八月十日
「今日も良い天気!」
「晴れの国だからねえ」
晴れの国と言われているこの地域に、雨の日は少ない。今日もどこまでも続く青い空をふたりで箒に跨って、旅をしている。
「ママ、運転頑張ってね!」
「はーーい。安全運転でいきますよお」
今日はこの村の近くの展望台に向かっている。空高く飛ぶ私たちからは、だんだんと、瀬戸内海が輝いているのが見えてきた。キラキラと光る海の近くに、景色が良く見える展望台があるのだ。
夏の軟らかく強い風に乗りながら、やがて、瀬戸内海は広く大きく姿を現した。私は展望台を発見すると、ゆっくりと降下し着地する。
「綺麗な景色ねえ!ふう、やっと着いたよ?あれ、海?」
着いた瞬間、海がいたのを感じたのは確かだ。でも、景色に見とれて数秒、好奇心旺盛な我が息子は消えていた。
「またかーーやられた……」
またやられてしまった。私の隙を見計らって、いつも海は冒険へ出てしまう。自分の興味のある世界を歩きたくて、ひとりでどこかへ旅に出てしまうのだ。酷い時は、半日見つからなかったこともある。
困った。
きっと、まだ、近くにいるのだろうが、大人よりも案外子供の方が、足は速かったりする。スマホを持っている年齢でもないし、すぐに見つけられない可能性も大いにありだ。
はあ、せっかく着いたというのに。
仕方ないので、私は息子探しをすることにした。
とりあえず、空高く飛べば見つかりやすいかもしれないと、上空から海を探した。今日は黄色いTシャツを着せているから、目立つと思う。こういう時の為に、蛍光色や派手な服を着せるようにしているのは、息子には内緒である。
しかし、探して二時間。見つからない。正直、お腹も空いてきたし、私は怒りでプンプンだ。
ため息を吐きながら、最初に着地した地点に戻ると、見覚えのある姿がいた。
「あああああ!う、みいいいいいい!」
「あ!ママ!」
「ママはとても、怒っていますけど!」
ケロっとした顔の海からは反省の、はの字も感じられない。むしろ、楽しく冒険出来てご満悦な感じである。私は二度とされまいと思い、どうガツンと怒ろうか考えていると、海が言った。
「おじいちゃんに会ったんだよ!」
「え?」
「ママに、よろしくねだって!」
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