2021/05/25:ファンタジー金属。―――――――――――――――#創作論

 ファンタジー小説では色々金属が出てくる。その中でもオリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネなんてものが有名だ。しかし特性から考えると、これらは全く同じものだと思っても問題が無い。勿論歴史を調べれば、オリハルコンは真鍮、アダマンタイトはダイヤモンド、ヒヒイロカネは緋い鉄である。

 でもファンタジーで必要とされる特性は「硬い」「折れない」である。そう思うと、魔力伝導性なんて言う特性を付与されるミスリルはファンタジー金属として確立している。


 それならば、新しい金属を自分で設定すればいいじゃないか。これが案外難しい。小説は創作なのだから、欲しい材料は何でも手に入る。では欲しい物は何だろう。


 まず、大量に作れ、軽く、頑丈な金属は作るべきではないことを述べる。こんな金属があると世界の建物が摩天楼になり、内容がSFに向かう。大量に作れるという要件はかなり危険であるので、絶対に外すべきだ。


 軽い金属というのは悪くない。常識の範囲で軽いアルミニウム、その1/100の密度なんていう規格外の金属を考える。もともと木材を利用していたものが、お金持ちの間では超軽量金属に置き換わっていることだろう。現代では、アルミニウムの利用は航空機などの質量がエネルギー効率に影響するものか、手で持つから疲れないようにするだとか、派手な物ではない。人間が空に飛び立つ時代が速まる気はするが、ランプや鎧といった、人が身に付けるものの軽量化が主たる利用方法だろう。


 もう少しファンタジーに寄ろう。魔力で自由自在に変形できる金属はどうだろう。つまり加工難易度が低い訳だ。よくミスリルや魔法銀がこういった特性を持つ。魔法によって硬くも強くもなる金属は武器としても魅力的だ。


 オリハルコンは何物にも折れない剣の材料として使われる。こういう金属もいいだろう。しかしどうやって加工したのかは設定に盛り込んでおくべきだ。ミスリルと同じように「魔法でどうにかした」は問題が生じる。魔法を使えば折れるということになってしまう。生物由来か、超長期的に自然生成されるか、いっそロストテクノロジーにしてしまったほうが良い。「古代では魔力が潤沢にあり、オリハルコンを加工できる技術があった」なんて書いておけば、魔王との最終決戦で勇者の剣が折れてしまうなんて言うストリーを作れる。魔力量がある魔王なら折れてしまうと言う訳だ。


 結局のところ、現状利用されている魔法の金属を自身の考えに基づいて確り設定してやれば問題が生じることはない訳だ。化学特化ファンタジーを書く人が頑張ればいい。


 魔法の媒体として水晶はよく見かけるが、単結晶である必要性は何だろう。ガラス玉ではだめなのか。ガラスなら、魔石と砂を混ぜたものを溶かして固めれば様々な属性の媒体が作れる、という設定にできる。水晶が神聖なものに見えるのは占いなどの慣習に紐づいているだけなので、不要な設定は変えた方が自由だ。


 ストーリーに強く関与する物質を組み込みたい時は、一つの特性に特化したものを1つだけ設定するとよい。「空を飛べる」「魔法が使えない」「透明になる」なんて特性だ。複数の特性を乗せたり、色々な物質があると、世界観に寄与しすぎて他の設定が組みにくくなる。魔法妨害の石を資源に持つ国は戦争に強いが、飛行石を持つ国には勝てず、透明石を持つ国にも勝てない。直接的な戦争では透明石を持つ国は飛行石を持つ国には勝てないが、いつの間にか潜入していた暗殺者に国は堕とされ、そもそも戦争は起きないだろう。


 材料関連は世界観に強く影響するので、慎重に考えたいところだ。私なら導入するなら既存の魔法金属を一つか二ついれるだけに留め、他の設定を詰めたい。


――――――


 人と会う約束がある。一時間ほど話を聞くだけなのだが、何を話すか、どんな人なのか判らないので不安だ。


「失礼のないようになんて言われても、何が失礼か判らないのにどうしろと。」


 真摯に向き合えば大丈夫らしいが、真摯とは何だ。答えの無い事を考える時間は私にとって苦痛だけど、完璧主義な私にとって失敗を回避する手段を捨てることはできない。人間、特性が競合している時が最もつらいのだと思う。いい大学に入りたいが今勉強したくない。物理学は好きだけど数学が苦手。英語は好きだけど単語が覚えられない。


 完璧主義を脱するために、失敗を許容できるようになりたいものだ。今迄の幾つもの失敗は乗り越えたのだから、私にもできる筈。

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