Program 05
第21話 書き換え
モニカと分担して秘石を写す。魔王のコードの分析は後回しにして、全て写し終えた。念のために全部の秘石をざっと確認する事にした。伝記に残されていた事実とシナリオコードが合っているかを一つ一つ確認していく。王立図書館の書籍は持ち出し禁止のため、その都度リナに詳細な内容を読み上げてもらった。こういう時に記憶力のいい人がいると助かる。
概ね一致するのを確かめつつ、直人はお目当ての物を見付ける。
「おお!あったあった!これだ!」
そこには『guard monster action』と書かれている。敵の行動を記したコードだ。これさえ書き換えれば敵キャラの行動を操れる。
「モニカ、ここに来てくれ!この行を消して欲しいんだ」
「何なんです?これは」
「魔獣の行動を示す秘石さ。Patrol【
決められた範囲を『
「だから、この『Attack』の文字を消してしまえば、攻撃されずに戻れるってこと! 」
「はぁ……」
3人は直人の言葉の意味が完全には理解できない。
enum AIState
{
Patrol,Attack,Death
}
の内、『Attack』のスペルに線を引き『
秘石室を出て、来た順路を戻る直人達。広間へ続く階段を上がり城を出る手前で、巡回していたミノタウロスがギロリとこちらを向いた。
すぐにケイスが剣を抜いて直人の前へ駆け出そうとしたが、直人がそれを止める。
「大丈夫、
直人の自信が信じられず、ケイスは柄を握りしめ足に力を込めていた。だが、ミノタウルスは直人の言う通り視線を反らし、通り過ぎてしまった。
「ほらな!他の敵キャラも同じだと思うぜ。さあ、馬車の所まで戻ろう」
平然とした様子でミノタウロスの横を通り抜ける直人。ケイス達はその後ろ姿を崇拝にも近い眼差しを向ける。彼はこの世界を司る秘密を知っているのではないか?
馬車で一日かけて山の麓まで辿り着き、さらに一日かけて旧魔王城から一番近い村に到着した。その間、直人は『魔王のコード』を読み解いていた。秘石には『durandal』の文字が書いてあった。魔王のコード以外にも記述があったので、これは大きな収穫だった。ミノタウロスなどの中級魔獣を退ける効果も聖剣には盛り込まれてるから、それも念頭に置いてピースを埋めていく。
タルコル村の村長宅に泊まらせてもらい、二階の部屋でコードを見ていると、日課を終えたケイスが部屋に戻ってきた。
「ナオト、まだ起きていたのか!」
「ああ、まだチェックしたい所があるからな。明るいと眠れないか?」
「気遣い無用だ!俺はお天道が射す中でも眠れるぞ」
「羨ましい。俺は神経質だから明るいと眠れないんだよな」
「寝る前に走り込みと腕立てと腹筋をすれば!すぐに寝られるぞ!」
「はは!デスクワークの俺にはきつい提案だな」
「デスクワークとは何だぁ?」
「座っている仕事ってこと……」
笑いながら机に向かい直す。作業を続ける直人の背中をケイスはじっと見ていた。
「お前は何故『デュランダル』を復活しようとしてくれている?」
急なケイスの質問に直人はもう一度、ケイスのほうに振り向いた。強い眼光に直人はちょっとたじろぐ。
「俺のように己の
何故と言われても、そうしないと立場が危うかったからであって、大義も使命も何もないんだがな。直人は書き付けたプログラムのコードを見る。
「うーん、なんでだろうな?俺に知識があるから、かな?」
全てはそこに帰結する。プログラムの知識と技術を持っているのが、自分だけだから。単調で面白味のない作業でも、この世界の人の役に立てるのなら、やるしかなかった。
「俺さ、皆みたいに自分の仕事に誇りもやりがいもないんだ。ただ、自分が生きていくお金を稼げればそれでいいだけ。何かに向かってがむしゃらになる事もないし、楽しいと思えたこともない……」
プログラムコードを見つめる直人の目は光を失っているように見える。ケイスは彼が仕事をしている内に疲れてしまったと言っていた事を思い出す。
「でも、今は自分の仕事に使命感を持ってる。それが、俺が『ここ』に呼ばれた理由なんだって思ってるから」
直人は静かに作業に戻った。ケイスはベッドに横になると5秒で爆睡した。早っ!本当に即行で寝られるのな。うるさいからリナさんに『
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