第14話 強力な援軍


この時、五人の耳に直接聞こえた二人の言葉は何処か聞き覚えのある声だった。

五人が結解の維持に全力で務めながらも口は動かさずに首だけを動かす。


 すると上空から凄い勢いで近づいてくる巨大な力の存在に気づく。火球の爆発と同時に五人が維持していた結解の強度が一瞬で数十倍に強化され五人を爆発と爆風から守る。


「貴女達大丈夫ですか?」


 五人が後ろを振り返ると未來が立っていた。


「貴女達が危険な状況だと七瀬が教えてくれました。そして私をここまで案内してもらいましたがどうやら間に合ったみたいですね」


「…………」


 五人がお互いの顔を見合わせて奇跡が起きたかのように唖然としていると別の方向からも声が聞こえる。


「スペルヘルファイア」


「スペル感電」


 鷹がいきなり感電し動きを止めると同時に深紅の炎が鷹を一瞬で燃やし尽くす。

 そして上空から巫女装束の二人の女の子から降りてくる。


「二人共ありがとう。流石、とまいね」


 有香とまいは別の村の巫女である。二人共自分達が村からいなくなれば戦力的にキツイので護衛を付けずに一人でやって来た。向かう途中巫女同士が通信手段の一つにしている意識共有により勇者のピンチを聞きつけここまでやって来た。


「これくらい大したことないわ」


「礼には及ばないわ」


 空から突如現れた二人の巫女、有香とまいは当然と言った感じの態度をとる。

 そして未來の前まで移動する。


 勇者の五人は本当に何が起きたかが分からず唖然としたままでいると突然雛達が戦っている方角に雲一つない空から突如雨雲が出現し上空で飛行する鷹に向かい落雷が三発落ちる。目を点にして何が起きたかの確認をしていると巫女装束の二人と一緒に奈緒と雛達がこちらに向かって歩いてくる。


「えりかと詩織もありがとう」


 えりかは癒しの村の巫女である。そして詩織は祈りの村の巫女で唯一今回護衛の勇者を一人連れてきていた。祈りの村は影が詩織に同伴してくれる事になったので勇者を連れて行かなくてもいいと行く前に考えなおしたがそこに問題が生じた。それは影の食料問題だ。そこで護衛ではなく影の食糧問題を解決する為に若葉を連れてきた。影は道中若葉が作ったおにぎり五人分をお腹いっぱいに一人で食べ満腹になったのでハムスターの姿になり今は詩織の巫女装束の中で熟睡している。ちなみに影がこの場にいる事は詩織以外誰も知らない。龍脈の力を完全に抑えているので巫女の探知でも分からない。


「私は何もしてない。えりかが鷹相手に容赦なく雷をお見舞いしただけよ」


「何よ。未來の頼みで勇者を助けてあげたのに何で詩織に嫌味言われないといけないのよ」


「まぁまぁ二人共落ち着いて」


 未來が喧嘩する二人の仲裁に入る。


「とりあえず皆まずは案内するわ。若葉さんも詩織と一緒に付いて行ってくれれば個室を用意していますのでゆっくりできますよ」


 未來の言葉に若葉が頭を下げてお礼を言う。


「ありがとうございます」


「では雛達悪いけど助けて貰った恩もあるだろうから案内と巫女会議の十八時までは村の周辺の警戒とお世話お願いしますね」


 未來の言葉に全員が頭を下げる。


「かしこまりました」


 雛が勇者を代表して巫女である四人にまず先ほど助けて貰ったお礼を言いそれから挨拶をする。すみれ、ゆり、紅、綾香がそれぞれの村の巫女と若葉のお世話係に任命し、残りの六人で傷の手当てと村の警戒任務を交代制で行うように指示する。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る