第28話 本当にすいませんでした。仲直りしてください。

 リーガロイヤルホテルのプレジデンシャルタワーズ。半田家と刈谷家の顔合わせを無事に終えた後、自分たちも部屋へ入る。ホテル到着時にフロントで預けた荷物は既に部屋に入れてくれていた。

 「ユウジ君お疲れ様。がんばったね。」ハンガーにジャケットをかけている時にナオさんが労いの言葉をかけてくれた。

 「緊張しっぱなしだったけど、無事に終わってよかったです。」

 「一応『プレゼン女王』と呼ばれている私が褒めるんだから、良い会の仕切りだったわよ。」

 「本当ですか、ありがとうございます。」


 「あの、いきなりだけど我儘言っていいかな。少しの間だけで言う事を聞いてほしいの。」

 「はい。」

 「じゃあ、こっちに来て。…ベッドの上に仰向けに寝転んで。」

 「こうですか?」ナオさんはワンピースを脱いで、下着姿になっていた。スカイツリーデートの時に着ていたベージュのワンピースだ。ショーツも脱いで隣のベッドの上に置いてこちらに来る。たぶん、騎乗位でセックスするんだろうと思っていたら、俺を跨いで胸の上に座り少し緊張した表情で俺を見下ろす。

 「舐めて。…シャワーを浴びてないのも、汗をかいているのも、匂いがするかもしれないのも分かってる。…でも、お願い。」

 「はい。」俺はナオさんの強い意志を感じ、言われたとおりアソコを舐める。

 「今日もユウジ君のご両親は「ユウジ、ユウジ」って“ユウジ愛”がすごかったわね。…特にお母さん。びっくりしちゃった。」俺の上に座って話をしながらナオさんは髪をヘアゴムで纏めている。

 「そうですか?これが普通だと思っていました。」いつもクンニする時と同じようにアソコやクリを舐め続ける。いつもと違い生臭い匂いがして、しょっぱい味が強い。

 「私はちょっと異常だと思う。…でも、その大事な大事な長男くんに私はアソコを舐めてもらっているの。ふふふ。…たぶんユウジ君の両親もまだお部屋にいるわよね。ホテルの同じフロアに両親がいるんだよ。ユウジ君のお母さんが今の私達を見たらどんな反応するかなぁ。想像するだけでも面白い。」ナオさんは笑いながら時々腰が動く。

 「悪いことだって分かっているけど、人が大事にしている人や物を汚したり、壊すのって気持ちが良いわよね。興奮する。…でもさぁ、ユウジ君のことは私に任せて、ご両親には子離れしてもらわなきゃ。いつまでも干渉されたくないし、同居するのなんて冗談じゃないわ。ユウジ君もそう思うでしょ。」

 「そ、そうですね。…あの、ナオさん、ちょっとしんどいです。」ナオさんのアソコが濡れ、自分の唾液も加わり、ナオさんの股間も俺の顔もベタベタになってきている。匂いもいつもよりキツイので、早く終わらせたい。

 「ああ、ゴメン。じゃあ吸って、…吸ってイカせて。私のユウジ君。」ナオさんは興奮最高潮なんだろう。容赦なく俺の頭を掴み自分の股間を押し付けてきた。俺は唇をクリの位置で少しとがらせ大きく長く息を吸いこむ。4回目に吸いこんでいる時にナオさんはカクカク身体を震わせながらイった。俺はナオさんから出た愛液を吸い込んでしまい、少しむせる。

 「ユウジ君、大丈夫?」ナオさんは俺の上から降りて、体を起こした俺の背中を撫でてくれる。

 「大丈夫です。」

 「洗面所で顔を洗いましょ。」ナオさんに手を引かれて洗面所に入り、アメニティーのボディウォッシュで洗顔する。水で洗い流している間、ナオさんは身に着けているのがブラだけの状態のまま俺の後ろに立ち、俯き加減に突っ立っている。

 「ユウジ君にとっては八つ当たりだったよね。ゴメン。」

 「俺の母親が同居とか言い出したのを真に受けたんですか?冗談に決まってるじゃないですか。」

 「そうだといいけど、ユウジ君がちゃんと断ってくれなかったから…。あとは、お母さんへの当てつけ。ユウジ君をイジメたくなっちゃった。」

 「怒るかもしれ…」

 「分かってる。臭かったんでしょ。」ナオさんが強い口調で遮る。

 「自分の指でもやってたんだから知ってるわよ。だからいつもユウジ君とやりそうな時は、トイレに行ってウェットシートでちゃんと拭くようにしていたもん。」

 「臭いと分かっていて酷くないですか?」という言葉を飲み込み、「念のために母親にクギを刺しておけば良いですか。」と不承不承答えるだけにした。

 「うん、お願い。…シャワー浴びてくる。」

 時々垣間見えるナオさんの変態性だ。俺が年下で部下だからかもしれないが、ナオさんは間違いなくS気質である。自分の思い通りに事が進まないと気が済まない質で、それを妨害や反対する人や物を攻撃する。今回の場合は、俺の母親が干渉しようとしてくるのを疎ましく思い、しかし、母親本人を攻撃するわけにはいかないので母親が「大事な長男」と言っていた俺に八つ当たりしたのだ。

