うらはら

愛奈 穂佳(あいだ ほのか)

第1話



―――ヴァサバサバサバサッッッ!



 いくら背後が山で隣が動物公園という、東京都とは思えないド田舎な大学の敷地内とは言え、こんなに大きくて威圧感のある鳥類のはばたきが近くで聞こえるなんてありえない!

 せっかく、宵闇迫るカフェテリアのオープン・テラスで、憧れの宇賀神(うがじん)先輩とサークルの夏期合宿について打ち合わせをしつつ、そのまま……ちょっぴりオトナな夜に持って行こうとがんばっていたのに!

 今日、この日を迎える為に、あたしがどれだけの手回し、根回し、その他諸々苦労したと思ってるのよっ!

 それはもう、聞くも涙、語るも涙な恋する乙女の壮絶な駆け引き話なんだけど――今はそれどころじゃないので、割愛。

 ここは、正真正銘の『東京都』なのに、大学周辺にビルや高層マンションはなく、日が暮れると純粋な闇に包まれる。

 大学構内だって、必要最低限の灯りしか設置されていないから、物音がしてもすぐにその正体を見極めるのは至難の業。



―――ヴァサバサバサバサッッッ!



 さっきより更に近くで同じ音を耳にしたと思った瞬間―――!

「わぁおっっ!」

「ひぃぃぃ――っ!」

 無邪気な子供のように好奇心たっぷりな驚きの声をあげた宇賀神先輩と、声にならない悲鳴をあげて、椅子に腰かけながらも腰を抜かしたあたし。

 あたしは腰を抜かしながらも音の出所へと視線を移し、絶句。 

「…………」

 絶句しながら、思わず二度見してしまった。

 宇賀神先輩の存在が、宇賀神先輩への恋心が、あたしの何気ない(考えなし、とも言う)言動のストッパーになってるから、とりあえず、あたしにとって今のこの状況はこう着状態になったけれど。

 許されるのなら、叫びたい!

 全身全霊で、叫びたい!

 全力を振り絞って、悲鳴もあげたい!


 嘘だ嘘だ嘘だ!

 こんなコトが現実に―――





―――ヴァサバサバサバサッッッ!



…………起こってる。

「……」

 涙が出そうになるのを必死にこらえてるあたしの正面では、宇賀神(うがじん)先輩が身を乗り出してあたしの横を嬉しそうに見ている。

 宇賀神先輩は、あたしが所属しているサークルの会長。

 あたしより1回生上の、3回生。

 身長は180センチ。目鼻立ちがしっかりした顔立ちで、一見クールに見えるんだけれど、ちゃんと相手と向き合って話をするからか、意外に百面相。ついでに、笑顔がとっても魅力的!

 バランスが取れたスタイルだからか、何を着ても着こなしてるし、センスも抜群。

 誰がどこから見ても、宇賀神先輩はイケメンの部類に入ると思う。

 当然の帰結で、宇賀神先輩はモテる。

 在籍している大学内だけではなく、サークル同士のつきあいがある他大の女子からもモテまくってる。

 だけど何故か、少なくても今現在、『彼女』はいない。

 かといって、モテる自分に酔ってるナルシストではないし、自分をめぐって火花を散らす女子大生たちを眺めて楽しんでいる悪趣味な人でもない。

 あ、今流行の……というか、いつの間にやら市民権を得た、通称『BL』の人でもない。

 宇賀神先輩はイケメンだけどチャラくない、それなりに大学生活を満喫している平均的な大学生だと思う。

 ただ。

 趣味や興味のある事柄には【熱中しすぎる】タイプなので……本領発揮した先輩についていける女子がいないんだと思う。

 宇賀神先輩の偽りない真の姿を目の当たりにして志半ばで去って行った、彼の彼女になりたかった先輩や同級生や他大の女子大生たちを、あたしは何人も見てきた。

 彼女たちの気持ちも、よくわかる。

 たぶんこういう気持ちが積み重なっちゃってもう無理!って思ったんだろうなぁ~って感じること、多々だから。

 それでも、あたしは宇賀神先輩が好き。

 好きだから、どんな試練にも耐えてみせるし、障害だって蹴散らしてやる!

