第31話 シャラは娘と手をつなげて感涙にむせました

クローディアはいくつになっても可愛かった。


昔はこんな小さかったのにお乳を飲む姿がとても可愛くてシャラはその姿を見てしばし悶絶していた。大きくなったクローディアはシャラの中では小さいままだった。


なまクローディアがいる。


遠くからそっと覗いて溜息をついた。アイドルを遠くから見るファンそのものだった。



「何してるんですか姉御」

その不審な動きを近くでたまたま見つけたステバンが咎めた。


「シィィィ」

シャラは静かにしろと捨て版に合図をする。


「えっ、どうしたんですか」

全く気が利かないステバンが大声で尋ねてきた。まあ、ノルディン族に細やかな気遣いを期待する方が酷だったが。


「静かにしろっていっているだろ」

思いっきりシャラはステバンをどついていた。


「誰かいるんですか」

リハビリのために散策していたクローディアがこちらに気付いた。


「何で隠れているんですか。姉御」

ステバンは全く隠れている意味がわからなくて戸惑う。


「ステバンさん」

クローデイアがステバンを見つけてこちらに歩いてきた。


「あ、あなたは」

目ざとくクローディアはその横に隠れていたシャラを見つけた。


「確か、シャラさんですよね。ジャルカ様に教えていただきました。私を助けていただいたって。でも何でお母さんと同じ名前なんだろうって思っていて」

「お、お母さん!」

シャラは真っ赤になって固まった。娘に初めてお母さんって呼ばれた。

「どうかされました。シャラさん」

赤くなって固まっているシャラを見てクローディアは驚いた。

「さあ、便秘かなんかじゃないですかね」

デリカシーの欠片もないステバンの様子にシャラは現実に戻った。

クローディアに見えないように思いっきりステバンのすねを蹴飛ばす。


「ギャアアア」

悲鳴を上げてステバンは飛上った。


「どうしたんですか。ステバンさん」

クローディアが驚いて聞いた。

「さあ、蜂かなんかに刺されたんじゃないか」

白々しくシャラが答える。


「それと私の名前はシャラ、シャラザールだ」

「シャラザールさんですか」

「そう、何故かみんなシャラと呼ぶんだが」


「え、いつからしゃらざーるなんて名前に・・・・・」

また思いっきりスネを蹴られてステバンは悶絶する。


「ステバンさん大丈夫ですか」

「まあ、こいつはいつもそうだ。何しろノルディン族だからな」

「そうですか。お母さんが侵略してきたノルディン族から命をかけて助けてくれたって聞いていたので、ノルディン族の中にもこんなに優しい人がいるなんて思ってもいませんでした」

クローディアが笑って言った。


「そうだな。あの時はじっくりと考える余裕がなかったから」

「あの時?」

「いや、何でも無い。それよりもそんなに歩いて良いのか。無理する必要はないんだぞ」

「大丈夫です。シャラザールさん。それより遅くなってしまいましたけど、助けて頂いてありがとうございました」

クローディアは頭を下げた。


「いや、当然のことをしたまでだ」

シャラは毅然としていった。心の中は娘の事を思って荒れ狂っていたが。


「助けて頂いた時、私、お母さんに、助けられたって思ってしまって」

「お母さん………」

シャラはまた固まった。


「あっ、御免なさい。シャラザールさんはお若いですよね。母なんて生きていたら40くらいのはずですから」

「何言っているんですか。クローデイアさん。姉御は実のははギャーーーーーー」

再度むこうずねを思いっきり蹴られてステバンは悶絶した。


「ステバンさん。大丈夫ですか」

心配してクローデイアが聞いた。


「何。こいつは大丈夫だ。頑丈だけが取り柄だからな」

「そうですか」

「それよりもクローディア、そろそろ部屋に戻ったほうが良い。病み上がりにはあまり長く外にいるのはよくない」

シャラは早くクローディアを帰そうとした。


「じゃあ、シャラザールさんが、部屋まで送って下さい」

言うとクローディアはシャラザールの手を取った。


「えっ」

真っ赤になってシャラザールは固まった。


「あっ、御免なさい。嫌だったですか」

クローディアが思わず手を引っ込めようとした。

「いや、そんなことはないぞ」

シャラはしっかりとクローディアの手を握り返した。


娘の手を握れてシャラは感激した。


ここまで帰ってきて良かった。


しみじみとシャラは思った。


その瞳からは思わず涙が漏れ出していた。


「えっシャラザールさん、大丈夫ですか」

「ごめん、目にゴミが入ってしまって」


二人は寄り添って部屋に向かって歩いていった。


その二人の間を生暖かい風が吹き抜けていった。


シャラザール紀元前。後に世界帝国を樹立するシャラザールの若かりし時の伝説の一コマであった。

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皆さんここまで読んで頂いてありがとうございました。

これにて取り敢えず完結です。

脅威の戦神シャラザールの若かりし時のお話いかがだったでしょうか。

最後なのでぜひとも評価願います。たとえ☆一つでも結構ですので頂けたら幸いです。

続編はまた気が向いたら書いていきます。

少しお休みして次はまた、

「皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!」

https://kakuyomu.jp/works/16816452220097979922

の続き書いていく予定です。

この話の千年後、神となって子孫クリスに憑依したシャラザールが最終キャラとして出てきます。

次はクリスとオウの間が大きく進展する予定です。

1ヶ月後くらいに書き始める予定です。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

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