第12話 バルサンの代償
「あらあらサブちゃん何でしょうか」
「アマテラス様からお手紙を預かっております。クズニートにお渡しくださいとのことです」
手渡されたのは、やたらファンシーな柄の封筒だった。ピンクピンクしているが、私の知っているアマテラス様の趣味とは違うような。
「アマテラス様からですか。あのお方から直接の手紙なんて、アイツなにかやらかしたんですかね。依頼は成功したと聞いてるんですが」
「まいどー」
「卑弥呼様。誰からのお手紙ですか?」
「アマテラス様からのようですが、宛先があのニートになってるんですよ。もしやクレームではないかと疑ってるんですが、あのバカなら神相手でも強制猥褻罪とか青少年育成条例違反とかで捕まりそうですからね。存在が猥褻物だからしょうがないですけども」
「とりあえず、手紙の内容を確認してみましょうよ」
「ルネ。あなたどんどん図々しくなっていきますね。ほら、見てください。親展と書いてあるでしょう。これは本人でないと開けてはならない決まりなんです。神だけに神展ですかね。もし他人が開けでもしたら……」
「えい」
あ、こいつ若手芸人くらいのノリで開けやがった。
ビリっ――
気軽に破いた封筒からは、目も眩むほどの閃光が洩れだし――
「フリじゃないんですけど、あなたどんどん物怖じしない性格になっていきますね」
「目がああ! 卑弥呼様! 目がああ!」
「ほら言わんこっちゃない。やはり勝手に開けた者に
「あのっ、卑弥呼様助けてください。目が見えないんですけど」
「はあ、やはり変態がいないと会話が盛り上がらないですね。大丈夫ですよ。あと一時間もすれば視力は戻りますから」
「そんなにかかるんですか? うう……勝手に開けなければ良かった」
「少しは反省なさい。後先考えないとニートになっちゃいますからね。いや考えてないからなったのか。さてさてせっかく尊い犠牲で開けられた手紙ですからね。私が拝読せねばならぬでしょう」
「あっ、ずっちいなー卑弥呼様」
「えー拝啓 私のバルサン王子様……。ご機嫌いかがでしょうか。あなたが私の部屋にバルサンを炊いて以来、バルサンの煙が私の心に燻り続けているのです。何故でしょうか。貴方の事を想うと苦しくて苦しくて……私の心の何かが、外に出ようともがき苦しんでいます。今もバルサンを炊いて心を落ち着かせているところです。父上は、あれからずっと怒り狂っているのですが、私の気持ちを正直に話すと真っ白になってしまいました。まるでバルサンの煙を全身に浴びてしまったかのようです。こんな気持ちになったのは生まれて始めてで戸惑っているのですが、とにかく、責任を取ってくださいね。近いうちに、貴方のアマテラスが会いに行きます」
P.S~貴方は大事なものを奪っていきました。私の心です。
「なんですかこのバルサンの手紙は。バルサンに頭やられちゃった人なんですかね。それにこんなバカな心の盗まれ方ありますか。ジブリに今すぐ謝罪しなさい。ほんとどこのバカですか。あ、アマテラス様でしたね」
「よー卑弥呼様。なに読んでるんだ?」
「お前がバルサンを炊いたせいでバカな神が一柱誕生したって手紙読んでんだよ。ああ……イザナギ様になんて釈明すれば……」
「本当にどうしてくれる。お前が帰ってから、すっと我が家はバルサンを炊かれてるんだぞ。お前のせいで太陽神がバルサン神にジョブチェンジしてしまったではないか」
「げっ! イザナギ様、いつの間に」
「八百万の神とはいえ、そんなニッチな神もいないよな。でもまあ自宅は害虫から守られて良いことじゃねえか。悪い虫も寄り付かねえだろ」
「改めてぶっ殺す」
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