 ……と、常日頃から自分を鼓舞し、自分立ち上げをしていないと、すぐにココロがあっさりと折れてしまうであろう状況なのよね……。

 現実は時に無情で、時に過酷だわ。

 宇賀神先輩!

 嗚呼……宇賀神先輩!

 せつないです!

 とてつもなく、せつないです!

 愛しさとせつなさと、言葉にできない、したくない複雑な気持ちから……叫びだしそうです!

 特に今は、このままだと発狂しそうです!

 宇賀神先輩、助けてください……。

 お願いです……。

 気づいてください……。

 この状況が……『普通』ではないことに……。

 嗚呼……宇賀神先輩……貴方は何故――

 そこまで思って、あたしは宇賀神先輩から少しだけ視線を逸らし、小さくかぶりを振った。

 何故、と問うだけ愚問というもの。

 それもひっくるめて、あたしは宇賀神先輩が好きなんだから……。

 だから……

 そのまま……あと数ミリでキスできそうな至近距離だっていうのに……あたしを通り越し、まるで黒曜石のような輝きを放つ黒い瞳で覗き込むようにして見つめている宇賀神先輩の視線の先は――

「すっげぇ~! 本物のインドクジャクじゃん! 俺、間近で見たの、初めてぇ~~~っっっ! ひゃっほう~っ!」

「……」

 敢えて、イマドキでは珍しいであろう黒髪のストレートをトレード・マークにし、手の込んだナチュラルメイクで年相応プラス・アルファの魅力を演出している、後輩女子大生ではなく、突如出現した【インドクジャク】に視線が釘付けになり、ココロを奪われるなんて……。

 日々、さりげなく自然な雰囲気でお近づきになろうとあれこれ努力している自負があるから、こうもあっさり愛しい人の気持ちを鷲掴みにされてしまうと、泣くに泣けない。

 しかも、相手が年上だろうと年下であろうと、『絶世の美女』ならまだ諦めもつくけれど、【インドクジャク】て!

 どのパーツで張り合えばいいんですか!?

 実は宇賀神先輩、深層心理では、きらびやかな満艦飾メイクが好みなんだろうか……。

 嗚呼……せつない。

 対象は違えど、何度もこういう場面に遭遇し、宇賀神先輩の反応(リアクション)を見てきてるから、『はいはい、またですね――』という気持ちにはなるけれど……毎度毎度、やるせない。

 やるせないのに、そんな宇賀神先輩のことが嫌になったことは一度もない。

 つくづく、恋する乙女ってのはメデタイなーって思うけれど……今回は、いつもに増して勝手が違う!

 そう!違うでしょ?

 あたしは少しだけ冷静に戻った。

 センパイ!

 宇賀神先輩!

 心トキメク対象物、オカシイでしょ!?

 「ひゃっほう~っ!」じゃないですよ!

 それ、【インドクジャク】ですよ!?

 何かが……違います……よね?

「う……宇賀神、先、輩……?」

 おそるおそる声をかけてみたけれど、彼の耳にあたしの声は届いておらず、あたしの姿も目に入っていない様子……。

 ――いつもの反応(リアクション)です。

 そしていつものように、感動、感激、今オレ最高に幸せ!……と全身で大喜びしている宇賀神先輩の姿にトキメキを感じてるあたしですけど!

 あたしだって、本物のインドクジャクなる生き物を間近で見たの、初めてですけれどっ!


 ――怖いですから……鳥も昆虫も小動物もっっ!


