運動会を楽しもう

外の広場ではヒロシが生成したゴーレムが地面を整地して陸上トラックを作っている。


その隣ではヤムルとシンブがエルフ達全員が食事をとるための机と椅子を作って並べている。


レンとムムは肉やサラダを作って食パンに挟んでいた。


運動会で競技を楽しみながら食事をしてもらおうという流れだ。


「ヒロシ様、ミーア様、お疲れ様デス。ヤムル達もご苦労サマ。」


「あー、カザミさんお疲れ様です。みなさんの様子はどうですか?」


「はい、ヒロシ様。皆に競技を説明して出場者を募ったところ、全員が全ての競技に出たがりマシテ....。なんとか時間が掛かりマシタガ、予定の人数に絞り込むことがデキマシタ。」


「やっぱりそうですよね。カザミさん、大変でしたね。」


昔エレメントスで運動会をやった時もこんな感じだったなあと懐かしむヒロシだった。



陸上トラックを作り終えたゴーレム達が戻って来た頃、ヤムル、シンブも作業が終わったようで戻って来る。


「ヒロシ様、食事の準備が整いマシタ。全て机の上に並び終えてイマス。」


レンとムムも作業を終えたようである。


「準備も全て終えましたか。じゃあミーア、カザミさん始めましょうか。」


「はーい。」「わかりマシタ。」


ミーアがマイクの前に移動すると同時にカザミ村長がエルフ達をトラック内に整列させる。


「ヒロシー、準備できたー。」


「じゃあ、ミーア始めようか。ミーア開会のあいさつを頼むよー。」


「りょーかーい。みんなー準備はいいかーいー!運動会をはーじめるよーーーー!」


「「「「「「「オーーーーー」」」」」」」


こうしてミーアの開会のあいさつを皮切りにエルフ達にとって、いやヒロシの村にとって初めての運動会が始まったのだった。


「シンブーしっかり走れヨー!!」


「ピーターーーー、もう少しで玉が入るワヨー。」


徒競走や玉入れなどヒロシが小学校時代の運動会で定番だった競技が次々と進行されていく。


ちなみに2045年の現在においては残念ながら小学校でこれらの競技は行われていない。


家族の多様化と共に、家族そろっての運動会は無くなり、最近では運動会すら実施しない学校も増えているらしい。


その代わりバーチャルスポーツというオンライン対戦での運動競技を行う学校が増えているそうだ。


「うーーん。やっぱり運動会って言ったらこれだよねーーーー。」


ヒロシの独り言ちを聞いていたミーアが不思議そうに声を掛けてくる。


「ヒロシー、運動会ってこういうモノじゃないのーーー?」


「そうだね、最近はあんまり運動会をやっていないみたいだね。

こんなに楽しいのにね。」


「ふーん。よく分かんないけどー、ヒロシのその顔を見てるとあんまり面白い話しじゃなさそーだねー。」


「そうだねー。やっぱり運動会はこうじゃなくっちゃねー。」


「じゃあー僕ももう一回走って来るねーーー!!!」


既に数えきれないくらい競技に参加しているのに、ミーアはまだ走るようだ。


いやミーアだけじゃないな。エルフ達全員が走っては食べ、投げては食べ、また走っては食べを繰り返している。


配膳係をさせているゴーレムもむちゃくちゃ忙しそうに駆け回っているみたいだな。


「ヒロシ様は走られないのデスカ?」


「レンさんか。食事を作るの大変でしょう。ご苦労様です。」


「いえ、若い子達がみんな手伝ってくれるノデ、わたしも何回か走らせてイタダキマシタヨ。」


「そうですか。それは良かったです。どうですか、楽しめていますか?」


「ハイ、あんなにはしゃぐみんなを見たのは初めてかも知れマセンネー。

ヒロシ様、わたし達にこんな機会を与えて頂きホントウニありがとうゴザイマス。」


「これからは、6日働いて1日休みになりますからね。

休みの日には自分のやりたいことやゆっくり体を癒す時間に使って欲しいです。」


「まだ休みの日というのがよく分からないのデスガ、またみんなで運動会が出来ればうれしいデス。」


「まっ、その辺はおいおい考えていきましょうかね。」


「ハイ!!!」


ヒロシはエルフ達全員が趣味を持って休日を楽しんでもらえばいいと考えている。


もちろんゆっくり体を休めるのも良し、温泉に浸かるのも良し、こうしてみんなで汗を流すのも良しだ。


そのために、定期的なイベントの開催や保養施設も拡充しなきゃなあと思っている。



ようは、エレメントスの住人の時と同じで休み方を知らないだけなのだ。


現在においては効率的に休みを取ることで生産性が向上することは当たり前の話ではあり、逆に休まずに働き続けると短期的には生産性が上がるように見えるが、そのうち自ら労働力を抑制することとなり長期的な生産性が悪化するのである。


週1回以上の休日を取ることで就業日の生産性を高めることにつながるのだ。


ただ休日の概念がない真面目なエルフ達は全ての日において手を抜かないわけで、当然肉体的、精神的に大きな疲労を溜め込むことになっているのだが、それが彼らの常識でもある。


つまり、決して健康的とは言えない中で身体を壊していく者が多くなっているのだ。


彼らに定期的な休日を強制的に取らせ、その休日を精神的、肉体的な疲労を解消するために使用させることこそが、最もエルフ達に必要なことだとヒロシは考えていたのだった。


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