第30話 女にも性欲があるんだよ。

 8月上旬。お盆の長期休暇前で社内も慌ただしい。

 決算終了後の10月人事異動に向けて、8月下旬頃に各部長から職員への面談がある。人事異動の希望や、職場環境や仕事内容の事などを、それぞれ一対一で話を聞いてくれる。

 ナオさんは両家顔合わせの後、お盆前に「タイミングを見て私から部長へ伝える。面談の前の方がユウジ君も良いでしょ」と言っていたが、どうやら今日がその日のようだ。ナオさんが朝一番のメールチェックを終わらせた後、日野部長に声をかけ応接室へ入って行った。ガラス張りで執務室から部屋の中が見えるのだが、部長が急にブラインドを閉めて、入口から「大阪、ちょっと来い」と大声で総務部長を応接室へ呼んだものだから、職員一同「何事だ?」となった。引き抜き、独立、結婚、中には「授かり婚」まで色々な説が流れたが、もちろん普通の結婚が正解である。

 後で聞いた話だが、ナオさんは相手が誰かを言わずに結婚することを伝え、結婚式や新婚旅行の特別休暇、将来的な話だが産休と育休の完全取得、業務量の配慮、つまり長時間残量や長期出張を減らすということを求めたようだ。そして、「もし、会社に私の要求を受け入れてもらえないなら辞める」と付け加えたらしい。企画設計部のエース『プレゼン女王』が退社をちらつかせながら要求を突き付けてきたので、日野部長はたまらず大阪総務部長を呼んだというわけだ。ナオさんは、仮に要求を拒否された場合、本当に辞める気だったらしい。会社にはいちいち報告していないが「うちに来ないか」と引き抜きの声が複数かかっていたらしく、転職しても問題ないというのが根底にあったようだ。

 結果的には、「全て要求を呑む」が会社の回答で、応接室を出て歩きながら

 「そう言えば、結婚相手は誰なんだ?同業じゃないよな。」と日野部長

 「同業ですが、競合他社ではありませんのでご安心を。」と笑顔のナオさん

 「どこの誰だよ。…まさか、うちの中か?」

 「はい。刈谷です。」

 「なに~、お前らそういう関係だったのか。いつからだよ。」

 「年明けくらいからお付き合いしてまして。報告が遅くなり申し訳ありません。」ナオさんは口では謝っているが、勝ち誇った笑顔である。

 これで俺とナオさんの関係と結婚が社内で公となった。俺達は我が社初の社内結婚であり、ナオさんに『我が社初』の称号がもう一つ増えた。周りの最初の反応は驚き一色であったが、一部を除いて皆さんから祝福された。ちなみにその一部とは、ナオさんに振られた総務部の某チーフと、俺に好意を寄せてくれていた栩木さんだ。


