8章 新たなる拾得者

再び地下へと戻った二人は、別の水路から先程の流れの先を目指す。

水の流れをたどり、水路の脇道を歩いて行く。

そうして30分ほど過ぎた頃だろうか。

ジャネットは何やら気になる音を耳にした。

「ジャネットセンサーに反応あり」

「え?」

バシャバシャと、

何者かが水の中を歩いてくる様な音。

「何者かが近づいてきます」

静かにそう言うと、サッと壁際に身を寄せ背中を貼り付けにする。

エリオノーラも異貌化し、見様見真似で壁に貼り付く。

魔法の明かりを灯した杖をマントの内側に隠すことも忘れない。


やがて音は止み、二足歩行のトカゲのような者たちが姿を現した。

二人に気づいたのだろう。

立ち止まり体制を整える。

どうやら後ろに控える少し大柄のヤツが指示を出しているようだ。

何事かを話している声が届く。

「これは、汎用蛮族語ね」

小さくエリオノーラが耳打ちする。

「早く殺せだって」

よく見ると、前のトカゲたちは全身に斬り裂かれたような跡があり、血も流している。

後ろに控えるそれが握りしめるのは件の魔剣の様にも見える。


そこからの動きは素早かった。

エリオノーラが的確に魔物の正体を見抜く。

前を歩く五体はレブナントと化したリザードマンたち。

そして後ろは魔剣を握りしめたそのボスだ。

流れる手際でバークメイルを飛ばし、

ジャネットは誰よりも早く、戦場を構築する。

「今度こそ!!」

クリティカルレイの輝きが彼女の剣を包み込む。

必殺の一撃が決まる!

「手応えあり!!!」

だが不死者と化した蛮族の生命力は想像を遥かに超える。

鋭く決まった二撃目を受けてもまだ、その動きを止めることはない。

「残りましたね…」

その戦いの脇をすり抜け、エリオノーラのストーンブラストが飛ぶ!

石の嵐は的確にボスを狙うも、まだまだ倒すには至らない。

「結構強敵かも。ジャネット、そっちは任せたわ。気をつけて!」

後ろから檄も飛ばす。

『何だコイツラのこの、でたらめな強さは』

思わず愚痴るボストカゲ。

「はあ!?ジャネットと私は最強のコンビなんだから!」

『かかれ』

その合図で五体はまとめてジャネットへと襲いかかる。

勢いよく振り回された尻尾は脚、腕、腹へと三発。

『トドメだ!』

それを見て好機と思ったのか、ボスも飛び出してジャネットへと魔剣を振り下ろす。

「ぐっ」

それもまともに喰らい、苦しそうな表情を浮かべるジャネット。

禍々しく輝く魔剣を見つめ苦悶の表情を滲ませる。

「いたたた」

「まーた怪我してるじゃない!」

そう言うとエリオノーラは賦術でヒールスプレーを吹きかける。

さらに、

「傷付きし魂へと生命の光を灯すため、救いの手を…アドバンスヒーリング!」

見る間にジャネットの傷はふさがって行く。

「真、第四階位の攻。閃光、電撃…稲妻」

ジャネットの剣の先から出た雷が戦場を駆け抜ける。

巻き込まれた死に体の不死者は黒く焼け落ちたが、

ボスには手傷を追わせた程度。

「こちらが本命」

クリティカルレイの光を纏ったジャネットの必殺の一撃が、ボスの身体に傷をつける。

「くっ、浅い」

「ちょーっと不味い、かな」

これには流石にエリオノーラも後ろでごちる。


対するボスの流れるような動き。

魔剣の一撃は的確にジャネットの脇腹を捉え手痛い一撃を加える。

更に魔法の礫をエリオノーラめがけて放つ。

不死のトカゲたちは変わらずジャネットへと襲いかかる。

その殆どを喰らいつつもかろうじて、致命傷だけは避けることが出来た。

『こいつ、しぶといな』

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