第19話 犠牲者3人目:クソロンゲは100度死ぬ その1


 薄暗い室内。


「実際、ちょっとワクワクするな」


 神装機神の胸部コックピットに乗った余はドキドキしながらそう呟いた。


 神装機神のコックピットに乗るのは初めてであるし、ぶっちゃけた話……400年前に初めて見た時から、余はめっちゃ乗ってみたかったのだ。


 まあ、余はミーハーなところがあるからな……。


 新しいモノは嫌いではない。


 ええと、とりあえずこの操縦管を握れば良いのか。


 ソワソワしながら、おっかなビックリとばかりに余は操縦管を握ってみる。すると――



 ――魔術神経適応承認。訓練用機体E-VOL:魔法動力炉(ドラグズコア)の起動を確認しました



「うおっ! 喋っただとっ!?」


 何コレ面白い。


 不思議だ……と、突然の機械音声に余のテンションはマックスになってしまう。


 ――操縦者から、脳内魔術回路と神装機神の大脳及び小脳との直結を確認


 ――オールグリーン。操縦モード起動……成功


「うおっ!? 何だコレはっ!?」


 室内が急に明るくなり……外の景色がそのまま余の視界に広がった。


 余の眼前にはクリートの操る神装機神、そして周囲はコロシアムだ。


 まるで、外部との隔壁が透明になったかのような……。


 どういう仕組みなのだ?


 どうなっているのだ?



 余のワクワクとソワソワも止まらない。


 と、そこで機械音声が更にしゃべり始めたのだ。


 ――学院の推奨する神装機神言語に則り機体を制御操縦し、訓練を安全に遂行してください。なお、本機体は貴重な国有財産であり戦力です。危険行為や違反行為がある場合は機体は強制停止となります。


 ――その旨留意し、以降の自由操縦(フリーライド)にて訓練に励んでください


「……神装機神言語?」


 クラウス少年の記憶を辿るに……。


 ふむふむ。


 人間は大脳から小脳へ指示を出して動く、これは余にもわかる。


 それと同じく、人間の大脳と魔力回路を通じて直結した、神装機神の大脳に指示を出す。


 これが神装機神言語……うむむ?


 つまりは、自分の考えている動作のイメージを操縦管を通じて変換し、神装機神に伝える……そのためのツール……魔術的コードが神装機神言語である……と?


 と、いうことは神装機神は余の思うように動くと言うことだな。


「動け、動け! 動くが良い!」


 む……動かん。


 動かんぞ?


 ――変換制御未達。神経伝導率が足りません。神装機神言語を正確に入力してください。


 神経伝導率だと? また良くわからん言葉が出てきたな。


 変換制御……、ええと、クラウス少年の記憶を辿るに……これか。


 例えば、前に進む感じで歩く場合はR10魔術神経に強度2~3の魔力(推奨は2.7)を流し、例えば炎熱魔法の顕現のようにカクリピサン領域を開くと、人工筋肉へのイメージ伝導率が……。


 ふむ。


 ふむふむ。 


 なるほど……と、余は大きく頷いた。



「――サッパリ分からん」



 まあ、余は新しい技術を覚えるのに時間がかかる方だからな。


 操縦方法はおいおい学んでいけば良いだろう。


 と、そこで余の神装機神は地響きと共にその場で尻餅をついてしまった。


 その時、眼前のクリートの機体から高らかな笑い声が聞こえてきたのだ。 


「やはり、適応障害! 君はそういえば座学だけは優秀だったね? だけど、操縦に必要な知識を深く理解していたとしても、先祖返りでは操縦はできないのさっ!」


 いや、操縦方法を知らないだけなのだがな。


 まあ、それは良い……と、余はコックピットを開き、操縦席から立ち上がった。


「何っ!? コックピット……胸部装甲を開いた……だと?」


「要は、貴様の操るソレを破壊すれば良いのだろう?」


「正気かクラウス? 君は……生身で僕と戦うとっ!?」


 そのまま、余は神装機神の胸部から地面に降り立った。


「神装機神などと大層な名前がついているが、所詮はただの大きな鎧であり道具の類だ。中身が無能ならば……ただの木偶のボウに過ぎん。そうだな、貴様がその魔道具を使うならば――」


 そうして、余はそこに落ちていた木切れを拾った。



「ならば、余はこれで十分だ」



 そのまま、余は右手で持った木の棒の切っ先を、クリートの操る機神に向けたのだった。

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