第13話 結局はこうなる

 自然で形成された緑の絨毯を踏みしめながら、装備とアイテムを整えた自分のステータスを見直す。いつバトルやイベントが起きてもいいようにしたつもりだ。

 隣を歩くヴェルトラムが言った通りなら、次があるかどうかは怪しくなっている。慎重かつ確実な体制を整えておきたい。




〇藤栄要(ふじえかなめ) Lv:1(PC)

Category(種族):人間(ヒューマン)

Class(職業):未来の大英雄

Condition(状態):正常


——ステータス——

HP(体力):50

EP(気力):35

AT(物理攻撃):45

DF(物理防御):53

MAT(魔法攻撃):20

MDF(魔法防御):22

AGI(敏捷):33

TEC(技量):15

INT(知性):15

LUC(幸運):2


——装備——

頭:旅人の帽子

右手:旅人の大剣

左手:——

胴:旅人の服

足:旅人の靴

装飾1:英雄の指輪

装飾2:赤銅の外套

セットアップボーナス 【旅人装備AGI+10】


——セットアイテム——

体力ポーション×10

気力ポーション×10

火召石(小)×3

火召石(中)×1




 スキルでの補正や装備をしたステータスをみて……物理型とわかる。まあ、今はこの方が有難い。敵と出会えば、とにかく肉弾戦をするしかない状況。そんな状態でMAT(魔法攻撃)が高くても仕方ないからだ。

 いや、装備の中では魔力で殴れる武器もあるかもしれないが……とにかく今は物理で戦うしかない。今はとりあえず物理攻撃が肝心になる。

 それが効きにくい相手のため、アイテムに火召石——投げて使うと火属性ダメージ——をセットしておいた。


 ……てか、LUC(幸運)が装備の上昇すら受け付けないんだけど。ナニコレ? たしか、装飾品の『英雄の指輪』は全ステータスが微上昇だったはずなんだけどな。

 ホントさぁ……嫌なところを的確に再現するのやめろ。



「へぇ……なかなか似合っているじゃないか。馬子にも衣裳だね?」

 本当に口の減らない……メスガキことヴェルトラム、そう言えば彼女もゴスロリ衣装から着替えている。

 紺と白を基調とした……修道女のような衣服を纏っていた。

 またそれが嫌味が失せるほどに似合っており、まさに『天使が神の教えを広めるために降臨された』と言われても信じられるくらいだ。


「うるせ。そんなことよりお前は? 準備は出来てるのか?」

 わかりきっている。だがあえて質問をしておいた。確認という意味もあるし……彼女の性格からして、乗せておいて『見て』おきたいという意味もある。


「愚問だね。私のステータスを見てみるがいいよ!」

 ふふん、と胸を張る彼女。頭がふらつくほどに予想通りの反応だな。


 基本的には他者のステータスを勝手に閲覧するなど不可能らしい。だが自分には『天眼』のスキルがある。魔術や特技でもないため、消費も勘付かれるリスクもないままに、他者のステータス閲覧を可能とするスキルだ。

 ちなみに自分がただの兎……の皮を被った——ドラゴン並のステータスらしい——魔物に、一撃で葬られた後に貰ったスキルである。




〇ヴェルトラム Lv:1(PC)

Category(種族):妖精(フェアリー)

Class(職業):幼き妖精姫

Condition(状態):正常


——ステータス——

HP(体力):15

EP(気力):65

AT(物理攻撃):12

DF(物理防御):20

MAT(魔法攻撃):55

MDF(魔法防御):38

AGI(敏捷):25

TEC(技量):10

INT(知性):33

LUC(幸運):MAX


——装備——

頭:妖精のヴェール

右手:妖精の魔杖

左手:——

胴:妖精の礼服

足:妖精の靴

装飾1:妖精姫のリボン

装飾2:緑の腕輪

セットアップボーナス 【妖精装備EP+20】


——セットアイテム——

体力ポーション×10

気力ポーション×10

万能薬×5

精神安定剤×5




 うーん、明らかに術師タイプだ。

 自分が前線に立って、ヴェルトラムが後方から援護支援が王道だろう。しかし自分に最前線など務まるだろうか?

 いや、その前に何そのLUC(幸運)! 俺にちょっと分けろ!






「そうこうしているうちに見えてきたね。しかし……城門が完全に閉じてしまっているのは、どういうことだろう?」

「ん? 本当は開いているはずなのか?」

「今は昼間だからね。夜間ならともかく、昼間は大抵解放されているはずなんだけど……」


 すっげぇ嫌な予感……

 その予感に応えるかのように、何か地響きのような音が微かに届いてきた。









 スキル:天性の直感

 送られた直後、何をする間もなくゲームオーバーになって送り返された時に貰ったスキルだ。帰ってくる前に視界がぐるぐると回転し、地面に傾いたまま固定されたことから不意打ちを貰った、と当たりを付けられた。

 しかも状況から判断して首刎ね(即死判定)だったろうと。



「反則だろ! スタート直後に首狩り? どこに転送されたかすらわからなかったんですけど!?」


「ぷふーっ! そりゃ、感知する前に何かされちゃ……くふふっ、どんなスキルも意味ないよね!」


「何を笑ってんだ!! ふざけてんのか!!」


「くっくっく……いや、すまなかったよ。ほら、今度はちゃんと先制で感知出来るスキルをあげるからさ」



 奇襲へのカウンターや敵の出現、漠然とした危険を感知出来る。というスキルなのだが……それの反応が“これ”なんだろうな。









 その反応を辿り、草原の向こうに目を向けると土煙のようなものが確認できた。よく見るとそれは、大勢の何かが迫ってきているとわかる。


 ……なんだ? 人の軍勢? いや、それにしては影の一つ一つがやたら小さい。


 さらに近づいて来ると、その影は人ではないとわかった。人間ではないと主張する緑の肌、服装も帽子に半ズボンの者がほとんど。


「あれ、ゴブリンってやつじゃないか?」


 ゲーマーの皆様なら、即座にピンッと来るだろう。

 ご存知ファンタジーにおける最弱の敵筆頭、小柄で非力な小鬼ゴブリン。だが醜悪さとずる賢さで決して油断できない敵だ。それが群れを成してこちらに迫ってきている。しかもどうみても正気の表情じゃない。

 どいつもこいつも目を血走らせて、涎を垂らしながら猛然と進撃している。



「ああ、これはマズイ。『スタンピード』だね」



 結局ヤバい状況になってんじゃねーか!

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