 これとナオさんの独占欲とが相まって、俺が嫌がるであろうことを命じ、言う事を聞かせることによって自分への愛情を確認し、安心したのだろう。


 ナオさんは髪は洗わずサラッと汗を流して、股間だけを重点的に洗ったのだろう。比較的短時間でシャワーから出てきた。下着は上下ともに新しいのに変えて、再度ベージュのワンピースを着た。そして、その様をソファーから目で追っていた俺の前に立ち、

 「本当にすいませんでした。仲直りしてください。」と深々と頭を下げてきた。

 「はい。今後ともよろしくお願いします。」不快ではあったが別れる程のことではない。素直に謝罪を受け入れる。

 「ありがとう。」ナオさんは俺に抱き着いて甘えてきた。

 「ねえ、ユウジ君。ラウンジでお茶しようよ。男の人にはご飯、足りなかったんじゃない?」

 「ちょうど腹八分目って感じですが、オヤツなら入ります。」

 「よし、決まり。…もう上着とネクタイは外して行ったら。」

 「そうですね。」ネクタイを外し、スマホとカードキーだけ持って部屋を出た。


 プレジデンシャルタワーズ専用ラウンジ。23階のエントランスの奥にフロア宿泊者専用のラウンジがあり、そこでホテルメイドのサンドイッチやケーキ等の軽食と、アフタヌーンティーを楽しめる。コンシェルジュの方に案内されて入ると、既に俺の両親が寛いでいた。

 「お~、ユウジ。」

 「父さんたちも来てたんだ。」

 「半田さん、素敵な部屋を取ってくれてありがとう。係の方がラウンジの事も教えてくれて、来てみたの。」

 「喜んでもらえて良かったです。」とナオさんが母親に応じる。

 「新郎のお役目お疲れさま。大変だっただろう。」

 「うん。でも、ナオさんが予約の手配をしてくれたりしたから、すごく助かった。」

 「半田さんもお疲れさま。半田さんのご両親も気さくで良い方々で安心したよ。」

 「いえいえ、気さく過ぎて馴れ馴れしくなかったでしょうか?」

 「いや。楽しく食事できたよ。ご両親にお礼を言っておいてください。」

 「ありがとうございます。」ナオさんが笑顔で答えている時に係の方がオーダーを聞きに来てくれて、俺とナオさん二人ともアイスのカフェオレを注文した。

 「でも次にみんなで会う時は、誰かの冠婚葬祭くらいだな。母さんのご両親と俺の両親が会ったのも、結局は顔合わせと結婚式、あとは葬式だけだった。」

 「めでたい時に縁起でもない事を言わないでください。」母親が父親をたしなめる。

 「まあ、両親同士もそうだし、お前たちと俺達が会えるのも盆か正月くらいだな。ははは。」父親はお酒が入っているからかご機嫌だ。

 「私は、同居でもいいんですけど。」母親が冗談で言う。

 「いい大人二人に対して何を言っているんだ、好きにさせてあげなさい。…ユウジ、半田さん。俺達もできるだけ病気や介護とかで面倒をかけないようにするから、お前たちも自由に楽しい家庭をつくりなさい。」

 「分かった。ありがとう。…ナオさんもこれでいいかな。」例のクギを刺す件だ。

 「うん。」笑顔で頷いてくれた。

 「だけど、年に1回くらいは帰ってきなさいよ。…そろそろ出かけますよ、お父さん。遅くなっちゃう。」母親が退席を促す。

 「そうだな。道頓堀に出て観光してくるよ。久しぶりの遠出だから母さんが楽しみにしていてね。」

 「気を付けて、行ってらっしゃい。」席を立つ両親を見送って、やっと落ち着いた。

 

 俺達はカフェオレを数杯おかわりしながらサンドイッチやケーキを満喫する。特にナオさんはケーキが気に入ったようで、ロールケーキ、フルーツタルト、ストロベリーショートケーキ等、6~7個のケーキを美味しそうに食べていた他、スコーンやクッキー等のお菓子類も楽しんでいた。俺もサンドイッチが特に気に入って、バクバク食べた。

