第24話:マーちゃんの決意。マーちゃんの覚悟。そして私の不甲斐なさ。

夕方。

ありがたい感謝祭も終わりに近付いて、私たちは帰り支度じだくをし始めた。

そのとき、突然、マーちゃんが神妙しんみょうに切り出した……。

「直ちゃん、俺、東京行ってもいいか?」

ギョッと空気が凍りつく……。

「事務所から何か言ってきたの……?」

「うん。審査に通ったんだってさ。ぜひ、来てくれないかって。でも、俺、無愛想ぶあいそうだろ?。とてもアイドルなんかできないって言ったら、モデルや役者として売り出すから安心してくれって……」

「それで、マー、行くって言ったのか?」

「うん。成功したらオフクロ楽にさせてあげられるんじゃないかって……。俺も直ちゃんちも貧乏だろ?。でも、俺、直ちゃんみたいに勉強できないし。こういうやり方なら俺にも何かできるかなって……。だから、これ、すごいチャンスじゃないかと思ってさ。一生に一度あるかないかのすごいチャンス……」

「そっか……」

「でも、マー、お前、人から注目されるの嫌いだって……」

「うん、でも、この前、直ちゃんが『綺麗だ』って言ってくれてすごく自信が付いた。何だか、頑張れる気がしたんだ。直ちゃん、ありがと」

マーちゃんは恥ずかしそうに笑った……。

正直、覚悟はしていた。

私もこれがマーちゃんにとってのベストな道だと思った。

できればマーちゃんと卒業して高校は別でもずっと一緒に生活していけたらなあ……なんて先の見えない、いい加減な甘い予測をしていたけど、やっぱり現実は違うよね……。

マーちゃんは生活していかなくちゃいけない。

生きていかなくちゃならない。

私が大金持ちでマーちゃんを一生やしなっていければすべて解決するんだけどね。

でも、まだ中学生……。

何もできないよ。

前に、マーちゃんを思えば思うほど苦しい責任感を感じるって言ったけど、

この責任感は何もできない自分への苛立いらだちだったんだよね。

たぶん社会に出てちゃんと自立できたらこの責任感から解放されるんだろうね。

まだまだ先の話だよ。

今私がマーちゃんを止めるのは無責任。

今の私には何もできない。

何もしてはいけない。

マーちゃんのこのビッグチャンスをつぶしてはいけない。

マーちゃんはロックだ。

覚悟を決めて博打ばくちを打った。

だからロックンローラーじゃない私たちは、ロックなマーちゃんを優しく応援するだけだ。

ずっと応援するだけだ。

でも、一つ気掛かりなのは、マーちゃんが東京行きを選んだ事実だ。

私はマーちゃんに恋したから卒業後も一緒にいたいと思った。

でも、マーちゃんが東京へ行くって決めたってことは、やっぱりマーちゃんは私のことなんか何とも思ってなかったってことなのかなあ……。

これはマーちゃんの心だから誰にも分からないけど……。

でも、やっぱり、「いつまでも私は単なる幼馴染み」ってことなのかなあ……。

何だか失恋とまでは言わないけど、何だかガッカリした……。

マーちゃん……。

どうなんだろう……。

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