憂鬱

「はぁ…」


最近はため息をついてばかりだ。

あの日、あの感情に気付いてしまってから、僕の日常は変わってしまった。


いつ、どこで、どうして…
















彼女を "好き" になってしまったんだろう。





彼女はとても魅力的だ。そんなことは出会った時からわかっていた。

気さくで、話しやすくて、明るくて、優しくて、気遣いが出来て…。挙げればキリのない程、茗花さんは素敵で溢れている。

それに加えて、夢に向かう姿が、意志が、全てがかっこよかった。眩しかった。

反対に、時折見せる、切ない、儚い、透けてしまいそうな表情は、守りたいと思った…思ってしまった。


「ははっ…」


今度は乾いた笑いが零れた。考えるまでもなくゾッコンだった。

逆に惹かれない人がいるなら教えてほしい。


恋なんていつぶりだろう。人を好きになるってどんな感じだっただろう。何をすればいいんだろう。

次から次へと疑問が浮かんでくる。いい大人なのに、心が擽ったい。

恋は人を変えるんだなぁなんてぼんやり思いながら、それが良い方向に変わればいいなと強く思った。

素敵な未来を歩めたら良いなと。その隣に茗花さんが居てくれたら幸せだなと。


間違いなく僕は浮き足立っていた。


「高野さん!どうしたんですか?ため息ついたり笑ったりニヤけたり!何かありました?」


茗花さんが不思議そうに聞いてくる。

距離、縮まってるってことで良いんだろうか。仲良くなれているってことで良いんだろうか。

いや、気を遣わせているのか…??

彼女から見たらただの喫茶店の店長なのに…。

恋愛感情がバレたら嫌な気持ちにさせてしまう…?

そんなつもりじゃないのにって、来てくれなくなる…?

さっきまでが嘘のように、一瞬でどんどん悪い方向へ考えてしまう。


「えっ!今度は悲しそうな顔!」


僕の百面相が余程面白かったのか、今度は彼女が笑いだした。


その笑顔をずっと見ていたい、なんて柄にも無いことを思いながら、僕は今日も"喫茶店の店長"をやっている。

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