第20話 犠牲者3人目:クソロンゲは100度死ぬ その2


「神装機神に生身で挑むだと!? その慢心と共にミンチになってしまうが良い!」


 クリートの操る神装機神が歩を進める。


 重低音と地響きと共に、その巨拳が余に迫りくる。


 そうして、余は魔法強化を施した木切れで拳を受け止めた。



「止めた……っ!? このサイズ差でっ!?」



 サイズだと?


 何を言っているのだこいつは。


 400年前であれば、20メートルサイズ程度の巨人を狩るのは、優秀な学生の証左として日常的に行われていたであろうに。 


 まあ、さすがにこの体格差であれば、地面そのものを強化しなければ足場は壊れてしまうがな。


 と、余がニヤリと笑ったところで、クリートはバックステップで余から距離を取った。


 そして、コロシアムの端にあった……巨大な筒を拾い上げたのだ。


「何だその装備は?」


「機神武装……ドラグズレーザーだ。如何にお前が化け物染みた身体能力強化術を誇るとしても、魔法攻撃……高出力で放たれる魔力レーザーは止められないっ!」


 レーザー……だと?


 聞き覚えのない兵器の名前に、余は警戒を強める。


 何だかんだで400年前、余は苦渋を呑んでいるからな、ここは慎重にならざるを得ないだろう。


「神装機神のコアである龍核で増幅された僕の魔力――」


 ふむ。


 コックピットから発生したクリートの魔力が機神の胴体に流れているな。


 神装機神の大脳と……龍核、つまりは心臓に流れた魔力は、そこで3階梯分ほど魔力が強化され、そのまま血流に乗って長筒へ……。


「その身に受けるが良いっ! クラウスっ!」


 そうして余に放たれたのは、何のことは無いただの光線――魔力撃だ。


「ふははっ! 熟練した魔術師を遥かに凌駕する魔力変換効率の叡智――その御業を受けるが良いっ!」


 長筒による魔力の変換効率は上の下と言ったところ……か。

 これが魔法とすると一定水準には達しているが、そのようなものは余の時代の熟達した魔術師の魔力変換効率に遥かに劣る。


「哀れ……だな」


 この時代の学生のレベルの低さにようやく合点がいった。


 最大の原因は何らかの理由で、人体構成のレベルから、そもそもの根本から魔術レベルが低くなっているのが最大の理由ではあろう。


 だが、どこか、余には今まで腑に落ちない点があったのだ。


 つまりは、それにしてもいくらなんでも弱すぎるということだ。

 余の感じた違和感、その理由は単純だった。



 ――こやつらは道具に頼りすぎる


 

 己が魔力増幅も機神頼り……まあ、ここは良いとしよう。


 しかし、魔法すらもが……あの長筒……魔導武器頼り……。


 何もかもが機械頼りの連中に、己が足で立って歩くことなど、できるはずがない。


「この――――軟弱者めがっ!」


 迫りくる魔力の光に、余は大きな声で叱責した。



「馬鹿な……っ! 大声だけでレーザーをかき消しただとっ!?」

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