 「親があっさりした食事の方が良いかと思って日本料理にしたけど、私達も良かったわね。」

 「お昼はお昼で美味しかったですが、こっちでカロリーを取るとは思っていませんでした。美味しいです。って言うか、ナオさん、ケーキ食べすぎじゃないですか?」

 「ちょっと甘めで美味しいのよ。取りに行くたびにショーケースのケーキが変わって、あれも食べたい、これも食べたいって止まらなくなる。」

 「今日は晩御飯、少なくて良いですね。」

 「そうだね。ちなみに夕方6時からはイブニングでお酒も出るよ。また夜も来ようね。」

 緊張やイライラの後の糖分補給をやや過剰なほどして、ストレス発散ができた。


 夜7時頃、俺達が部屋でじゃれ合っている時にナオさんのスマホにご両親から突然電話があった。「何かトラブルか?」と思ったが、ラウンジで一緒に飲まないかというお誘いだった。あちらも部屋からのようで、「7時30分くらいに待ち合わせをしよう」とのことだった。俺達も時間を合わせて再度ラウンジに足を運ぶ。

 「お母さん。」

 「ナオ、急に電話してゴメンね。大丈夫だった?」

 「うん。部屋でゴロゴロしてただけだから。」ナオさんが少し顔を赤くする。あと10分電話が遅かったら裸だったかもしれないが、確かにまだゴロゴロじゃれ合っているだけだった。

 「お父さんと梅田の阪急百貨店に行って来たのよ。博多のよりも大きくて楽しかったわ。ホテルからJR大阪駅までシャトルバスが出てたから、すぐだったのよ。」

 「お父さんも今日ありがとう。遠かったでしょ。」

 「博多から出るの久しぶりだったから楽しいよ。それに刈谷さんのご両親と普通にお話しができて安心したよ。今度は弟君にも合わせてくれ。」

 「是非。仲良くしてやってください。」と答えた。

 「そう言えば刈谷君。…ナオがご実家へ挨拶に行った時、ナオの味方になって一生懸命フォローしてくれたんだってな。」

 「お父さん。ちょっと…」ナオさんのお母様が止めようとする。

 「あちらとケンカするつもりはねぇよ。ちゃんと刈谷君に礼を言いたかっただけだ。…ありがとう。これからも娘を頼む。」椅子に座ったまま軽くお辞儀をされたので、こちらも「承知しました」と受けた。

 「刈谷君心配しないでね。ナオにも絶対に元気な子供ができるから。ミオを見たでしょ?うるさいくらいに元気な子を産んだんだから。ふふふ。」

 「お母さん、人前でやめてよ。」

 「まあ、猫被って大人しくしておけって言ったのに出しゃばって、ゴチャゴチャうるさいのは諦めてもらわないといけないかもな。」お父様が冗談を言う。

 「お父さん。怒るわよ。」俺は苦笑いをしながら聞いているしかない。

 「まあ、もし東京や名古屋でトラブったらうちに来い、娘と一緒に面倒見てやるから。仕事もあるぞ。ははは。」

 1時間半くらいワインとオードブルを楽しみながら話しこんだ。ご両親とも終始上機嫌だった。

 俺もナオさんも自分の家ではお酒を飲まない。せいぜいデートで外食した時や職場の懇親会的な飲み会でグラス1~2杯嗜む程度だ。ナオさんはワインを飲むことが多く、俺も同じものを頼んだり、たまにビールを飲む。そう言えばナオさんがビールを飲んでいたのはK市のあの夜だけだ。


 そろそろ寝ようとラウンジを後にし、部屋に戻った。

 「今晩と明日朝一は急な電話や呼び出しがあるかもしれないから、エッチはお預けね。いいでしょ?」

 「はい。7時のはビックリしましたね。もう少しでナオさんを脱がせて、止まらなくなるところでした。」

 「うち親がドアで聞き耳を立てて「ナオが襲われる、電話しろ」みたいなのだったらどうする。」ナオさんが笑いながら聞いてくる。

 「怖い事言わないでくださいよ。」

 「ふふふ。でも、もしそうだとしたら電話くらいでは済まなかったわよ。部屋に殴り込んできて、「ちゃんと籍を入れて、ケジメをつけてからにしろ」って、ユウジ君をボコボコにしちゃうかも。」

 あり得ない想像をして二人とも大笑いした。ナオさんも半田家の大事な大事な長女なのだろう。しかし、ナオさんのご両親もお昼のクンニを見たらどんな反応をするだろうか。いきなり脱いで婚約者に臭いアソコを舐めさせ興奮する長女。あれだったら、普通にセックスをしているところを見る方がまだましだと思うに違いない。

 今日はシャワーを浴びて、それぞれのベッドで素直に眠った。

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