山下の小説が書籍化できないのは〇〇〇〇小説だから

 最初に結論を言います。


 山下の小説が書籍化できないのは『売れない』小説だから


 これは書籍化経験がない、

 山下の根拠0の妄想ですが、


 出版社の内情はきっと、

 こんな感じだと思います。


◆◆◆


「山下君」

「はい。編集長。何でしょうか?」


「次に書籍化する小説はもう決まったか?」


「はい。『無名の頃から応援している人気VTuberが元カノの妹のSSS級大和撫子だった件』を予定しています」


「ふうん? どんな小説だ?」


「タイトルの通りVTuberがヒロインのラブコメです。バズるような勢いこそないものの、着実に評価を伸ばし★500を獲得しています。質が高い小説じゃないとできないことですよ」


「どれどれ……ダメだ。話にならない」

「えっ……」


「典型的な作者の自己満足小説だな。作風もひと昔前のような古さを感じるし、今の読者のニーズに合うとは思えないよ」


「で、でも!」


「しかもこの作者。過去に何の実績もないじゃないか? 固定ファンが多くいるならまだしも、こんな万人受けしない小説、ヒットするところが全く想像できない」


「そ、そんなことないです! 私はこの小説に他の小説とは違う『可能性』を感じます。この小説は絶対にヒットします! 私を信じてください!」


「ほう? つまり君がを持ってその本を売ってくれるってことか? それなら是非お願いしたい。とりあえず1万部だ。ちなみに会社からは決められた予算しか出ないし、超えた場合は君の自腹だ。営業や宣伝も勤務時間外の君個人の時間でやってもらう。いいかね?」


「ええっ!? そ、そんな無茶な!」


「当然じゃないか? 売れないと思う俺の反対を押し切り『君のわがまま』で出版を決めるんだ。それにより増えた仕事と予算は君が請け負うのが筋だろ?」


「そ、それは……」


「山下君、これは仕事だ。君の『根拠のない』直感だけで俺はオッケーを出すわけにはいかない。どうしてもと言うなら止めないが、もし売れなかった時は君に、会社に損害を与えたを取ってもらうことになるが、それでもやるか?」


「うぐ……や、止めておきます……」


◆◆◆


 重要なのでもう一度書きますが

 上記のやり取りは書籍化経験がない

 山下の根拠0の想像です。


 それに分かりやすくするために

 露骨な表現を使いましたが

 実際にありそうだと思いませんか?


 皆さん勘違いしがちですが、


 出版社はあくまで利益を追求する

「営利企業」であり、


 日本の文学の価値を保護する

「公益法人」ではありません。


 言い換えると出版社の仕事は


「面白い本を作ること」ではなく

「売れる本を作ること」であり、


 面白いけど売れない本を作り続けると

 出版社は倒産してしまい、

 多くの人が路頭に迷ってしまいます。


 それを防ぐために出版社はおそらく

 過去に出版した本の売り上げデータや


 小説投稿サイトのランキングなどから

 流行りや読者の需要を読み取り、


「ヒットする可能性が高い小説」

 を予想しそれに近い小説を探して

 書籍化の打診をしていると思われます


 つまり書籍化する小説の多くが

 テンプレや大人気小説の二番煎じなのは


 おそらくコスパが良く

 リスクが少ない経営をするためで


 先程の話のようにデータによると

 売れるはずの小説が売れなかった時は


「何でだろう? おかしいなあ」

 で済ませることができますが、


 流行りから外れるなど万人受けしない

 売れない可能性が高い小説を強引に

 出版した結果売れなかった時は、


「だから言っただろ! どうするんだ!

 お前のせいで出版費用である

 の損害が出たじゃないか!」

 とを追及されてしまう。


 だから『無名の頃から応援している人気VTuberが元カノの妹のSSS級大和撫子だった件』のように、


 高評価や編集者は良いと思う小説でも

「売れない」と判断された小説は、


「書籍化できない」のだろうと

 私は予想しています。


 要はもしあなたが編集者で

 編集長や上の偉い人から


「売れる小説を探してこい!」

「失敗したら次はないぞ!」

 とプレッシャーをかけられた時に


 自分が今まで何年もの努力を積み上げ

 ようやく手に入れた立場や給料を

 失ってしまう危険を冒してまで


 何の実績もなく万人受けもしない

 山下の小説を推薦しませんよね?


 仮に自分は微妙だと思っていても

 週間ランキング1位の勢いがある小説


 または新人賞受賞などの実績があり

 多くのファンがいる作者の小説など


「売れる根拠がある」

 無難な小説を選ぶよねという話です


 つまり少し前に書いた


 書きたい小説で人気作になるには

「読者にメッセージを伝えること」と


「読者を喜ばせること」が両立する

 小説を書く必要がありますが、


 書籍化になるとこれらに加えて

 編集者が売れそうだと思う、


「出版社を喜ばせること」も成立する

 絶妙なバランスの小説を

 書かないといけないということです


 正直、無計画で書けるものじゃない。


 山下もこの「出版社を喜ばせること」

 に対する意識が足りなかったために、

 書籍化できなかったと思っています


 そして2つの円よりも3つの円の方が

 重なる範囲が圧倒的に小さいように


 この3つの条件を全て満たした小説は

 ほんの少ししかないため、


 多少質が悪い小説でも編集者が

 作者に改稿の指示を出し、


 書籍化レベルまで引き上げて

 出版までこぎつける。

 

 そこまでしないと成り立たない

 のが現状だと私は想像しています


 つまり小説の質の悪さは

 後からいくらでも改善できるけど


 作者の人気や作品の話題性は

 出版社でもどうにもできないから

 こっちを優先するよねということです


 そもそもあなたは不思議だと

 思ったことはありませんか?


 画家や音楽家、彫刻家などの、

 他の芸術家は幼い頃から血の滲む

 努力を続けてようやくなれるのに


 小説家だけは初心者の趣味の延長でも

 なれる可能性があるのですから


 その答えはプロだけではなく

「一般人も」審査員を務めるという


 他の芸術にはない複雑で特殊な

 事情と背景があるからだと思います


 そして去年の1月に私目線ですが

 先程言ったことを象徴するような

 出来事がカクヨムで起こりました。


 次話はそのことについて

 書いていきたいと思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る