7章 消えた魔剣

その後、ジャネットの魔法と剣戟のコンビネーション、そしてエリオノーラの放った石つぶてが男の体力を削り尽くす。

直後、男の体は前のめりに倒れ込み、半身を水の中へと沈める。

「ハァハァハァ…流石エリオノーラさんです」

「もう!そんなことより怪我してるじゃないジャネット!」

と、駆け寄ってくる。

「この程度の傷、怪我には入りません。それよりもこの男が犯人…」

「大怪我しといて何いってるの。犯人かどうかは置いといてあなたの手当が先よ」

手のひらに作り出した癒やしの水をジャネットの口へと含ませる。

見る間にジャネットの傷は癒えてゆく。

見えない妖精の不思議な力に、ジャネットは相変わらず首を傾げる。

「とりあえず、傷は癒えたかな。光の妖精さん、ありがとう」

「また独り言…」

虚空を見つめるエリオノーラを眺める。

と、その脇で先程倒した男がぷかぷかと流れてゆく。

「あ、待ってください!!!」

慌てて立ち上がり、後を追いかける。

「流れちゃう〜ストップ!ストーーーップ!!!」

ジャネットが男に駆け寄りそれ脇へとを引き寄せる。

不思議なことに、男の体は先程と比べ明らかにやせ細っており、まるで棒切れのようだ。

「この魔剣の男、さっきより痩せてますね…」

死体を見つめながら、追いついてきたエレオノーラに話しかける。

「え?そうなの?言われてみればそんな気も…魔剣のせい?」

「魔剣に操られていたのかも知れないですね」

「ってあれ?魔剣は??」

「そんなのこの男が…あれ??」

きょろきょろと周りを見回すも、魔剣は見当たらない。

「あ、もしかして」

ジャネットが水路の先を指出す。

そこには、水路の水が流れ込む支流とも言うべき小さな闇が口を開けている。

「水はあそこに流れているみたいですね。この先は確か…」

「別の通路からも回れたはずね」

「わたしもそう言おうと思ってました。記憶力バツグンなので」

「はいはい」

「急がば回れですよ」

「そうね。一度外へ出て、この人を衛視隊に引き渡してから行きましょう」

二人は男の死体を水から引き上げ、担ぎ、地上へと戻る。


幸いにも衛視たちはすぐに見つかり、男を引き渡すことが出来た。

日はすでに大きく傾いている。

「突然この方が水路で襲ってきて…」

「ジャネットセンサーでバッチリ見つけました」

「今回の事件と、関係があると思います。遺体ではありますが、身柄の確保をお願いします」

「ジャネットアイで確認しております」

「何とかアイはいいから先を急ぐわよ!」

妙なポーズを決めるジャネットの服の裾を引っ張る。

「私たちは急ぐので、あ、身元はグレイソンさんに聞いてください!じゃ!」

言い残し、二人は衛視の元を後にした。

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