第15話 VS いじめっ子の首領:クソ金髪ロンゲ その1


 そして、翌朝――。


 いよいよ始まった魔法戦闘試験。

 この前と同じ運動場に集められ、これまたこの前と同じ円形のサークル前に搭乗科の学生たちが集められた。


 ちなみに、今日は搭乗戦闘試験もあるということで、特別に親族の参観が認められるという形式になっている。そして――


「フレー! フレー! お兄様ー!」


 親族席からリージュの声援が飛んでくる。


 当たり前のことだが、そんなことをしている者は他にいない。


「頑張れ頑張れお兄様ー!」


 底抜けの笑顔。


 静まり返った運動場に、ただただ鳴り響く、たった一人の腹の底からの爆音の声。



 ――熱烈な応援だ



 余は魔術大会やら武道大会などで大観衆の拍手喝采を受けたことは数知れずだが、さすがにたった一人にここまで応援されたことはない。


「おいクラウス? お前の家族どうなってんだよ? 凄い気合入ってるが……」


「ふっ……」


 ぶっちゃけ、さすがの余もこれは恥ずかしい。


 正直、リージュには応援を辞めてもらいたい。


 しかし……と、余はクスリと笑ってしまった。


 そういえば、確か昔に……こんなことをする部下もいたな。忠誠心がMAXを振り切っていたが、マルコキアスは今何をしているのだろう。


 と、それはさておき魔法戦闘試験だ。


「負けるな! 負けるな! お兄様ー! 頑張れ頑張れお兄様ー!」


 リージュがうるさいほどに応援してくれているのだが、実際問題頑張ることなど何もない。


 なにしろ対戦相手のリチャードは今は行方不明だし、余の対戦相手そのものがいないのだ。


 それに魔法技量については水晶玉破壊だけで満点となっているし、試験を行う意味がないというのは試験監督の談だ。


 そうして、試験監督が魔法戦闘試験を始める前に、余に向けてこう語りかけてきた。


「今回はルシウス学生については、対戦相手が存在しない」


「フレー! フレー! お兄様ー!」


「そして、クラウス学生は水晶玉試験で特に優秀な成績を修めた」


「頑張れ頑張れお兄様ー!」


「更に、リチャード学生は本日は欠席となっている。よって、クラウス学生は特例として――」


「やっつけろ! やっつけろ! 相手に負けずにやっつけろ!」


 そうして、試験監督は生徒だけではなく、観客席にも向けてこう宣言したのだ。


「ルシウス学生は――不戦勝とするっ!」




「きゃあーーー! お兄様が……お兄様が勝ったあああああっ!」




 天真爛漫に喜んでいるリージュ。


 その場で飛び跳ねている彼女を見て、やはり余は「やれやれだ」と、苦笑するしかなかったのだ。




 ちなみに――。

 後から聞いた話であるが、リージュは頭がおかしいとかではなく、親族の参観なのだから全力全開で応援するものと思っていたらしい。

 実際に他の生徒の魔法戦闘試験が始まった際に、他の親族が大声を挙げてなどの応援をしていなかったことを見て、彼女は顔を真っ赤にしていたくらいだ。


 この辺りは昔は家の外に出られなかった彼女の境遇と、これまた修道院という特殊な環境にしか触れていないことの影響だろう。


 つまりは……彼女は少し非常識なところがあるということらしいな。


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