 祝福の声として、特に鈴木先輩は大喜びだった。

 「なんだか半田さんが年明け頃から雰囲気変わったなぁって思ってたら、こう言うことだったのね。」

 「内緒にしていてスイマセン。」とナオさんはお世話になってきた鈴木先輩に申し訳なさそうだ。鈴木先輩にだけは事前に伝えておいた方が良いか悩んでいたらしい。

 「いいのよ。社内だから気を遣ったでしょ。」

 「はい。途中でバレたら会社を辞めるつもりでした。」

 「ははは。大袈裟ね。…刈谷君もおめでとう。中々の役者ね。相手が刈谷君とは気付かなかったわ。」

 「ありがとうございます。」

 「でも、二人が結婚って聞くと、「ああ、なるほどね」って妙に納得しちゃった。二人とも結婚後も仕事を続けるんでしょ?頑張ってね。」

 「はい。さっき新婚旅行の特別休暇や、将来的な育休と産休も言質を取ってきました。」

 「ははは、半田さんらしいわね。」


 カイト先輩も喜んでくれたが、驚きと戸惑いの方が大きかったようだ。

 「ユウジ、おめでとう。あと、半田も。」

 「ありがとうございます。」

 「おまえ、半田に何か弱みを握られたりしてないか?辛い事があったら俺に相談しろよ。」

 「何もありませんよ先輩。ありがとうございます。俺から半田先輩に付き合ってくださいってお願いしたんです。」

 「そうか、なら良いけど。」

 「私が刈谷君に何か無理強いしたみたいな言い方ね。」とナオさんの言い方はキツイが笑顔だ。

 「いや、これからユウジが尻に敷かれて大変だろうなって思って。」

 「そんなこと無いわよ。大事にしてるもん。」

 「そうだ。」とナオさんは声を潜めて「私達の報告が先になっちゃってゴメンね。」とカイト先輩に伝えた。

 「なんでお前たちが知ってるんだよ。」と3人とも小声になる。

 「俺が指輪を選ぶ時にアヤさんに相談に乗ってもらって、その流れで半田先輩も一緒に伊予丹に。」

 「ああ、そういうことか。俺は面談の時に伝えるつもりだから、それまでは伏せておいてくれ。」

 「分かりました。」


 晴れて社内への報告が終わり、新婚旅行に行くことも宣言したので、正々堂々と新婚旅行の予約も取れる。俺達は旅行会社JTCへ行き、かねてからパンフレットやHPで検討してきたフランス、パリへの旅行を予約した。10月中頃のフォトウェディングの後、準備期間も考えて11月で日程を選んだ。

 俺は大学の卒業旅行で当時の彼女を含む友達数人とパリへ行ったことがあるが、ナオさんは海外へ行くこと自体が初めてのようだ。ナオさんの大学の卒業旅行は北海道だったらしい。ナオさんは「いつか海外へ行く機会があるなら、是非パリに行ってみたい」と言っていたので、パンフレット等でもフランス行きの物を重点的に見ていた。ナオさんは綺麗な街並みとオシャレ、食事とスイーツに関心があるようだ。都市周遊も考えたが、ナオさんは初めての海外で移動が忙しないと疲れるだろうからパリに5日間滞在し、内1日をオプションでモンサンミッシェルへ行くのに充てた8日間の旅行にした。


 また、会社への報告も済ませたので、俺もナオさんもそれぞれの友達に順次結婚を報告していった。ナオさんはジムの友達に結婚を報告するとお祝いをしてくれることになったらしく、土曜日の夜に飲みに出かけて行き、帰ってきてからもナオさんは上機嫌であった。

 「ただいまー。ユウジ君まだ起きてる?」

 「おかえりなさい。まだ起きていますよ。って言うか、ワインの匂いすごいですよ。」

 「気分が良くて、飲みすぎちゃった。」少し足元がおぼつかないのに俺に抱き着いて甘えてくる。

 「シャワー浴びてくるから、ユウジ君ももう少し起きててよ。お話ししよう。」

 「はいはい。分かりましたから、早くシャワー浴びて着替えた方が良いですよ。」

 俺がベッドの上でスマホをいじっていると、ナオさんはシャワーを終えてTシャツにショートパンツで髪を乾かしている。ナオさんも家の中では軽装で、寝間着となればなおさらだ。冷蔵庫から良く冷えたペットボトルのお水を渡してあげると「ありがと」と喜んでいた。


 二人並んでベッドに横たわる。

 「今日さ、個室レストランみたいなところで女子会だったんだけどさ、私がいかに幸せかよく分かったよ。」

 「どういうことですか?」

 「友達には悪いんだけど、アラサーで年上彼氏ってなると“おじさん”でしょ。彼氏さんがてっぺんハゲの小太りとか、アレに元気が無かったり、早かったりするとか言っててさ。私が年下彼氏なのが羨ましいって。」

 「しかもさ、結婚した友達は、新婚で1年経ってないのにセックスレスだって言うし、未婚の友達も彼氏が疲れやすいのか淡泊なのか、週1回あるかないからしいの。2人とも子供が欲しいのにだよ。私、恋愛・結婚のテーマで初めて友達から羨ましがられたよ。」