 喉まででかかった言葉を、あたしは全力で飲み込んだ。

 良くも悪くも、思ったコトはその場でぽんぽん口にしちゃうのが『あたし』だってのに……片想いしてる人の前では……彼好みの女になろうとがんばってしまう……。

 がんばっちゃうから、口にする前にコトバを吟味してしまう。

 だから結果、言いたいことを言うタイミングを逃して何も言えなくなってしまったり、話が進んじゃって、仕方なく、とびきりの笑顔で聞き上手になるしかなくなっちゃったりすることばかり。

 我ながら、ここまで間が悪いヤツもいるもんだ……って、ことある度にニガワライしてる。

 同時に、そんな不器用なあたしがあたしの中に居たなんて、宇賀神(うがじん)先輩に恋するまでは知らなかったあたし。

 生まれてからまだ19年だけど、それなりに恋をして、恋を知って、恋に破れて……人並みに泣いて笑って少しずつ強くなってきているつもりだけれど、それでも、まだまだ未経験なことってあるんだなぁ~って、宇賀神(うがじん)先輩の傍にいると感じることが多い。

 あたしが知らないだけで、まだココロのどこかで眠ってる『別のあたし』が居るかもしれない。それを宇賀神先輩に見つけてもらえたら、至上の喜び。そういう関係になりたいな……ってずっと思ってるんだけど――。

 現実は日々、障害物競走。

 次から次へと、障害物はでっかく強くなっていってる。

 神様は乗り越えられない試練は与えない――世間的にもあたし的にも大ヒットしたドラマの言い得て妙な名台詞だけを武器に、あたしは戦ってる。

 終わりが見えない戦いなので、毎回、今日こそあたしの手でこの現状を打破してみせる!と意気込んで対峙してるんだけど……障害物も宇賀神先輩もツワモノで、あたしは毎度『To be continue(次回持ち越し)』を余儀なくされている。

 そんなあたしの裏事情を知ってか知らずか、今日も宇賀神先輩は、うっとりとした表情でインドクジャクを見つめたまま、言った。

「ほんっと、綺麗だよなぁ~。感動だよなぁ?東江(あがりえ)」

 パブロフの犬のような勢いで、あたしはサークルの活動内容に関してのみ意に反して例のごとく、同感を口にしていた。

「ほんと、感動です~!こんな至近距離で、こんなに綺麗な羽を広げたクジャクを見れるなんて!『野鳥の会』に入って良かったですぅ~」

 涙が、出て来た。

 怖すぎて。

 こわいよ。コワイよ。怖いよ―っっ!

 クジャクだよ?

 通常、『クジャク』と言えば、キジ科の鳥類で、中国から東南アジア、南アジアに分布するクジャク属2種のことをさす。

 今、あたしの背後というか斜め後ろというか横というか……非常に微妙な位置にいる【インドクジャク】は、インド、スリランカ、ネパール南部、パキスタン東部、バングラデシュ西部に自然分布しているクジャクで、その名が示すように、インドでは国鳥。

 クジャクをペットとして飼育する人もいるし、日本では動物園で飼育されているから、見たことある人も多いはず。

 動物園の檻越しで見てもクジャクは迫力あると思うけど、インドクジャクの場合、最大全長230センチメートル。

 見たところ、メスの成鳥の特徴である、全身が褐色、顔や腹部が淡褐色を帯びた白い羽毛で被われている……ではないので、コレはオスの成鳥だと思う。

 怖すぎてまじまじと見ることはできないけれど、オスの成鳥は、尾羽基部の上面を被う100~150羽の羽毛(上尾筒)が発達するらしく……ちら見だけど、それっぽく見えるから、コレは十中八九、オスの成鳥だと思う。

 となると、オスの成鳥だと、体重は4~6キログラムが相場のはず。

 ううぅっ!

 数字だけでも、迫力満点で怖いっ!

 ……鳥も昆虫も小動物も怖いけれど、宇賀神先輩とスムーズに会話を進めるために、とりあえず、基礎知識だけは詰め込んでるのよっ!

 誰も言ってくれないから自分で言うけれど、

「ああ……あたしって健気っ!」。

 それよりなにより。

 ……このインドクジャク、存在感と威圧感ありすぎて怖いよっ!

 生々しい息遣いが伝わってきて、怖いよ!

