさんの掛け声にドワーフ達は一斉に図書館に向かって走り出した。
ドグマリオン達が農機具を見つめていた頃、ヒロシはドワマシーさん率いる建築チームと図書館に来ていた。
ヒロシ村にある建物や温泉、水道などの施設はほとんどヒロシが魔法で作った物だ。
そして酒造チームの為の酒造施設も。
その製作現場を見ていた建築チームの驚きは尋常では無かった。
ヒロシの魔法にではない。
魔法ならドワフル族のいた世界にも存在する。
まあヒロシの使う魔法はドワフル族の知るそれとは次元の違うものではあったが。
では何に驚いたのか。
洗練されたデザインや強固な構造、未知の建築資材、そして資材通しを繋ぐ接合技術にである。
ヒロシの造る建築物は基本的にゴーレムを使った石造りの物が多い。
これはヒロシが魔法を使える様になったのが、かってミケツカミによって飛ばされたエレメントスだったからである。
エレメントスの建築物は基本的に石造りだったので自粛してそれに合わせただけである。
現状でも石造りの建築物で特に問題無い物も多いから、ヒロシが魔法で造る物に馴れた石造りが多いのだ。
でもここは日本。様々な建材が豊富に手に入るし、誰に遠慮する事もない。
流行りの移動式ブレハブ住居や10階建てビルのブレハブなんかも通販で簡単に購入出来る。
バス網を地下に張り巡らせる計画が出た時に魔法で一気に敷地のほとんどの地盤を強化しているから、地盤沈下の問題も無いし。
それにこの場所は山奥中の山奥。ブレハブを立てるくらいで建築基準とかも気にしなくて問題ないよね。
なにせ、今居る図書館も10階建てブレハブで出来ているのだ。
それを見てドワマシー達建築チームの皆さんが驚きに震えるのは当然といえば当然だろう。
ともかく、ヒロシに建築知識は皆無の為、新しい建築関連の資料を集められるだけ集めて、ドワーフ達をここに連れて来たのだった。
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