 「う~ん、夜の営みは人それぞれですからね。」

 「そうなんだよ。しかもある程度長く付き合わないと分からない事だしさ、難しいよね。だからさ、私はユウジ君にいつも愛されて、幸せだなって思ったの。それで気分が良くなって、ついつい飲みすぎたわけ。まだ私ワイン臭い?」

 「いいえ、大丈夫ですよ。」と答えるとナオさんが俺に抱き着いて甘えてきた。

 「こんなこと言うと「女なのに」って軽蔑されるかもしれないけど、私、エッチが好きなんだ。ユウジ君に求められると嬉しいし、ハグしてもらってユウジ君の匂いに包まれると幸せ。ユウジ君が私の中でイってくれると「やった♪」って思う。」

 「俺もナオさんとのエッチが好きですよ。」

 「へへへ。じゃあ調子に乗って、恥ずかしいことに言っちゃおう。…あの、怒らないでね。私ね、年下のユウジ君の引き締まった身体や元気なチンチンに興奮してるの。いい匂い、いい感触、いい味だなぁって。私もユウジ君の身体を撫でたり舐めたりしたくなる。…もしも同年代や年上の彼氏だったら、私はこうはならなかったかもしれない。友達の話だとね、ビール腹でブヨブヨだったり、チンチンが途中で縮んじゃうことだってあるらしいわよ。」

 「ははは。大変だ。」

 「ユウジ君も若い女の方が良かったって思う時がある?」

 「前にも言いましたけど、俺は年齢に関係なくナオさんが好きです。ナオさんは綺麗だし、好きになった女性がたまたま年上だっただけですよ。」

 「私、背丈は中途半端だし、胸も小さい方だし、コンプレックスもある“おばさん”だけどさ、できるだけ長い間若くて綺麗でいられるように頑張る。だから、これからもずっと抱いてね。」

 「週1回ですか?」

 「もう、バカ。週1じゃユウジ君の方が我慢できないでしょ。」

 「確かにそうですね。」

 「自慢の彼氏に抱いて欲しいなぁ。…あの、変に思わないでね。女にも性欲があるんだよ。たぶん私だけじゃないから。へへへ。」ナオさんが耳元で囁くように言ってくれた。女にも性欲があるのは知っている。でもナオさんはどちらかと言えば貪欲な方だ。


 二人とも上半身を起こし、それぞれ自分の寝間着を脱いだ。俺が小物入れからゴムを出していると、

 「ちょっと待って、舐めてあげる。」とナオさんが既に硬くなっているモノを咥えてくれた。

 「ありがとうございます。」

 「何よ「ありがとう」って変なの。…入れて欲しいんだからまだイっちゃダメだよ。」

 「もう完全に勃ってますよ。」たぶん3分も経ってないが、これ以上大きくも硬くもならない。

 ナオさんはフェラを止めて仰向けになり、「じゃあお願い。」と照れくさそうに言いながら正常位で受け入れてくれる体勢になった。俺はナオさんの唾液でテカっているモノにゴムを被せてナオさんに入れる。

 「あぁ、大きいのが入ってくる。ゾクゾクする。」俺は自分のモノを誇示するようにゆっくり、奥までめいいっぱい入れて動きを止める。今回はゆっくり出し入れをして、モノの感触を楽しんでもらう。

 俺は自分のモノが他の男性のと比べて大きいのか小さいのか知らない。今まで関係を持った女性から大きいとも小さいともコメントを貰ったことが無いので、たぶん普通なのだろう。ナオさんだけが「大きい」と喜んでくれる。たぶんナオさんはまともなセックスをしたことが無くて、初めて俺達が関係を持ったK市での夜、血こそ出なかったものの処女だったかもしれないし、そうじゃなかったとしても片手程度の回数しか経験が無かったのだろう。ナオさんは1ヶ月以上関係が続いた彼氏がいなかったのだから当然だ。自分の中指よりも大きくて太い物への耐性が少ないから俺の平凡なモノでも「大きい」と喜んでくれているのかもしれない。

