第35話 太腿は尊い

 庭にいるはずのラウネの姿はなく、ラウネと同じ水色の髪をした全裸の少女を発見するレティシア。

 

 「なぜ少女が全裸で庭で二話羽生にわにわに。ワニワニパニッ……」

 現実逃避をする事で混乱を誤魔化そうとする。


 「あ、うん。わかってるよ。どう見てもあの全裸少女、ラウネだよね。」


 独り言を言いながら近寄ると、その少女がラウネであることを実感する。

 微かに見える横顔、アルラウネの頃から何度も見ている上半身プラスアルファ。


 「風邪引いたら大変……って連れ出しても大丈夫かな。」


 なんでだろうなと疑問に思ったので、悪いとは思いながらもレティシアは鑑定を使う。

 その結果わかった事といえば、種族がアルラウンになっている事。

 レティシアの加護、世界樹の加護が付与されていた。

 そしてどうやら、触手とかは使えるようだ。

 


 もしかして……オークの精液掛かってないよな?と邪推してしまう。

 いやいや絞首刑プレイとかしていた個体はいないはずと首を振る。


 ラウネの横にしゃがむと、薬草の敷布団はふぁさっとやらわかく、ラウネの下から手を通したレティシアはその気持ち良さに温もりを感じていた。


 「とりあえずは運び出しますかね。」

 レティシアはラウネの身体の下に手を通すと、身体を抱き上げる。

 お姫様抱っこされたラウネが目覚める気配はない。


 寝る前に見たラウネの表情とは違い、少し寂しそうに見えていた。

 レティシアにはその真意はわからないが、ここにいる事で少しでも和らげれば良いなと思っていた。



 「お嬢様、ついに幼女を誘拐なされたのですか?」

 階段を下りてきたメイに発見されたレティシアは、あらぬ疑いを掛けられる。


 「人聞きの悪い事言わないでちょうだいな。どう見てもラウネでしょう。」


 「……神になってますやん。お嬢様の加護に世界樹の加護って……」

 一瞬の隙にメイは鑑定を使っており、レティシアと同じものを見ていた。


 「メイ……言葉がおかしくなってるよ。」



 メイと一緒にレティシアは自分の部屋に連れて行くと、ベッドに寝かせると箪笥から取り出した自分の下着を穿かせた。

 もちろん洗濯済のものである。

 下半身に植物の一部がないので、どうしても見た目的によろしくないと感じていた。

 


 それからしばらく寝顔を見ていると、少し歳の離れた妹でも眺めている感覚に陥る。

 端から見ていたメイには姉妹のように見えていた。


 

 「んっんんん~~ふぁぁあ。」

 うっすらとラウネの目が開き、我慢出来ずに欠伸する。



 「おはよう、ラウネ。」

 突然の言葉に戸惑うラウネであったが、寝る前に見た優しいシアお姉ちゃんだと認識すると安心したように身体を起こした。


 「お、おはよう?お姉ちゃん……え?な、なにこれぇっぇぇっぇぇ。」

 ラウネは自分の下半身を見て驚き絶叫をあげた。

 寝る時まではあった花と蔦や蔓がなくなり、人間と同じ足が指の先まで生えている。

 驚くなと言うのが無理な話である。


 「ラウネの太腿、綺麗だね。はぁぁぁ、すべすべしていて気持ちいい〜。」

 さわさわとラウネの太腿を触れていくレティシア。

 太くなく、細くなく、健康的な魅力的な足をしていた。


 「ゃんっ、お姉ちゃん。ざわざわして……すぷらっしゅしちゃうよぉ。」


 流石にそれは色々まずいと思いレティシアは触れるのを自粛する。


 「今朝起きたら庭で人間の姿になってるラウネを見かけたの。流石にそのままはよろしくないと思って部屋に運んだのよ。」

 それと人間の姿をしているので、全裸はよくないので自分の下着を身に付けさせたと伝えた。


 「はわわわわ。こ、これお姉ちゃんの……」

 ラウネの頬はみるみるうちに赤く染まっていく。メイ案件になりそうなのでそれ以上は掘り下げないよう、レティシアは別の話題を切り出す。


 「進化?神化?してるよ。ラウネの種族がアルラウンになっててね。多分私が庭に撒いた水……推定聖女の聖水を浴びたのと、苗木とはいえユグドラシルの傍にいたからじゃないかなとは思うけどね。」


 ラウネはベッドに座り、足をぷらんぷらんと交互に前後に振っていた。

 ラウネの人間としての身長は140cm程。

 地面に足の付かないその様子はレティシアには眩しく、尊く感じていた。

 


 とりあえず顔を洗ってリビングに行こうとレティシアはラウネを誘う。

 ラウネに着せたワンピースは丈が長く、それ一枚で膝上までを覆っていた。


 ラウネの小さな手を取り、レティシアはリビングに連れて行く。



 「と、言うわけで新生ラウネをよろしくね。」

 全員の前で一晩で進化したラウネを紹介する。


 新たに増えたエロフとオーク達も一通り挨拶を済ます。

 ガレフの横には例の一番小さなエロフの少女、ミーシャが寄り添っていた。


 「オークの8人には基本的には街道をエルフ領まで、具体的には結界の手前まで建設して貰います。」


 「お任せください。その任務、真命を賭して。」


 「エルフ9人の内2人はオークについて、開拓の手伝いを。森林を間引く際にはエルフの力を当てにしているからね。」

 ついでに採取もお願いする。

 とても便利な魔法のバッグをエルフに持たせる。

 これは、中に入れると中で種類毎に自動的にわけられ保管される仕組みになっている。


 商品開発の合間に作ったものなので、こういう時に使わないでいつ使うの?と。


 「ついて行くエルフのローテーションはエルフに任せるわ。」


 残りの7人は4人が住居側……屋敷の維持管理を任せる。

 最初はメイに指導してもらい、仕事を覚えて貰う。


 残りの3人は工房で店員として働いて貰う。

 ローテーションを組む事でいろいろ覚えて貰えれば、それだけやれる事が増える。

 先日から働き始めたラッテ達冒険者組も交え、それなりにゆとりを持った人員配置が出来る。

 たまに採取に出掛ける事もやりやすくなる……と、レティシアは思っていた。


 レティシアがエルフとオークに役割りを分担している間に、人間スタイルのラウネをみんなが可愛がっていた。





 そして数日したある日、懐かしい人物が店を尋ねてくる。


 「たのもー。」

 橙色の髪の少女が6人の少女を連れて来訪していた。

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