第15話 感動の再会?


 村に着くと巫女達はそれぞれ自分の部屋でゆっくりする。若葉も同じくゆっくりするように詩織に言われたのでゆっくりする。この後の巫女会議は巫女達が今いる今回の巫女会議の為に作られた建物の一階で行われる予定となっている。そして二階が若葉みたいに勇者の為の個室、三階が巫女達の個室となっていた。大浴場は一階に一応用意したが各部屋にもお風呂を用意している。本当は予算的にお風呂を一つにしたかった未來だったが村が滅ぶかもしれない状況で助けに来てもらった巫女に窮屈な思いをさせるのは申し訳なく思い急遽二階と三階の部屋全てに付ける事にした。もし今回村が無事に危機を回避出来ればこれからの巫女会議の時にも使えるのでそれはそれで将来的に考えれば安い物となっていた。ちなみに瞳の村から十キロから十五キロ以内に全ての村は隣接しており、瞳の村が守護者の手に落ちれば、全ての村が襲撃されるリスクが一気に高まる事は必然となっている、全ての巫女にとって瞳の村は最終防衛拠点ともなっている。だから巫女会議で村が手薄な時に何かあってもいいように会議は毎度瞳の村で行う事としている。龍脈の力を使い高速移動をすれば全ての村に十分以内にはいける。それだけの時間なら各村の結解と勇者達でカバーが出来る仕組みになっている。


 未來と詩織は巫女の会議部屋となる一階の建物のロビーにいる。


「心配してたけど結解の強度を落として大分顔色が良くなったみたいね」


「うん。皆が来てくれるって聞いて結解の強度を落としたの」


 いつもの元気な未來の笑顔に詩織が安堵する。


「ところで詩織……影は今どこにいるの?」


 未來はずっと疑問であった事を聞く。この村に来ていない事は薄々分かっている。だからこそ全てが終わったら会いに行こうと思っていた。そんな未來の気持ちを察し、詩織は正直に言う事にする。


「今日の巫女会議の時にまず最初に影の事を全て話す予定よ。そう影が今まで巫女に秘密にしてた事も含めて」


「なら影が今どこにいるかも知ってるの?」


「うん」


 未來はとりあえず安心する。詩織の顔から見るに特に心配する必要がない事が分かったからだ。すると有香とまい、えりかが未來と詩織の元に来る。


「詩織もし良かったら今教えてくれないかしら?」


 えりかが詩織の目を見て言う。


「それは……」


 詩織は今真実を言うべきなのか後で言うべきなのか迷った。影にも心の準備が必要だと思ったがそんな迷いとは裏腹にえりかが更にお願いしてくる。


「詩織お願い……」


「分かったわ」


 影の行方が分からなくなって心配していたのは二人だけではない。本来巫女は一人につき一人から二人の転生者を召喚し使役する。しかしここにいる五人は影を転生者と召喚しただけでもう一人転生者を召喚する事はなかった。転生者を側におく理由は自身の保身がどの巫女にとっても重要となる為だ。だから絶対に裏切れないように転生者に呪いをかけて自身の身を守らせる事が時代の風潮となっていた。しかし五人は影を召喚しそれをしなかった。何故か分からないが五人の女の勘的なものが絶対にこの転生者は自分達を裏切らないし守ってくれると言う確信が命を助けて貰った時にあった。だから呪いはかけないことで一致した。勿論呪いをかけてもその効力も絶対ではないってのもあっての事でもある。この世に絶対は存在しない。


 呪いをかけなかったが詩織はその勘が間違っていなかった事を知っている。そして今も裏では頑張ってくれている事を知っている。だから話す覚悟を決める。すると詩織の巫女装束に隠れていたハムスターが袖から出てくる。そして四人の巫女が口元を手で隠し信じられないと言った表情をする。本音として四人共影は詩織に事のを伝えると同時に姿をくらますだろうと思っていた。だからこそ今この場に姿を現した影に驚きを隠せなかった。


「巫女様達お久しぶりです」


 その声と同時にハムスターは人の姿になる。


「影……会いたかった」


 まず口を開いたのは未來だった。するといきなり立ちあがり影に抱き着いてくる。影は未來を受け止める。そして近くにあるソファーに座る。すると詩織の顔が不機嫌になる。


「本当に影なの?」


 えりかが信じられないと言った感じで聞いてくる。

 その綺麗な瞳に薄っすらと涙を浮かべて影をじっと見ている。


「はい」


「良かった……生きてて良かった」


 えりかは安心したのか我慢していた涙を零す。

 安堵したのか影の隣に来て顔を触り手で触れ本物の影か確認する。


「本当に影だ」


 更に有香とまいも口を開く。


「影今までどこにいたの?」


「心配してたのよ。もう私達の前からいなくならないでね」


 影は立っている二人に視線を動かす。


「皆さんに心配をかけて申し訳ありませんでした。瞳の村を出てからは祈りの村で詩織にお世話になっていました」


 影の言葉を聞き、有香とまいが詩織が腰かけているソファーの両サイドに逃げ道をなくすように座り鋭い視線を向ける。そして影に抱き着いていた未來と顔を触って本物か確認しているえりかも詩織を見る。その四人の目は詩織に対して何か共通の感情を抱いていた物であった。


「詩織? これはどうゆう事?」


 影は初めて聞く未來の低い声に驚いたが顔には出さず静かにこれから始まるであろう巫女同士の話しを聞くことにする。いくら最強の転生者と言え怒った女の子には勝てる気はしない。


「え? だって嘘はついてない……」


 詩織の言葉をえりかが遮る。


「詩織……確か影からの伝言だからって言って私達を招集したわよね?」


 えりかが詩織を問い詰める。

 童顔で可愛い顔をしているえりかが未來同様に怒っている。


「私もそう聞きました」


「私も。影は瞳の村には来ないと聞いたけど?」


 有香とまいも詩織を問い詰める。

 詩織が影を見て助けてと目で訴えてくる。

 流石にここで誤魔化してもバレた時が怖いので影は静かに頷く。


「全部話していいよ」


 影から許可を得た詩織が笑顔になる。詩織は笑顔になるが残りの四人の巫女は初めて聞く影の優しい声と口調に驚きを隠せなかった。未來以外の巫女には必ず名前にさん付けで呼ぶ影が呼び捨てで呼ぶことにもビックリしていた。


 そんな四人をお構いなしに詩織は自慢話しをするかのように昨日の夜影と会ってからここに来るまでの全てを話しだす。未來とえりかは影の腕にしがみ付き詩織の話しが進む度に徐々に腕を掴む手に力を込めていく。有香とまいは詩織に身体を向け真剣に聞いている。影はとりあえず動けないのでじっとして詩織の話しを聞いている。



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