 ただ、以前ナオさんが言ってくれたように、俺のモノとナオさんのアソコは不思議と相性が良い。あと2~3mmモノが大きかったり小さかったりしたら、俺かナオさんのどちらかの感じ方が違っていたかもしれない。俺も気持ちが良いからナオさんとのセックスが好きだ。


 20分くらいゆっくりとしたセックスをしていると、ナオさんが気持ちよさそうな表情をして、声を出さずにイった。モノは入れたままゆっくりナオさんに覆いかぶさった後、腕枕をして横向きに向かい合う形で抱きしめる。ナオさんは余韻にひたる様に目を伏せ、「はぁはぁ」と小さく短い呼吸をしている。

 「へへへ、気持ちよかったよ。」ナオさんは薄っすら目を開けて、恥ずかしそうに言った。

 「よかったです。」

 「まだ、私の中に入ったままだね。」

 「抜いた方が良いですか?痛い?」

 「大丈夫。…もうちょっと待ってね。そしたら動いてもらってもいいから。もうちょっと休憩。」

 「はい。」

 「ユウジ君は腰や腕、痛くない?」

 「大丈夫ですよ。俺も今休憩中です。」

 「ふふふ。じゃあ、しばらくこのままでいて。」

 ナオさんはハグを喜んでくれているが、ナオさんがイっても構わずに動き続ければよかったと少し後悔している。まだ勃ってはいるが少しずつ冷静さを取り戻し、灯りを消していてもナオさんの汗をかいてベタつく肌、乱れた長い髪、目尻のシワが分かる。長い間水分補給をしていないからうっすら口臭もしだした。しばらくすると俺のモノの硬度が下がっていく。

 「あれれ、元気がなくなってきた。休憩しすぎたね。…ゴメン。」ハグに浸っていたナオさんが下半身の方に目をやり、申し訳なさそうに言う。

 「動きだしたらすぐ戻りますよ。次は俺がイクまで止めませんよ。」

 「えー、改めて言われるとちょっと怖いなぁ。」二人で笑いながら体制を正常位に戻した。

 ゴムを着け替え、大きくゆっくり2~3度出し入れをしてナオさんが痛がらないのを確認してから腰の動きを速くする。ナオさんは俺の腰の動きに合わせて「ん、ん、ん」と声が漏れ、胸の美乳も前後に大きく揺れている。10分経たない内にナオさんが「ヤバイ、またイク」と急に言い出し、本当にアソコが締まりだしたので、さすがに速度を落とした。

 「今日はどうしたんですか?ずいぶん感じやすいじゃないですか。」

 「なんでだろう、お酒かなぁ。すごく気持ち良い。」

 「ナオさんの中、ギュって締まって俺も気持ち良いですよ。」

 「バカ、恥ずかしい事言わないでよ。」

 「今日はこのくらいにしますか?2回も連続でイったらさすがに疲れたでしょ。」

 「ダメだよ。私は大丈夫だからユウジ君がイクまで続けて。」

 「いいですけど、しんどかったり痛かったら言ってくださいね。」

 「ふふ、優しいね。…でも、ユウジ君がイカないと赤ちゃんできないわよ。ふふふ。」

 俺は背筋にゾクっとするもの感じながら腰の動きを速めた。

 ナオさんが性欲を包み隠さず露わにし、乱れる。汗をかき、体温が上がり、肌が赤らむ。トロンとした目で俺をぼんやり眺め、薄い唇から艶っぽい声をあげている。二人が繋がっている股からは恥ずかしい音と生臭い匂いもしている。

 俺が「イキます。」と伝えると。ナオさんはコクリと頷きなされるがまま身を委ねてくれた。俺も果てるとナオさんが「ハグしよう」と言って俺を抱き寄せ、優しくキスをしてくれた。

 あれ?でも、よく考えたらセックスの前にフェラしてくれたお口だ。

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