第48話 帰還
国に帰ってくると、国民から盛大に迎えられた。6日間続いた嵐がぴたりと止んだことで、人々は終末を回避できたことを悟り、歓喜のフラワーシャワーを帰還した彼らに送る。
重症のケイス以外は王宮に呼ばれ、王から称賛と感謝の言葉を賜る。国内の被害も最小限に抑えられ、今は復旧作業に取り掛かっていた。
落ち着いたら盛大な式典を執り行うと提案されたが、直人は断った。コミュ障MAXな自分が人前に立つなど、想像しただけで倒れそうだった。
なので、簡略的なパーティーを催し、騎士やみんなと大いに飲み食いした。
嵐による被害から立て直し、国の経済状況が戻ってくると、直人は頻繁に王宮へ通うようになった。王と雑談した後、秘石室に向かい、日を跨いで何度か『スキル』の調整した。
「えっーと、それで『例のもの』はどうでしたか?まだ、調整しますか?」
直人はジュリアスに訊ねる。肘掛けに凭れたジュリアスは閉じていた目を開いて、高揚した。
「いや、良かったぞ!今回ので大いに満足したっ!」
ご満悦のジュリアス。『例のもの』とは『男根肥大化スキル』の事である。有言通りにプログラムしてみたが、ジュリアスの注文が細かくて何度も微調整していた。世界を改変した後でイチモツの調整って、仕事の落差があり過ぎじゃないか?
「いやぁ、エリーゼがあんなに愛らしく喘いでくれるとは思わなかったなぁ~」
「あの!王様!詳細は聞きたくないですから!止めてください!」
「ああ、すまない。惚気たくて仕方ないのだ」
リア充自慢かよっ!
仲良し夫婦でようごさんしたねっ!
「あの、断っておいたように、あまり公に触れ回らないで下さいね」
「分かっておる。口伝で秘かに広めてゆこう」
このスキルは国の秘石に刻んでおいた。つまり、男性国民なら誰でも使えるスキルなのだ。名前は元の世界にいた時に見た、そういうサプリメントの名称にした。
そして、直人は知らないままであったが、このスキルはあっという間に男達に広まり、その年の出生率に影響したとかしてないとか……。
「ナオトも自分で感触を確かめたら良いではないか?」
「ええっ?俺は遠慮しますよ。ソロプレイなんて虚しいですし、相手もいませんし……」
「そなたが気付いていないだけで、そなたに想いを寄せている者は多いと思うぞ……」
直人が首を傾げていると、アリアスが咳払いをした。刺すように睨まれてジュリアスは縮こまる。
「何にしても礼を言う。スキルの事もそうだが、この世界を救ってくれたことにもな……」
ついでみたいな言い方で変な感じだが、ジュリアスの言葉は真剣なものだ。
「王様、俺は世界を救ってなんかいません。『仕事』をしただけですよ……」
誇らしげに笑う直人の顔を見て、ジュリアスも微笑んだ。いつも、伏し目がちで自信のない男の面影はどこにもなかった。
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