04
やばい。これはドストライクだ。
……じゃ、じゃなくて。
「美女!? なにこれ」
美女はロリータ姿の賢者をまじまじと眺めている。
「服変更は初めてやったけど案外うまく行くもんだね。しかし実際見て見ると確かにこれは……」
「初めてって何……? ていうかそのビーム一体どれだけ万能なの」
美女のビームと言ったら壊れたものを直したり破壊したりできるのは知ってたけど。こんなことまでできるとは聞いてないよ。い、いや知ってても何もしなかったけど。
賢者は驚いた表情で自分の着ている服を眺めている。
「ど、どういう原理でこんな一瞬で服を……」
そっちかい。
だとは思ったけどちょっとは今自分が女装してることの方に突っ込んでほしかった。見た目は完璧なんだけどここだけが惜しいよ。あれ私何言ってんだ違うだろ。
「美女、一応言うけどこれ町中でやっちゃ駄目だよ?」
「知ってるよ!? だから魔女ちゃん私のことなんだと思ってるの!?」
「へ…………人外」
「今絶対変態って言おうとしたよね。充分お互い様だからね?」
人外は否定しなくなったらしい。まあこんなビーム放った後に隠しても無駄だけど。
「じゃ、飽きるまで眺めたし戻るとしますか。魔女ちゃんどうする?」
「あ、私も戻る」
確かに変態はお互い様……いやでも美女は変態と言ってもアクティブな変態だから余計に危険だと思う。いつ何時何されるか分かったものでは無い。
そういえばつい女子部屋に戻ってきちゃったけど、賢者の服ってあのままでいいのかな。あの様子だと明日何気ない顔であの服着てくるんじゃ……。
「夢か…………しかしなんという夢を見てるんだ、私」
間違いない。私も危ない方の変態だ。
昨夜は結局寝るまで頭の中がロリワンピの賢者でいっぱいだった。無理だよだってあんなかわいいのを見せられて夢に見るなとか。そんな修行済みの精神、私にはない。
そういえば今日は龍退治に行く日だっけ。今になって不安になってきた。
「魔女ちゃん惜しかったね、賢者君ならさっき猫に言われて着替えちゃったよ」
美女はもう起きてパンを食べていた。
「きっ……期待してないよ、それより今日は龍退治に行くんだっけ」
「龍?……あ! 思い出した昨日約束したっけ。魔女ちゃんナイスっ!」
覚えてなかったのか。まあ私も思い出したのはついさっきだったけど。
下に降りると普通に町人服を着た賢者となんか痺れてる猫がいた。
うん、期待なんてしてなかった。ところで猫は何があったんだろう。
「おはようございます。あれ、魔女さんどうしたんですか? 顔が赤いです」
「え。や、た、多分気のせいじゃないかな」
無理だあんな夢見た後にまともに接するとか。てか何で賢者はこんなにいつも通りなの。この子本当に実験以外頭にないのかもしれない。
「さっ、今日は楽しいハイキング!」
あと美女は完全に山登りがメインになってる。
本当にこんな状態で行って大丈夫なのだろうか。不安が倍になった。
のどかな感じの山……に見えた。遠目から見れば。
実際来てみるとまるでその正反対。地面の裂け目にはマグマが流れ、空中では火の粉が舞っている。歩くたびに足が焼けそうな温度だ。
火山って普通こういうことじゃないよね。想像してたのと何かが違う。
「氷魔法……」
「魔女さん、先ほどからずっと氷魔法使ってますが魔力の残量は大丈夫ですか?」
「残量……大丈夫、ていうか私より美女の方が心配だよ」
あまりにも熱いものだから私と賢者はさっきから氷魔法でどうにか持ちこたえている状態だ。猫に至っては氷の中にいる。羨ましいけどあれを人間がやったら多分凍死するから無理だ。
「二人とも大丈夫? 別の意味で顔赤くなってるよ?」
美女はこの熱さの中でも全く変化が見られない。
何で美女はあんなに元気なんだろう。このセリフ前にも行ったことがある気がするよ。氷魔法も使ってないのに逆に心配になるくらい元気そうだ。彼女は本当に何者なんだろう、あんなビームも使えるし神的な領域の存在なんじゃないかと疑ってしまう。でも神様が酒乱で変態はなんかやだな。
「あ、猫の氷溶けかけてますね。氷魔法かけ直します」
猫を凍らせたのは賢者なのだけど、あの大きさの氷を一瞬で出した時にはかなり驚いた。昨日の少女と言い最近の若い人は妙に天才が多いように思える。
「賢者、それって凍らせて本当に大丈夫なの?」
「あまり確証は無いですが魔物なので大丈夫かと」
え、ちょっと待ってそんな適当だったの? 私はてっきり魔物は凍らせても大丈夫という学説とか実験結果がある上でやってるものだと……。猫大丈夫かな。
「私も氷魔法」
やっぱり美女もとうとう熱いと感じ始めて……
いや、今の声は美女じゃなかった。でも聞き覚えがある。
昨日の異様に強い少女だ。
「あれ……昨日の人? どうしてこんな山に?」
少女は首を傾げつつ細い声で呟いた。彼女はこの熱さの中でもフードを被っている。
この子こそ何でこんな熱い場所まで来たのだろう。その様子からして氷魔法は使えないみたいだから、フードを被った状態でここまで来るのはかなりきつかったはず。何かの訓練か修行だろうか。まさかこれが強さの秘訣……?
「魔女ちゃんこの子知ってるの?」
本物の美女の声。そうだ、二人はこの子のこと知らなかった。
「あ、えっと……昨日ちょっと助けられてね」
誘拐されかけたことを堂々とここで言うのは何か
「誘拐されそうになってた。そこを助けただけの関係」
少女に全貌を言われてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます