冒険者ギルドに報告する

 俺達は冒険者ギルドへと戻っていった。


「いらっしゃいませ! 冒険者ギルドにようこそ!」


 受付嬢の快活な声が響く。


「あら? ルイドさんとエアリスさんじゃないですか。どうでしたか? スライム退治は」


「無事クリアできました」


「それはよかったです。これでDランクに昇格ですね。おめでとうございます」


 こうして俺達はDランクの冒険者パーティーに昇格したのであった。


 スライム相手では些か手応えに欠けるが仕方がないだろう。こうして一歩ずつ足場を固めていく事が後々の成果へと繋がっていく、はずである。


「それと受付嬢さん。クエスト中に例のキングメタルスライムと遭遇して」


「ああ……遭遇したんですか。それは珍しい経験をしましたね。でも倒せなくても無理はありませんよ。あなた達はまだ冒険者として始まったばかりなんです。メタルキングスライムの皮膚はそれはもう硬くて」


 受付嬢は饒舌に知識をひけらかす。


「その硬さと来たらアダマンタイト級を超えて伝説の金属ヒヒイロカネ級と言われるんです。そんな硬い皮膚を持つメタルキングスライム、例えSランクの冒険者パーティーだとしても貫くのは容易くありません。だから倒せなくても全然落ち込む必要性はないんですよ!」


 なんだろうか。この雰囲気は。事実を告げ辛くなってきた。


「受付嬢さん、私達はその」


 俺が口ごもっているとエアリスが告げる。


「はい? なにか?」


「私達はそのメタルキングスライムを倒したんです」


「い、今なんと? 聞き間違えでしょうか?」


「私達はそのメタルキングスライムを倒したんです」


 エアリスは事実を繰り返す。


「ええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 受付嬢は絶叫をあげた。


「そ、それは本当ですか!?」


「は、はい……本当です。ここにメタルキングスライムを倒した時に手に入れた素材があります」


 俺はカウンターに素材を置く。硬質な金属塊である。


「は、はぁ……どうやら本物のようですが、私は素人なのでよくわかりません。鑑定班に出させて貰って、正式に鑑定させて頂きます」


 受付嬢はそう言って、ギルドの裏方に素材を回す。受付嬢は素材鑑定に関しては素人な為、専用の鑑定士が存在していた。鑑定や査定はその鑑定士が行うのである。受付嬢はあくまでも応対と事務処理係である。万能になんでもこなすわけではない。


「しばらくお待ちください」


 こうして俺達は鑑定結果を待つ事になるのであった。


 ◇


「お待たせしました!」


 受付嬢が戻ってくる。


「鑑定結果が出ました。この素材は本物のメタルキングスライムのものです。本当にメタルキングスライムを倒されたんですね。俄かには信じられませんが、こう物証があるのです。信じざるを得ない事です」


 受付嬢は事実を突きつけられ、認めざるを得ない様子であった。


「これは恐るべきルーキー冒険者パーティーが誕生しましたね。この素材はどうされますか? 換金されれば金貨300枚にはなると鑑定士はおっしゃっています」


「金貨300枚ですか! すごいです! ルイド様! それだけお金があれば装備が色々拡充できますよ!」


 エアリスは喜んでいた。


「あるいはこの素材を鍛冶師に鍛錬してもらう事で、強力な武器や防具を作る事もできます。どちらにされますか?」


「どうします? ルイド様?」


「ふーむ」


 換金して装備を整えれば、装備一式としては整う事であろう。だが、中途半端な装備よりも一振りの強力な武器や防具の方が最終的には重宝する事が多い。

 

 短期的に考えれば装備や道具などの拡充をした方が成果は出やすいが。長期的に考えれば後者であるだろう。


 俺は考えた末に後者を選択した。


「よし。じゃあ、この素材を持ち帰ろう。後で鍛冶師に武器か防具にしてもらうんだ」


 勇者パーティーを出た時、金銭類を一切持たずに出てきてしまった。故に俺はすっかんぴんだ。エアリスの手持ちも途中確認したが、それほど多くない。

 

 鍛冶には鍛冶師料が必要だ。素材があるとはいえ、それなりの資金を必要とした。


「それがいいですね。私の剣ももうボロボロですから」


 エアリスは今まで使ってきた剣を指す。


 そうか。ドラゴン相手に闘い、そしてメタルキングスライムを斬ったこの剣はボロボロなのだ。辛うじて剣の型を留めてこそいるが、いつ折れてしまっても不思議ではなかった。


「そうだな。だったら剣を鍛造してもらおうか」


「ありがとうございます、ルイド様。そうして頂けると嬉しいです」


 用事が済んだ俺達は冒険者ギルドから帰ろうとした、その時の事であった。


「えっ!? それは本当ですか!?」


 受付嬢は大慌てをしていた。


「どうかしたのですか? 受付嬢さん?」


「た、大変な事が起こったんです!」


「大変な事?」


「は、はい! なんでもあの竜王と言われる凶悪なモンスター、バハムートがこちらの方面に襲い掛かってきているみたいなんです!」


 受付嬢は心痛な表情で俺達に告げてきた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

S級付与魔術師【エンチャンター】勇者パーティーを追放される。あれ? 俺がいなくなると武器も防具も全部ダメになるって言ったよね? 俺は新しいパーティーで必要とされてるから、君は自力でがんばってくれ つくも @gekigannga2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