ドワフル族の歓迎会
ドワフル族の皆さんを率いて歩き出してから2時間後、ようやく家が見えてきた。
「ヒロシ様ーーー。お帰りお待ちしてまシター。」
レンさんがこちらに駆けてきた。
「あーレンさん。迎えに来てくれたんですか。カザミさんに聞いていると思いますが、こちらドワフル族の皆さんです。」
「皆様初めまして、エルフのレンと申します。突然の転移で驚かれましたでショウ。本当にお疲れ様でシタ。」
歓迎会の準備を一通り終えて、なかなか戻らない俺を心配してくれたのか、レンさんが走ってきてくれた。
俺がドワフル族の皆さんを紹介すると、落ち着いた口調でドワフル族の皆さんを労っているようだ。
エルフの中でもドワフル族に対する忌避感が無い様なのは良かった。
「レンさんもドワフル族の伝承はご存じなんですか?」
「ええ、わたし達は小さい時からドワフル族の伝承を必ず聞きマス。
わたし達と一緒に国を建国して頂いた英雄様ですカラネ。」
「レンさんと言われましたかな。儂はドワフル族の村長をしておりますドワマシーといいますのじゃ。
こちらこそ、エルハレの民を英雄と思っておりますのじゃ。宜しくお願い致しますぞ。」
お互いを建国の英雄と呼び合い、ニコニコしながら挨拶をしているレンさんとドワマシーさん。
そこに何人かのドワフル族が混じって、立ち話しが盛り上がっている。
「これ、レン!皆さんを早くこちらへお誘いセヌカ。」
「あっ、カザミさんすいません。つい話しに夢中になっちゃいマシタ。
皆様、歓迎会の準備が整っておりマス。ご案内致しマスのでこちらへお越しクダサイ。」
笑顔で先頭に立つレンさんとその後ろについていくドワフルの皆さん。
最後尾をカザミさんとドワマシーさん、そして俺が並んで歩く。
「いやー、ヒロシ殿、カザミ殿。歓迎頂きありがとうですじゃ。
突然この地に来てしまった時はどうなることかと少し狼狽えておったんじゃがな。」
全然そうは見えませんでしたよドワマシーさん。って言葉をぐっと飲みこんですこしぎこちない笑みを浮かべる。
「全てはヒロシ様の温情のおかげですよドワマシーさん。
この村ではヒロシ様とミーア様が神のごとき神通力で我々をお守りくださいマス。
我々はその恩恵に授かり、こうして飢えも知らず、新しい知識を吸収させて頂いておるのデス。」
「ヒロシ殿、我々も精一杯頑張らせて頂きますでな、宜しくお願いしますのじゃ。」
頭を下げるドワマシーさんに居心地の悪くなった俺は、2人を促して歓迎会の会場にひとり急ぐのだった。
「ヒロシ様は照れ屋なので、あまり格式ばった挨拶とかを嫌がられるのデス。
しかし、あの方のおかげで絶対絶命であった我が村人達はこうして笑顔を取り戻し、こちらで新しい命を授かることも叶ったわけなのデス。
ドワマシーさん、我々と協力して少しでもヒロシ様のお役に立ち、救って頂いたご恩を返そうではありまセンカ。」
「うむ、宜しくお願い致しますぞ、カザミ殿。」
お互いに頷きあい、微笑みあった2人は既に歓迎の坩堝と化している広場に溶け込んでいった。
歓迎会の会場にはエルフ23人、ドワーフ30人、それと俺とミーアの合計55人。
これが現在のヒロシ村の全住人だ。
「うー、こんな旨い食事は初めてだーー。」
「飲み物は足りてマスカー?」
「この白いヤツ、うめー!!!」
「これはお米って言うんですよーー。ここの主食ですーー。
そうだ、ドワフルの皆さんってお酒が好きなんですヨネー。伝説で伝わっておりマスヨー。」
「良く知ってるねーー。そう俺達は酒を飲むのも好きだし、作るのも上手いぞー。
俺達の作る酒は最高だーーーー!!!。」
「そういえばこのお米からもお酒が作れるんデスヨーー。ねえーヒロシ様ーーー。」
「「「えっ..............」」」
宴もたけなわ、エルフ達とドワーフ達はすっかり打ち解けあって、いろんなところで会話を交わしているようだ。
最初は心配したけど、お互い伝説の英雄としてリスペクトしていたみたいだからね。
俺も適当に広場を周って様子を見ているのだが、正直ホッとしている。
先程からムムさんとドワフル族のドグラスさんが料理を片手に親睦を深めていた。
「ヒロシ様ーーー。お米のお酒のお話しをドグラスさんにしていたところナンデスー。」
「ドグラスさんはお酒を造っておられたのですか?」
「ええー、ところでヒロシ殿、いや村長、さっきムムさんからこの白いヤツからお酒が造れると聞いたのですが......」
「白いヤツ? ああお米ですね。ええ造れますよ。確かあったはずだから取って来ましょう。
ちょっと待ってて。」
俺は急いでマンションに戻り、榎木広志時代の日本酒コレクションから数本を持ってきた。
お猪口は5つで足りるかな。
全然足りなかった。
いやードワーフを舐めていましたよ。
一升瓶を開封したとたん、酒の匂いにつられてドワフル族の皆さんがぞろぞろと集まってきた。
ほぼ全員。
とりあえず5杯だけ注ぐ。
「「「ゴクッ...」」」
喉を鳴らして日本酒の入ったお猪口を凝視するドワーフ達。
その中から2人が進み出る。
まずはドワマシーさん、次がドグラスさん。
どうやらドグラスさんは酒造り工房のリーダーだったみたいだ。
喉を鳴らし真剣なまなざしを向けているドワーフ達。
何が起きたのかとそれを遠巻きに見ているエルフ達。
俺は2人に透明な日本酒を注いだお猪口を渡す。
大きな分厚い手の親指と人差し指が小さなお猪口をつまみ、色、香りを確認している。
そしておもむろに喉に流し込まれた。
「「う...旨い!!旨すぎるーーーーー!!!」」
そして絶叫が響き渡った。
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