第32話 閑話 ジャルカの憂鬱
ジャルカは憂鬱だった。
天界の付き合いが面倒なので地界に降りて来たというのに、シャラが地獄より脱獄して以来、閻魔からの使いは来るわ、今日は目の前に天界の警察長官である雲の上のオオクニヌシまでやって来たのだ。
「これはこれはオオクニヌシ様。私のようなしがいない下っ端の神に何のご用ですかな」
さっさと帰ってほしいと思いながらジャルカは聞いた。
「これはこれは天界の大賢者と言われたあなた様がこのような所にいらっしゃったとは」
ジャルカの嫌味に嫌味で答えるオオクニヌシもなかなかのものだ。
「嫌味は宜しいのでご用件は何ですかな?」
「実はシャラの事なのだが」
「シャラがどうか致しましたか」
「いやいや、決して地獄へ送り返せと申すのではありませんぞ」
警戒するジャルカにオオクニヌシは笑って言った。
「そうなのですか。閻魔様からは悪魔のように督促が来るのですが」
「まあ彼としてもメンツがあるのでしょう」
オオクニヌシは笑って言った。
「もっとも連れ帰ってもまた脱走されでもしたら、それこそ閻魔殿の首も飛びかねませんからな。ここは天界としても慎重にして頂けたら幸いなのですが」
オオクニヌシは迂遠な事を言い出した。
「私としては地獄に連れ帰ろうが無かろうが別に構いませんが。私に迷惑がかからないなら」
ジャルカの言葉にオオクニヌシは少し苦笑いをした。
「今回の件はもとはと言えばゼウス様がシャラに約束されたことが全ての始まりで、天界としてもシャラには何も言えないのですよ」
オオクニヌシも困っているのだ。
「で、そのオオクニヌシ様のご要望は何なのですか」
なかなか本題を切り出さないオオクニヌシにジャルカが切り込んだ。
「いやあさすが大賢者ジャルカ様、察して頂けますか?」
「察するも何もまだ何も聞いておりませんが」
オオクニヌシの言葉にジャルカは警戒感を露わにする。
「いやあ、聞かなくとも既に察していらっしゃると思いますが、大賢者ジャルカ様は大変恩義に厚い方だと存じております。ダレル王国の時も今迄見捨てずにフォローしておられたとか」
「最後は見捨てましたが」
「それは止む終えない事でしょう。いや大したことではないのです。シャラが道を踏み外さないように見守って頂けたら幸いだと思ったまでです」
オオクニヌシが爆弾発言をした。要するに地獄からの使いを適当に蹴散らしつつ、シャラのお目付け役をしろということだった。
「何故そのような事をせねばならないのですか」
「だってシャラはあなたの弟子ではないですか」
「それはそうですが」
「どのみちあなたの性格上見捨てられはしないでしょうな。すいません。そもそもこのお願いは余計なお願いでしたな」
オオクニヌシは笑って言った。
ジャルカはブスッとした。
「まあ天界のお墨付きと思って頂ければ幸いですよ。天界への逆侵攻などという事でもない限りは天界は関与は致しませんから」
オオクニヌシのあざとい笑いを見てジャルカは頭を抱えたくなった。
ダレル王国の300年のフォローからやっと開放されホッとしたジャルカだったが、ここにまたしても仕事が与えられたのだった。そして、その仕事が千年以上続くことになるとはジャルカは想像だにしていなかった・・・・
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シリーズの3話全てに登場する神のジャルカの話です。
閑話追加しました。
「皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054917566155
今週の土曜日より次期話に入ります。
クリスの恋愛編ですが、前に振ったエドも登場します。
乞うご期待
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