 思わず、「ヒッヒッフー」で呼吸を整えようとしてしまったくらいに、至近距離過ぎて怖い。

 こわいこわいこわい。

 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃ……って思いながら、某アニメを思い出してる時点で逃げてるじゃんね……。

 脱兎の勢いで逃げ出すことができない現状だから、余計に脳内でくだらない現実逃避を繰り広げてしまう。

 「ほらね、こわくない」って、思いきり指をかまれてるのに笑顔で優しく言える宮崎アニメの初期作品の主人公なんて、鳥も昆虫も小動物も怖くてたまらないあたしには信じられない。

 あの場面(シーン)では、『がぶっ!』って勢いよく噛まれてたし、人間(ヒト)って、噛まれたら、条件反射で大仰に身体が反応しない? あたしだったら、痛みと驚きから、悪意なく、噛まれた指を引っこ抜くと同時に腕を大きく振ってあの小動物を吹っ飛ばしてしまってたと思う。

 恋する乙女の特技は『妄想』……もとい『想像』だと言うけれど、もしあの小動物に指を噛まれていたのがあたしだったら……と思うと身の毛がよだつ。

 こわいこわいこわい。

 何かのスイッチが入ったのか、妄想も想像も止まらない!

 怖い怖い怖い!

 この超至近距離にてそびえ立つインドクジャクにつつかれたり、かじられたり……はさすがにないだろうけど、羽で触られたりしたら……どうしよう。

 クジャクの羽って立派だから、見るからに硬そうで痛そうだし……。

 「―――ヴァサバサバサバサッッッ!」って大きな音をたてられるくらい力強い羽みたいだし……ううぅっ、怖いよ――。

 想像するだけで、鳥肌が立つ。

 このインドクジャクにほんの少しでも接触されたら、大悲鳴を上げながら卒倒する自信、あるんだけど……。

 でもそんな醜態晒したら、宇賀神先輩に呆れられるの通り越して嫌われちゃうよね。

 鳥も昆虫も小動物もだぁ~い好き! って言ってたのがウソだってバレちゃうんだから……。

「……」

 身から出た錆、と言ったら身も蓋もなくて悲しくなるから、言葉を変えよう。

 ――八方塞とは、まさにこのこと!

 どうすればいいの!?

 怖いよぅ~~~!

 声に出せない、言葉にしてはいけない思いは、その姿をさらなる涙に変えた。

 堪えようとしても、堪えられなかった。

 とめどなくはらはらと伝い落ちる涙をどうこうすることはできなかったので、せめて、暗い表情にならないよう……少しでも泣き笑いにしよう……と、がんばった!

 泣き笑いをがんばるあたしの健気さが恋愛の神様の元に届いたのか……宇賀神先輩が、優しく微笑みかけてくれた。

 嗚呼……宇賀神先輩!

 ここで優しくあたしの頭を抱き寄せてくれるんですか!?

 怖がることないよ……って、毎晩念入りなケアとパックを欠かさないこのぷるぷる唇に、小鳥がついばむような優しいキスをしてくれるのでしょうか!?

 この際、つり橋効果でもなんでもいい!

 夢にまで見た、大好きな宇賀神先輩とキスできるのであれば!

 あたしは瞳にたまった幸せの涙を意識しながら静かに目を閉じた。そっと頬をこぼれ落ちる涙を感じながら、脳内では、90年代後半の結婚式の定番となった歌のサビが盛大に鳴り響いている。

 あぁ……ほんと、ここまでの道のりは遠かったし、怖かった……。でも、時々、素晴らしいことも笑顔もたくさんあって……今、こうして最大級のシアワセを噛み締めることができているあたし……。

 諦めないで、へこたれないで、この日を夢見て信じてきてよかった!

 憧れの宇賀神先輩とのキスは今か今かと待ち構えているあたしの頬に、宇賀神先輩の息が触れたと感じた瞬間!

「あ、東江(あがりえ)、泣いてる! そりゃ、感動で泣きたくもなるよなー。わかるわかる。俺も、感無量だもん!」

「……」

 一瞬、あたしの呼吸は止まった。

 う、うがじん、せんぱ―いっっ――。

 声を大にして叫びたかった。

 この状況なら、キスですよね? キス!

