第7章 追試とそれぞれの決意、それぞれの道、それぞれの想い。

第22話:結果はっぴょおおおうッ!。ひとかわむけたわ。

7月下旬。梅雨つゆあけの直前。

マーちゃんたち三人は見事追試に合格した。

マーちゃんが88点。

石川翔が70点ギリギリ。

沢田唯人がなんと98点、ホントに最後まで要領いんだから。

そして私の模試はというと、前回より3つ落として学年5位。

まあ、こんなもんだろ。

森岡真貴子が首くくらないか心配だ。

廊下で順位表のり紙を見ていると浅野多久美が近付いてきた。

堂々たる1位だ。挨拶あいさつ回りですか。ご苦労様です。

「ずいぶん落としたなあ」

「まあね」

「数学と理科は?」

「90点代だった」

「さすが……」

「暗記モノでかなり落とした」

「猿も木から落ちるって?」

「私はまだ落ちてないよ」

「じゃあ、『弘法こうぼうも筆の誤り』にしておくよ」

「どうも」

「打撃不振?」

「練習不足」

「でも、この模試は進路指導に響くよ」

「取り戻す」

「一度失ったものを取り戻すのは、新しいものを得るより難しいってさ」

「でも、私はもっといいものを手に入れたかもしれないよ?」

「何よ」

「アンタに言っても解からないよ」

私は外へ出た。

初夏の風が気持ちいい。

日差しが痛い。

でも、いい痛みだ。

私はテストの順位を失ったけど、新しい三人の友達を得ることができた。

1学期の終業式が終わって、マーちゃんと石川翔と沢田唯人がカラオケに誘ってくれた。

追試合格のお礼をしたいと言う。

男の子から正式に招待を受けるなんて初めてだ。

いい気持ちだね。ウキウキしちゃう。

これがモテるってことなのかなあ……。

よく分かんない。

そんなに深く感謝されてないかもね。

私も恩着おんきせがましいことしたくないし。

今まで通り明るく元気な付き合いがいいな。

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