第8話 帰ってきたミラクル・ワン

「ディア!!」唐突に聞きなれた野太い声が響き渡る。


 ミラクル・レディを押さえつけていた怪獣はその体を蹴りあげられて、後方に転がっていった。


「あっ!ミラクル・ワンだ!!」嵐山が声をあげる。目の前には見慣れた、巨人の姿があったあった。


 ミラクル・ワンは、優しくミラクル・レディに手を差し出すと、彼女の体を引き寄せた。


「もう、お父さんたら若い女の子には優しいんだから……」背後に女性の声。


「母さん!」振り返るとそこには秀幸の母の姿があった。


「ただいま。もう、ニュースを見てたら尼崎に怪獣が出たって言ってたから、慌てて帰ってきたわ。あっ、これお土産」言いながら、母は鮫の歯が付いたネックレスをくれた。いかにもハワイの土産って感じのあれである。「これ、嵐山君もよかったら」嵐山にマカデミアンナッツを渡した。


「母さん、昌子ちゃんが!」秀幸は心配そうに、空を見上げる。


「大丈夫よ、お父さんに任せておきなさい」母はニコリと微笑んだ。


「あああ、ミラクル・ワン来ちゃったよ……」先ほどまで食い入るように戦いを見ていた男達の言葉が、なぜか力を失っていたように感じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る