「……」

 はぁ~、とあたしは脱力した。

 ここでキスにならないのが、『野鳥の会』の『会長』である宇賀神先輩なのよね……。

 あたしは大きく息を吐きながら、気持ちを落ち着かせた。

「一生、忘れられない記念日になりますよねー」

 同じ記念日なら、つきあい始めた記念日とか、初めてキスした記念日とかがいいのになぁ~。

 ちょっぴり恨みがましく思いつつも、そんな思いをいとも簡単に吹き飛ばしてしまうこの圧力(プレッシャー)と恐怖。

 あぁ……横が……ほぼ真横の存在が……威圧感が……生々しさが……本当に半端なく怖いよぉ~。

 密着してないのに、インドクジャクの息遣いや体温がリアルに伝わってくるこの感覚!

 これが空気の振動なの!?

 お……お願いだから、そこから一歩たりともあたしに寄らないでね?

 あぁ……怖いよぉ~。

 本当に怖いのに、あからさまにビビってるというのに……宇賀神(うがじん)先輩はこれっぽっちも気づいていない……。

 せつない。

 宇賀神先輩は、目を輝かせながら言う。

「記念日……なるなる! 飼育員でもない人間が、こんな至近距離で求愛行動をするクジャクを見れるなんてこと、絶対ないからなー」

「きゅ……求愛……行……動?」

 なにそれ?

「え? 東江(あがりえ)、知らないの?」

「い、いえ、知ってます知ってます! コレ、求愛ですよね~。まさか、クジャクに求愛されるなんて夢にも思わなかったから……ちょっと動揺しちゃっただけです~。あはっ!」

 固まったまま泣き笑いをするあたしの真横で、クジャクが優雅に羽を動かしている……。

 宇賀神先輩は、それを愛おしそうに見つめ続けてる……。

せつない……。

「東江(あがりえ)と一緒に行動してると、ほんと、超レアな状況に遭遇するよな。去年の夏の合宿では蝉に求愛されてたし、月イチの探鳥会ではオナガセアオマイコドリに求愛ダンスされたし……。ほんと、貴重な体験させてくれる東江には大感謝だよ」

「お、お役に立ててるなら、嬉しいです♪」

 蝉もオナガセアオマイコドリも半端なく怖かったから……思い出したくも無いけれど……今はそれとは比べ物にならないくらいに怖いよ……怖すぎるよ……羽、動かさないで欲しい……どっか行ってよぉぉぉ~。

 力いっぱい、全身全霊でそう思うし声に出したいんだけれど……言えない。

 口が裂けても、言えない……。

「このクジャク、本気で求愛してるねー」

「……みたい、ですね。あはっ。同じ求愛されるなら……人間の方が……いいんですけどね……あたしは……」

「そりゃ普通はそうだろうな」

 宇賀神先輩は屈託なく笑った。

 素敵すぎ。

 でも、恐怖の方が強くて……宇賀神先輩に集中できない……悔しい……。

「こいつ、間違いなく隣の動物公園から脱走してきたと思うけど、も少し見てようぜー」

「……そ、そうですね!こ、こんなチャンス、め、滅多に、ない、ですもんねー」

「東江(あがりえ)が話のわかるヤツで良かったよ。大抵の女子って、いざ本物を目の当たりにすると怖がるし、及び腰になっちゃうから、せっかくの探鳥会でも気疲れしちゃって楽しさ半減なんだよな~」

 が、がんばらねば!

 がんばれ……がんばるんだ!

 東江(あがりえ)きよの!

「あ……あたしは全っ然、平気ですから!た、ただ、知識がまだまだ足りないので……お嫌じゃなかったら、こ、このクジャクについても、い、色々……教えて頂けませんか?」

「いいよ!俺、話すの大好きだから、そう言ってもらえると嬉しくなっちゃうね!」

 こ……高感度アップしたと思うけど……でも、怖い。

 クジャクが動くたびに、逃げ出したくなる……怖すぎる……。

 でも、宇賀神先輩が、嬉しそうにクジャク話を始めたので……にこにこ笑顔を意識するあたしだった……。


                                   おわり





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うらはら 愛奈 穂佳(あいだ ほのか) @aida_honoka

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