午後一の体育で早速絡まれる僕


「あなた、なに様のつもり?」


「……」


 雲林院三兄弟と昼休憩をすごした僕は制服と一緒に購入してもらった体操服を持って女子更衣室へいき、一応、見学だけど着替えをしてめちゃくちゃ大きな体育館に移動。


 待っていた女子監督の女の先生に一応見学で、と言うと連絡来ているから大丈夫、と言われて僕は隅っこに避けて女子が今日やる予定のバレーボールを見学するのに三角座りになったんだけど、急に影がかかって、見上げた次の瞬間、先の台詞を吐かれていた。


 見上げた先にはいかにもお嬢様な見てくれの女子数名。遠くを見るとこの集団に不参加の女子がバレーの支柱を床に立てたり、ネットを張ったりしているのが見えた。


 ああ、スクールカーストのこっちは上位であっちは下位ってことか? うん、とりあえず不公平感が満載だと思うんだけど、現在の状況に僕は首を傾げるしかない。


 いきなり、なに様のつもり? なんて言われても……。そんなこと言われても困るんですけど? むしろ、アンタがなに様だ。お嬢様だろうとたかが学生だろうに。なのに、んな上から目線でもの言われる筋ないんですけど? そりゃ僕、根っこは庶民だけど。


「雪春様だけでなく雪夏様や秋雪様にまで贔屓にされて自惚れているんじゃありませんこと? だいたい、どうやって雲林院家の養子にあなたが選ばれるのです?」


「いや、そんなの訊かれても僕、答なんて持っていないし、答えようがないからさ」


「……「僕」? なんなのですの、その一人称は? まるで男子のように自分を言ってあなた、恥ずかしくないのですか? もしかして、それでご兄弟様方に取り入ったん」


「いや、ないから。取り入るとかじゃないって。そこはわかっているからさ、僕も」


「では、なぜなんですの? あの方々は学校中の憧れであり、品行方正の鏡。文武両道の手本でそれでいて謙虚で慎み深い御方たち。なのに、どうしてあなたみたいな」


「いや。だから知らないし。それこそ本人たちに訊けばいいじゃんかさ。僕に当たっていないで。というか、アンタたちも授業中なんだから授業受ければ? 僕は見学」


「はっ、雲林院家に養子にもらわれたからと見学で高みの見物ですの? ずいぶんと高慢ちきですわね? 調子に乗っているんじゃありませんの? たいがいになさい」


「や。見学なのはちょっと体悪くしているからであって別に高みの見物とかじゃ」


 ああー、鬱陶しい。なぜこの女はひとの発言を歪んで受け取り腐るのでしょうか? 誰か僕に急ぎで教えてください。至急とかじゃなくていいけど、お急ぎ便でお願いします。じゃないといい加減、僕も理不尽な尋問にキレそうだしさ。でも、我慢だ、僕。


 てゆうか、授業準備サボっている時点で雪春辺りは軽蔑しそうなもんだけど。


 気に入られたいなら相応の努力をしたらどうなの? 崇めるだけじゃなくてさ。それだけで選んでもらおうなんてそっちの方がよほど高慢ちきだ。教養があれば、とか運動ができればってのが安直すぎて思慮の浅さが目立つ、この女。てか説教も意味わからん。


 しかも、見学、体が悪くて見学するのを高みの見物とか、アンタ頭大丈夫ですか?


 つか、この女子集団はそうすると兄弟のファンなのか。って、いまさらかな、僕?


 ……って、ちょい待て。品行方正の鏡って約一名違うことないか? 雪夏はどう考えてもどう見ても違うだろ。他ふたりは別にしても。文武両道はそうだけど。あれだ、ぼーっとしているようで雪夏、隙がないのはそうだけど。でも、いいコじゃないと思うな。


 なにしろ女の子の寝込み襲うような変態だもん。根に持つなって? 無理だって。ちょっとトラウマになりかけたもんよ、アレ。目が覚めました。恥ずかしい。で、どこの誰が美味しいって思うのさ。少なくとも僕は思わない。そういう意味で雪夏苦手だ。


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