八月二十二日
「ただいま」
一人で帰る家に、返事は無い。異国で暮らす僕に、日本語の挨拶も、大好きな家族の声も遠い存在となっている。
だから、僕は八月三十日まで待ちきれない。
でも、大丈夫、もうすぐ、ただいまの声が聞こえる生活に戻れるさ。
「今日もパパは頑張ったよ」
玄関の家族写真に話しかけながら、僕は靴を脱ぎ、手を洗いに行く。
そういえば、昨日、僕は懐かしい事を思い出した。大学生の頃、僕の妻に会った日のことを。
空を飛ぶ妻が、地面に着地したところに突撃した時は、僕にびっくりして逃げたんだったっけ。でも、その後、同じ大学の図書室で出会うことが出来た。僕はそれが嬉しかった。また会えて、良かったと安堵したのを覚えている。
妻はなにか勘違いをして、最初は僕をかなり警戒していたが、何度か会って、ふたりで過ごしているうちに、明るく笑う、素敵な彼女が増えていった。
それから、今まで、何年も。僕たちはずっと、一緒に生きている。海にも出会えて、僕はとても幸せだ。
いつも、家族の事を想って暮らしている。
離れていても、ずっと。
一緒に生きている。
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