第21話:結論、愛してた。私の純粋な気持ち……。

マーちゃんと私。追試の勉強。

二人きりで顔を見合わせる。

マーちゃんはここでも変わらない。

いつも通り私の言うことを聞いて全力で勉強に取り組んでいる。

これはすごいことだ。

ブレてない。

私にとってはこれがすごく嬉しい。

学園のアイドルになったマーちゃんが私の前では「いつものマーちゃん」でいてくれる。

私はマーちゃんに深いきずなを感じた。

これこそ「マーちゃん独占状態」で、

何だかみんなに申し訳ないんだけど、

でも、私もそんなに今までと変わることはなくて、

別に役得だとも思わない。

それよりあの4年間のブランクを崩せた感動の方が私にとってはよっぽど大きくて深い。

大好きな幼馴染みとまた変わらずに生活できるのだから……。


そんなある日、マーちゃんが珍しく弱音をいた。

「ごめん、直ちゃん。勉強やりづらくない?」

「マーちゃんこそ……。大変ッ」

「俺ってそんなにイケメン……?」

「フフフ、すごいイケメンだね」

「この顔、父親似らしいんだよね。オフクロに似てないでしょ?」

「そう言えばそうだなあ……」

「オフクロ、嫌だと思うんだよね。別れた亭主がそばに居るみたいでさ」

「澄ちゃんそんなに根に持つタイプじゃないと思うけど?」

「だといいけど……」

私は何だかマーちゃんがいじらしく思えて

「マーちゃん、もっと自分のために生きなよ」

「俺、自分のために生きてるよ。申し訳ないくらいだよ……」

「じゃあ今度は私のために生きれる?」

「なんだそれ?」

「マーちゃんにタバコやめてほしいなあ」

「ッ!。何で知ってんの?」

「澄ちゃんがお母さんに言ってるの聞こえた」

「もーうッ」

「だめ?」

「どうして?。まさか『健康に悪い』とか『長生きしない』とか言うの?」

「ハハ、まさか」

「じゃあ、なに?」

「この間、友達からネットである女優さんの写真見せられてね。その人はアイドルでデビューして、十代から吸ってて、喫煙者だってことも公言しててね。それで30過ぎてからもプカプカ吸ってたんだけど、それが、40になって急に干し柿みたいになっちゃってね」

「干し柿?」

しわくちゃッ。写真見た!」

「ホント?」

「今頃になって吸わなきゃよかったって後悔してるんだって」

「………………………………………………」

「マーちゃん……」

「どうしてそんなこと俺に……?」

「ずっと綺麗なマーちゃんがいいよお……」

「皺くちゃになったら俺のこと嫌い?」

「ハハ、まさか」

「だったら……」

「私のマーちゃん」

「え?」

「私、マーちゃんがみんなに綺麗って言われるのが嬉しい」

「!」

「それが一番嬉しい」

「直ちゃん」

「マーちゃん、ホントに綺麗だよ」

「直ちゃん……」

「綺麗だ。ホントに綺麗だ」

「………………………………………………」

「やめるきっかけがないんでしょ?」

「翔や唯人との付き合いもあるし……」

「じゃあ、追試受かったらやめよう。私との約束ってことにして。『約束しなかったら勉強教えない』って言われたってことにしてさ。私のせいにすればいいんだよ」

「そんな……」

「ね、お願い。ずっと綺麗なマーちゃんでいて」

「……!」

マーちゃんはぼろぼろと涙をこぼす……。

「いいよね?」

「うん……」

このとき、私はマーちゃんへの愛を確信した。

バカだった。

私はマーちゃんを愛していたんだ。

むかし世話になったから勉強を助けてるんじゃない。

愛してるから助けたかったんだ……。

どうして気付かなかったんだろう?。

自分を誤魔化ごまかしている間にずいぶん無駄な時間を過ごしてしまったような気がした。

でも、今、気付けたんだ。

とにかく……。

追試受かろう……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る