30.あなたはなぜお話を書くのですか?

 これはね、仕方なく、です。

 なんて言えばいいんでしょうね。

 もっと身体的に優れていたり男前だったり歌が上手かったり社交性があったり、何かひとつでも才覚があったのなら、こうしてちまちま文字を書き続けるなんてやってないはずなんですよ。

 去年のMー1に出場していたウエストランドのネタの中で「漫才はね、復讐だよ?」という台詞があって、これをうまく笑えなかったことを今でもよく覚えています。めちゃくちゃ面白かったんですけど、あまりにも刺さりすぎたんですよ。この台詞が。

 かけっこが速かったことも喧嘩が強かったことも大して女の子にモテたこともないまま大人になった、ちょっとばかし外面がいいだけの性格の悪いチビが、自分の存在を証明する方法なんてそんなにないわけで、それが僕にとっては物語であり、誰かに見せる唯一の手段が「小説を書くこと」だったんです。だから四〇過ぎた今でも不恰好に馬鹿みたいに続けているんです。

 こういった話をする時、必ずと言ってほど思い出すのが「カサブタ」っていうアニソンの歌詞です。


 大人になれない僕らの

 強がりをひとつ聞いてくれ

 逃げも隠れもしないから

 笑いたい奴だけ笑え

 せめて頼りない僕らの

 自由の芽を摘み取らないで

 水をあげるその役目を

 果たせばいいんだろう?


 多分これからも細々と水をあげ続けるのだと思います。

 

 

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#字書きがいいねの数だけ詳細に語る 齊藤 紅人 @redholic

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