第3話急用ができ、帰宅すると

放課後になり、住んでいるマンションから近い位置に建つ喫茶店へと足を運ぶことにした。

いりくんだ路地に建つ行き付けの喫茶店『甘香処』は、木造でひっそりとやっており、客層は高めなので街中のカフェや喫茶店よりかは幾分も寛げる。

そういった落ち着く雰囲気が性にあい、何かしらあると主人マスターに相談に乗ってもらっているうちに行き付けの喫茶店になった。


テーブルを挟み、向かいあい座る制服を着た女子──藍沢美緒は、ブラックのコーヒーを啜りながら俺の話に相槌をうっていた。

「──って感じなんだけど......」

「ふんふん、それはだねぇ~」

身体をのりだし、顔を近付けてきた彼女。

「「......」」

沈黙が30秒ほど続き、

「って、もったいぶらずにっ!それはなんだよ」

と、たえきれずに先を促した。

「彼女の心境が変化したってことだよ、翔ぅっ!本音ってこと。認められてるってことだよ、彼女に」

「ええー、あいつがか?」

「そうだって!翔の努力の賜物がそうさせたんだよ、良かったじゃん」

と、まるで自身のことのように笑いながら、言う彼女。

そんな彼女と親友になれたことが一つの誇りとなっている。

周りの女子達は、としての神影翔としか見ておらず、として接してくれるのは彼女──藍沢美緒だけだった。


高校の入学式に話し掛けられ、高校生活初日から仲良くしてくれた数少ない友達──親友が藍沢美緒だ。


その後、彼女と他愛ない会話を交わしているとスマホが震え、一件のメールが受信された。

「美緒、ごめんっ!帰んないといけなくなったから、また今度ゆっくりしよっ」

「えっ?そうなんだ、じゃあバイバ~イ、翔」

彼女の分も会計を済ませ、喫茶店を後にした。


帰宅し、荒い息のままでドアノブを掴み、入ると頬を膨らませた姉が姿を現した。

下着のブラが透けた薄い白地のシャツを着ただけの格好の姉だった。

「何でも良いから下をどうにかしてよ、姉ちゃ......姉貴」

「私に欲情何かしてぇ~」

にやけながらそんなことを口にする姉だが、女子中高生から人気な読者モデルである。

「してねぇっ!早く着てって!」

色気を漂わせる姉なのだ、男子なら視線を向けてしまうのは自然なことだ。

それを理解しながら、誘惑してからかうのだ。

「急かさないでよぅ~るんちゃん~」

と、楽しそうな姉だった。






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