ドワフルとエルハレ
カザミさんとドワフルさんが語る内容を聞きながらまとめるとこんな感じかな。
その昔、木工・金属製造を得意とするドワフル族が住んでいたところに、当時最先端の焼き畑による高い生産力を誇り耕作を生業とするも流浪中のエルハレの民が現れ協力して国を形成、文明を築いた。
両種族は良く働き、その国家は繁栄を極める。
ドワフル族が街を建設するために森林を乱獲し、食糧生産を高めるためにエルハレの民が焼き畑を繰り返す。
こんな生活を何10年、何100年と過ごすうちに木々の無くなった山は保水機能を失い、大雨のたびに土砂被害を起こし、焼き畑により痩せた土地の生産量は徐々に落ちていく。
結果、国としての機能を維持できなくなったため、それぞれの種族は別々の道を歩むようになったのではないかと。
カザミさんとドワマシーさんはヒロシの話しを真剣に聞きながら頷きを繰り返す。
「確かにヒロシ様のおっしゃっる通りだと思いマス。」
「全くじゃな。」
カザミさんの感慨深げな声にブンブン首を縦降りし同意するドワマシーさん。
「ところでカザミさん。ドワフルの皆さん30人の移住についてなのですが。」
「かつて国を同じくした同胞であり、我らの祖先を受け入れて下さったドワフルの民を我らが拒否するなどあり得マセン。
ヒロシ様のお心のママニ。」
「じゃあ問題なさそうですね。」
まずは一安心と。
俺は今後どのように進めていこうかと考える。
「ドワマシーさん。ドワフルの皆さんが住むとして、どのくらいの広さが必要ですか?
遠慮なく言って下さいね。」
「そうじゃなあ、酒蔵が2ヶ所と炉が5つもあれば充分じゃな。」
「家はどうされますか?」
「なに、寝床など酒蔵と炉の中に隙間があればそれで問題ありゃせんわ。」
なんというか、ラノベに出てくるドワーフそのものだな。
若い頃に愛読していたラノベを思い出し、苦笑するヒロシを余所にカザミさんとドワマシーさんは親睦を深めていた。
「ヒロシー。ここに居たんだー。」
「あっミーア!
そうだ紹介するよ。コチラ新しく村民になる予定のドワフル族30人のリーダーでドワマシーさん。
ドワマシーさん、こっちが俺の家族のミーアです。」
「おー、ミーア殿ですかの。お初にお目にかかります。
今ヒロシ殿とカザミ殿から村での生活を許可頂いたドワフル族のドワマシーじゃ。
よろしくお願いする。」
「ミーアでーす。よろしくで~す。
ヒロシー。じゃあ、今日は歓迎会だねー。」
「そうだね。カザミさん、ドワマシーさん、これから歓迎会にしましょう。
カザミさん、申し訳ありませんが、準備の手伝いお願いしますね。
ミーア、カザミさんを連れて行ってあげてくれるかい。」
「「わかりマシタ(わかったよー)」」
ミーアに抱えられたカザミさんが、住居地区に戻って行った。
「さてと、じゃあドワマシーさん、皆さんを迎えに行きましょう。」
ヒロシとドワマシーはドワフル族の皆さんのもとへ向かった。
「ドワマシーさん、カザミさんの了承が得られて良かったですね。」
「ヒロシ殿のお陰ですじゃ。なんと言ってよいやら。」
「いえいえ、皆さんにはドワマシーさんから説明して下さい。
きっとその方が安心されますよね。」
「もちろんですじゃ。みな喜ぶと思いますぞ。」
その後、ドワマシーさんから説明を受けたドワフル族の皆さんは大喜びし、歓迎会の知らせに狂喜乱舞したことは言うまでもない。
やっぱりドワーフだねー。
「ヒロシ殿、みんなの様子を見てやって欲しいのじゃ。この光景がドワフル族の総意だと思って頂いて結構。」
「わかりました。では皆さんをこの村の一員として歓迎いたします。」
ワーーーーー!!!っと言う大きな声が聞こえてくる。
ドワフル族の皆さんにはこちらの声が聞こえていないだろうし理解もできていないと思うが、ドワフルさんと俺が笑いながら握手する様子に言葉はいらないな。
「じゃあドワフルさん、ここからちょっと歩いてもらいますが、俺についてきてくれますか。」
「分かったのじゃ。オーイ、皆の者ついてくるのじゃー」
「「「オーーーーーー」」」
俺は結界を少し開放し、ドワフル族さん達を結界の中に入れる。
「「「オーーーーーー」」」
雨上がりの高い湿度の森から快適な結界の中に入った皆さん。その心地良さにうっとり。
「さあ遅れないようについて来て下さいね。」
家まで約2kmの道のりをドワマシーさん以下30名を引きいて移動する。
ヒロシの知識にあるラノベのドワーフよろしく、実に好奇心が強くおおらかで自由な人達だ。
彼らの住んできた環境と大きく異なるようで木を見てはあーだこーだ、花を見てはあーだこーだと驚いたり愛でたりと30人30様の動きで、なかなか進まない。
「ドワフルさん、皆さん好奇心旺盛ですね。」
「いやあヒロシ殿、勝手な奴等ばかりで申し訳ない。急がせよう。」
「いえいえ大丈夫ですよ。まだミーアやカザミさん達の準備も掛かるでしょうから、ゆっくり行きましょうよ。」
「全くあいつらは!こんな状況になっているのに実にのんきな奴らだ!!」
ドワフルさんの気持ちも分かるけど、エルフ達は生真面目すぎるから、ちょうどいい組み合わせかもね。と思うヒロシであった。
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