第8章 考えるな、考えてる時点でダメ。やるなら今しかない。

第25話:私の決意。私の覚悟。そしてありがとう仲間たち。

マーちゃんの東京行きを聞いて私はいてもたってもいられなくなった。

身体からだの中を血液が物凄ものすごいスピードで流れているような感覚に襲われた。

私も社会とかかわりたい。

せめてマーちゃんの東京行きの旅費だけでもプレゼントしたい。

私はもうあせって空回からまわりスレスレのところで興奮しているような状態だった。

でも、ギリギリのバランスをたもっていた私の心は、まず、私なりに働ける仕事を探そうと思い立った。

でも、15歳の中学生……。当然法律で働けない。

そこで石川翔に事情を説明して実家の農家で働けないかと相談したら両親に話してくれて内緒で手伝わせてもらえることになった。

龍馬空港から東京への飛行機代もろもろの2万円あげると言ってくれた。

持つべきものはやっぱり友達なんだなあ……と私は、母と澄ちゃんのことをしみじみ思い浮かべた。

でも、やっぱり中学生の労働は法律やら、それからなんか「労災……」だとかがりないとかで、あくまでも内緒、あくまでも2週間限定の手伝いということで周囲には黙っててくれと言われた。

それを当然黙ってられない石川翔はさっそく沢田唯人に報告して、

「だったら俺も手伝うよ。三人でマーの旅費をあげようよ」

という話になりかけたけど、これは私が丁重に断った。

どうしても私一人の手でマーちゃんの旅費を稼ぎたかった。

私の力でマーちゃんを東京へ送ってあげたかった。

だから二人には、私一人にやらせてくれと頼み込んだ。

「直子、おっとこまえーッ!」

「マーは幸せだな」

「マーちゃんに言わないでね」

7月末、さっそく私は石川翔の農家で働かせてもらった。

殺す気か……。

石川翔の両親は容赦ようしゃなく私を使った。

「いやあ、若手が欲しかったんだよ、へへへ」

作業内容は徹底的な積荷つみに……。

収穫した農作物を集積場所へ。

重たい肥料を車の荷台へ。

これまた重たい作業道具を倉庫から玄関へ。

とにかく重い物をそっちからあっちへ、下から上へ、右から左へトコトン運んで積んだ。

要するに石川翔が普段ヒーヒー言っている作業を担当させられた。

そんな石川翔は

「いいヤツ見つけたわ~」

とケラケラ私を見て喜んでいた。殺してやる……。

まあ、それでも仕事があるだけでもありがたい。

普通は就労できないんだから……。

無理なお願いを聞いてくれた石川翔には心から感謝している。

たまに沢田唯人が弟妹きょうだいを連れてゲラゲラ笑って冷かしに来たが、こいつは本当に殺してやろうと思った。

冗談はさておいて、とにかくマーちゃんのために私は頑張れた。

他の作業の主任さんから、

「お前はケガしても商品は絶対傷付けるな」

真面目まじめに言われたときは社会の厳しさを知った。

マーちゃんはお店の手伝いでずっとこれを見てきたんだなあ……。

大人なわけだ……。

マーちゃんのために頑張ろうとつくづく思った。

私のこの厳しさは2週間で終わるけど、マーちゃんはこれからずっと芸能界という厳しすぎる社会で生きていくんだ。

2週間ぐらい死んでやろうと思った。

愛のエナジーってやつですかねえ……。

ホントに不思議な力だと思う。

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