第13話 神の審判
話をしよう。あれは今から30万……いや、1万4000年前だったか。まぁいい。
私にとってはつい昨日の出来事だが……君達にとっては、多分明日の出来事だ。
彼には77通りの名前があるから、なんて呼べばいいのか……。
確か、最初に会った時は
そう。あいつは最初から部屋の外に出てこようとしなかった。
私の言うとおりにしていればバルサンを炊かれなかったのに。
まあ……痛い奴だったよ。
「どうしましまたか? 呆けてる場合ではありませんよ。さぁ貴方様、説明してもらいましょうか。釈明してもらいましょうか。弁明してもらいましょうか。この状況を、私が納得するように、ついうっかりこの手を汚すようなことにならないように、私の晩節を汚さぬように、一語一句細心の注意を払って、心を砕いて、微に入り細を穿って、発言なさい。甘言と換言を繰り返すのならば、貴方様でも
何故こうなったんだ――
突如現れたアマテラスの正面で、俺と卑弥呼は正座をさせられていた。
太陽神なのにその瞳は凍りついているのだが。氷河期の到来か。
「あの、アマテラス様。発言よろしいでしょうか」
「どうぞ被告人」
「被告人て……あの、アマテラス様は大きな誤解をされております。決して私はアマテラス様がお考えのような不埒な真似など行っておりません。これでも清い体を守りぬいているんですよ。このままでは埒が明きません」
「そうだぞ。俺と卑弥呼はそんな間柄じゃねえよ。お互いつっこみ合ってるだけの関係だ」
「あら、私が不埒で淫売な女だと言いたいのですか? ああ……なんということでしょう。これではうっかり死刑判決を出してしまいそうです。それにつっ込み合ってるなんて……。まさかとっくにお尻まで開発済みだなんてそっちの方が卑猥です」
「あのなあ、俺にその気はねえって。一から説明するからちゃんと聞けよ? あれはな―――」
「卑弥呼様。仕事終わりましたのでお先に失礼します」
「はいお疲れ様です」
「お疲れサマンサ」
「古っ。第三世代くらいの古さですね。死語ですよ」
「死語の死後はどうなるんだろな。転生して復活するとか。ゲッツみたいに」
「転生というかゾンビといいますか、判断は難しいところですね。あ、そこ間違えていますよ」
「
「それこそ高位の神が発する言葉は、それ自体が神託になるわけですからね。最高裁の判決並に重いですが、ラッパ吹いて終わらせちゃうような軽い奴もいるので、究極的には軽いのかもしれません。それに人間でもそこに悪意が込められていれば、よっぽど凶器になりますよ。下手なナイフより切れ味がありますから。さあ私達も終わりにしましょうか」
「そうだな。その前にお茶を一杯もらおうか。この職場は乾燥が酷いから喉が渇いてしょうがねえよ」
「いい加減加湿器が必要ですね。確か冷蔵庫に頂き物のジュースがありますよ」
「どれどれ……お、あったあった。ほれっ」
「ありがとうございます。んく、んく――」
「ブーーーーっ! これ酒じゃねえか! しかもめっちゃ度が強い。こんなベタな間違いしたのはガキの頃にコーラとそばつゆ間違えたとき以来だぞ。あ、わかっちゃいるだろが卑弥呼は飲むな、よ……」
「んあ?」
「…………」
(やっべ。酒飲ましちゃいけないんだった。さっさと帰るに限るな)
『帰るな』
「な、なんだ? 身動きがとれないぞ」
「テメエよぉ……人のことさんざん馬鹿にしてくれたよなあ。ならお前が相手してくれよ」
あ、あかん。すっかり目がお据わりになられ遊ばれてる。
『脱げ』
「ちょ、待て待て! 俺なんで服脱いでるんだよ。なんで自ら率先してパンイチになってるんだよ。え? どうなってるの? 令呪ですか? 貞操の危機ですか?」
「珍しく焦ってるじゃねえか。それじゃあいっちょ………」
『ヤらないか』
「ぐわあーー!こんな名台詞で脱童貞したくないわ! 誰か助けてくれー!」
「ふふふ。拒んでも体は正直よな。ほれヤるぞ」
『ツイスターゲーム』
「なるほどなるほど。お酒の勢いに任せてツイスターゲームをしていたところに妾がやって来たというわけですか」
「そうなんです。決してこんなクズニートと関係を持とうなど思っていませんので、天地神明に誓って思ってませんので、どうぞ御寛大な判決を望みます!」
「誓ってる相手に疑われてるんですけどね、あなた方は。まあ今回は不問といたしましょう。ただし! お酒の類いは金輪際禁止とさせていただきます。神の力の悪用を赦す訳にはいきませんからね」
「じゃあ俺も許してもらえるのか?」
「そうですね……妾の言うことを聞いて頂けるのなら」
「なんだ?」
『ヤらないか』
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