第42話 決戦

 赤竜の姿を認めて、ケイスは振り返りクロエに視線を送る。赤竜はケイス一人に任せて、騎士と直人達は先へ進む。最凶最悪の竜に立ちはだかるケイスに直人は声をかける。


「ケイス!今のあんたは『最強の勇者』だ!俺が保証する!」


 ケイスは眉を上げて驚いた。直人が『強い言葉』を使って自分を鼓舞したことにだ。だが、ケイスと『己』の事を信じているからこその言葉だろう。


「無論だっ!その期待に答えて俺があの赤竜を引き受けようっ!」


 聖剣・デュランダルを抜刀し、胸元に掲げて聖なる光を放つ。赤竜の気をこちらに向けるためだ。


「今こそ!勇者ケイスと聖剣デュランダルはかつての『伝説』を越える!


挑むは『滅びの赤竜』!

全身全霊全を持って!必ず討ち取ってみせる!」


 ケイスは傾斜を駆け下りて赤竜に挑む。吐き出された火の玉を避けて、宙へ跳ぶケイス。空中にいるケイスに赤竜は火炎を吐き出したが、ケイスは、赤竜の頭部へ斬撃を叩き付ける。

 赤竜の鱗が破られ赤い鮮血が流れた。ケイスはそのまま赤竜の上部を通り過ぎ、地面に着地する。


 彼は三回『空中』を蹴っていた。








 硬質の岩で聖剣の威力のテストを重ねていたケイスと直人。分厚い岩を真っ二つに割れるようになったが、まだ課題が残っていた。


『空を飛ぶ竜を相手に遠距離攻撃だけでは限界があるな』


『確かにな。デュランダルの斬撃の威力を上げても、届くまでには落ちてるかもな。となると、空を飛ぶプログラムを組むのか……。ん~、飛行できる魔獣のコードが見れれば『浮遊』が可能かもだけど』


 直人は頭を抱える。一番の強敵は『赤竜』だ。硬質の鱗を破壊するための聖剣のレベルアップはしたが、空中バトルへの対策が問題だった。


『待てよ、『空中ジャンプ』ならプログラムできるかもしれない…』


『空中ジャンプとは何だぁ!』


『1度地面を蹴って、もう一度空中で蹴ることだ。これなら、対空戦もいけるかもしれない!』


 ゲーム会社に入社した頃に担当した空中ジャンプのプログラム。まだやる気に満ち溢れていた直人にとっては思い入れがあり、今もそのコードを覚えている。


『ああ、でもそれをケイスがすぐに使いこなせるかは分かんないかも……体に負担がかかる可能性だってあるし……』


『案ずるな、ナオト!どんなスキルだろうが使いこなしてみせる!お前が考えうる最高の『プログラム』を組んでくれ!』


『そうだな!俺達で作り上げてやろうぜ!

をな!』







 ケイスは空中を蹴って赤竜に急接近する。赤竜の尾や腹を斬ってすぐに地面へ向かう。この空中ジャンプには『回数制限』があるため、三回跳んだら一度地面に足を着けないといけない。それを念頭に起きながら赤竜に斬りかかる。

 この2週間、体に染み付かせて『技』として慣らしたが、やはり『回数』『距離』『攻撃のタイミング』を並列思考して戦うのは難易度が高い。


「やはり、実戦だと扱いが難しいな……だがっ!戦えるぞっ!」


 一月前とは違い赤竜を翻弄し、斬撃も傷として残っている。『攻めれる』事が何よりの成果。少しでも長くこの赤竜を引き付けなくてはならない。


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